羽田新ルート、品川区住民投票条例が正念場 --- 武内 修二

寄稿

品川区内のマンション上空に大きく見える機影

新型コロナ感染症拡大の影響で東京オリンピックの延期や訪日外国人が激減したことから、羽田新ルート導入の必要性(国際競争力強化、訪日外国人の増加、日本全国の地域活性化)の前提条件が崩れてきた。それなのに政府は羽田新ルートの運用を見直すこともなく、また、一旦停止することもなく強行し続けている。

そんななか、「品川区民投票を成功させる会」は11月9日、法定署名数の3倍を超える署名を品川区選挙管理委員会に提出した。さらに12月11日、品川区長あてに署名簿を添えて投票条例案の本請求。同条例に係る臨時会が12月23日に開催され、区の提案が説明されたあと、25日に意見陳述、委員会審査・採決を経て本会議で採決される運びとなった。

このまま議案が採択され条例が成立すると、3か月以内に区民投票が実施されることになるのだが――。

区議会のホームページに12月18日公開された提出議案には、濱野健品川区長が条例制定に反対を表明する旨が記されている。反対理由として、① 既に国に意見を表明している、② 条例案の内容が民意反映方法として適当でない、③ 経費がかかる、④ 国の決定事項である、を挙げている。

条例成立の可否を握っているのは、区議会議員40人のうち羽田新ルートを推進している自公と自無(自民・無所属・子ども未来)の23人の投票行動。区議会の過半数を占めている自公と自無が条例案制定に賛成しなければ、否決されることになる。

「品川区民投票を成功させる会」が11月11日に実施したアンケートの調査結果によれば、自公と自無は条例案の賛否については「まだ答えられない」と回答している。

羽田新ルートの是非を問う品川住民投票の動きに対して、政府は松原仁衆議院議員の質問主意書に「仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい」と答えている。

一方、公明党の都議、区議からの緊急要望書を受けて尻に火が付いた赤羽国交大臣が始めた専門家から構成された「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」の第2回目が12月23日に開催される。品川区住民投票条例係る品川区議会臨時会と同じ日に開催されるのは偶然なのか。検討会が自公、自無議員に条例案否決のエクスキューズを与えることはないのか。

羽田新ルートの賛否を問う品川区住民投票条例が成立するかどうか、正念場を迎えている。

武内 修二(たけうち・しゅうじ)1級建築士。マンションアナリスト。
16年を超える長寿ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人。@1manken) | Twitter