米議会指導部、約9,000億ドルの追加経済対策で合意-ファーウェイ排除も含む

カバー写真:Thomas Hawk/Flickr

遂に本日、グレート・ミューテーションを迎えます。

その陰で、感染力最大7割増しの新型コロナウイルスの変異種(mutant coronavirus)が英国で出現し、欧州を大パニックに陥れています。ツイッターでご紹介したように、強大な感染力を有しながら①致死率は高くなく、②変異種にもワクチンは有効で、③米国日本では確認されていない--と伝えられていますが、現時点で未知数と言わざるを得ず。英国ではクリスマス前に3回目の都市封鎖を決定、欧州各国も英国からの渡航禁止を相次いで発表するなど、英EU離脱の期限切れを前に混乱どころか混沌と化しています。

そもそも、新型コロナウイルスの表面に伸びた”スパイクタンパク質”が存在し、これが人間の細胞表面にあるACE2タンパク質受容体と結びついて感染を引き起こします。今回の変異はこのスパイクタンパク質に複数みられ、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によれば、変異種は既に23回もの遺伝子変化を起こしたといい、稀に見るスピードなのだとか。

専門的な話はともかく、コロナ変異種のニュースは欧州を起点に金融市場を激震させ、英EU離脱交渉とは裏腹に何とか米議会が20日夜にこぎ着けた追加経済対策の妥結効果を霧散させてしまいました。さて、その追加経済対策ついては1.4兆ドル規模の2022年度予算案と共に米下院が21日、米上院が22日に採決する見通しで、トランプ大統領の署名を待って成立します。それでは、約9,000億ドルの追加経済対策に何が含まれているのか報道ベースながら見てみましょう。

その他、ちゃっかりトランプ政権が推進するメキシコ国境間の壁建設 が140億ドル、低金利での地域支援を行う中小規模銀行支援 に120億ドル、育児支援に120億ドルが盛り込まれました。育児支援は、ベージュブックでも度々「託児所不足」が指摘されており、労働参加率の改善に役立つ余地を残します。

クリスマス直前に何とか合意にこぎ着けたものの、現金給付の支払いはギフト・ショッピングには間に合いそうもありません。トランプ大統領が米上院が可決した直後に署名したとしても、3月のCARES法を踏まえれば約1週間程度かかる見通しで、支給は早くとも年明けとなりそうです。

興味深いのが、ブロードバンドへ向けで、事前報道の通り中国通信関連企業のファーウェイとZTEを米国内ネットワークから排除するために19億ドル割り当てられています。トランプ政権だけでなく、米議会からの対中圧力の強さを感じさせますね。

今回、民主党が求めた州・地方政府への支援の他、共和党が主張したコロナ関連の賠償請求訴訟から守る雇用者を守る免責条項の追加は除外されました。

1月20日の大統領就任式の1ヵ月前に何とか合意し追加経済対策が成立する目途が立ったばかりとはいえ、既にバイデン政権発足後の現金給付第3弾を期待する声も聞かれます。第3弾の実現は、ジョージア州の上院決戦投票に掛かっていることは言うまでもありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年12月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。