「2021年ヒット予測ランキング(日経クロストレンド)」で、「配膳ロボット」が8位にランクインしました。「非接触レストランの担い手」として注目を集めているようです。
はたして、この予測通り、配膳ロボットは来年「ヒット」するのか。考察したいと思います。
「非接触」ではヒットしない
11月の記事「『R2-D2』より優秀?! ソフトバンクの配膳ロボ『Servi』は普及するか」で、Serviを紹介しました。同社担当者の説明では、本来の開発目的は、飲食店の「省力化」。「非接触(によるコロナ対策)」は、むしろ副次的効果である、とのことでした。
それもそのはず。ロボットにより「非接触」となるのは、客に料理を渡す「最終工程」のみ。調理など「前工程」や「他工程」は、人が作業するわけですから。実際の効果は、配膳スタッフからの飛沫を防げる、といった程度でしょう。料理の説明を行う飲食店では、この効果すら享受できません。
このことから非接触(コロナ対策)効果だけでの「ヒット」は難しい、と言えます。
省力化はヒット要因となるか
では、本来の目的「省力化」によってヒットするのでしょうか?
12月22日に、ソフトバンクロボティクスは「Servi」オンラインセミナーを開催しました。セミナー内では、焼肉店「焼肉きんぐ」の導入事例の映像を配信。女性スタッフの料理運搬の負担軽減や、浮いた時間を活用した顧客サービスなどが、紹介されました。
同店における省力効果は絶大で、今後も全国310店舗で443台の導入を予定しています。少なくとも、同店においては、「大ヒット」です。
では中小飲食店ではどうでしょうか。
先般の記事においては、導入効果が大きいのは「広くて、追加注文が多い店」としました。
つまり「狭くて、追加注文が少ない店」では効果が小さい。加えて、月額約10万円のコスト(しかも3年契約)負担がある。これらを考慮すると、中小飲食店での「ヒット」は難しい、と思われます。
配膳ロボットの代替品
一般的な飲食店の場合、高額な配膳ロボットを導入する前に、以下のような「代替品」を検討するのではないでしょうか。
[ セルフサービスを導入する ]
運ぶのが大変なのであれば、「客」に運んでもらえば良い。「PRONTO ILBAR(プロントイルバール)」渋谷フクラス店では、セルフスタンドバー形式を導入。コロナ禍の4月でも、想定の2倍の売上を維持しました。
[ カートで運ぶ ]
重いのが大変なのであれば、「カート」で運べば良い。「しゃぶしゃぶ木曾路」の女性配膳スタッフはカートを利用し、重い料理も効率的に運搬しています。
[ レーンを導入する ]
人でもロボットでもなく、専用レーンで運べば良い。
新設店かつ資金力が必要ですが、回転寿司のような「専用レーン」を導入した方が、効率的に料理を運搬できます。「焼肉の和民」では、配膳ロボットと合わせ「専用レーン」も導入。その効果もあってか、大鳥居駅前店は前年売上比(居酒屋業態と比較)283%と好調です。
これら代替品よりも「配膳ロボット」の方が費用対効果が大きい。導入されるのはこういった場合のみです。そのためには、「低価格化」と「ニーズへの対応」が鍵となります。
「ヒット」させるには
配膳ロボット「サービスショット」を販売する、株式会社アルファクス・フード・システムは、ニーズに合わせ、複数のラインナップを用意。小回りが利き、下げ膳専用として使いやすい、製品「α3型」もその1つです。「3年契約縛り」はあるものの、価格は月6万5千円と低めに設定。対人保険を含んだ保守など付随サービスも充実させています。
必要とされるニーズに機能を絞り込み、低価格化する。このことが、中小飲食店への普及を促し、「ヒット」へと繋がるのではないでしょうか。
「配膳」「飲食店」の枠を超えて
コロナの影響もあり普及しつつある配膳ロボット。
上述の「2021年ヒット予測ランキング」では、「非接触レストランの担い手」「配膳用途」としてランクインしています。しかし、その活動範囲は、飲食店だけにとどまらず、病院・ホテル・ゴルフ場まで広がりつつあります。
2021年は、「配膳」でも「飲食店」でもなく、もっと広い範囲でロボットが「ヒット」するかもしれません。