2021年内外展望

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あけましておめでとうございます。
今年も皆様の熱いご意見をお伺いしながら日本や世界の様々な問題について一緒に考えていければと思っております。

さて、本稿を書くにあたり昨年の1月2日付の「日本展望」を読み直したところ「2020年12月に発表される今年の10ニュースの1位は天変地異がない限り、『五輪開催、世紀のイベントに熱狂』だと確信しています」と書かせて頂いています。コロナが予見可能だったか、という議論はありますが、やはり天変地異と考えてよいのではないでしょうか?

日本は大地震を近年だけでも何度も経験している中で天変地異からの回復力が強いこともまた事実。日本は古来、台風、地震、火山爆発などを経て何度も壊されては作り直すことをしてきた粘り強さが世界に自慢できるところであります。

ポストコロナについて著名人から一般人まで様々な意見が並びます。東日本大震災の際の原発事故の際にも無数の意見が飛び交い極論に振り回された記憶がある方も多いと思います。コロナに於いても我々の世界はもう元には戻らないという意見は強いのですが、私はあえて、「我々の世界はより進化するのだ」と提唱したいと思います。そっくり元に戻すことを良しとする発想はありません。震災後も津波被害を最小限に食い止める諸処の対策が行われたのと同様、我々は新しい世界で新たな構築をしていく、それが2021年になると考えています。

その中で移動、接触が一つのキーになるとすればオンライン化は更に普及してくるのでしょう。今までは人が動いていたものがモノや情報だけが動いていく、そんな時代になるとすれば世界や人々の考えはよりドライになっていく、そんな姿も見て取れます。

かつてイアン ブレマー氏がGゼロの世界と称するリーダーなき社会を指摘しました。世界の警官がいなくなり、先進国の影響が弱くなり、新興国が力をつけるというわけです。それをコントロールするためにG20なるものもできましたが成果が十分に上がっているとは言えません。

私はオンライン化により人々のミーイズムがより強くなり、国家の連携は思った以上に機能しなくなるとみています。オーストラリア一つとっても中国に対立する姿勢を見せた政権に対して経済界からは輸出が出来ずどうしてくれるという突き上げがあります。それぞれが自分の利害だけを考えるようになれば国家一つすらまとめられません。ならば国同士の連携となれば経済的メリットがあり、かつ双方にとり明白な利益がない限りそれすらも危ぶまれる時代になるかもしれません。

アメリカはマイノリティや今まで陽が当たらなかった人たちへのチャンスを与えた民主主義を標榜するかもしれませんが、無数にあり定義あいまいなマイノリティに対しどうバランスとるのか、マジョリティの不満はどう解消するのか相当の困難が付きまとうはずです。私にはバイデン氏の思想が70年代のブロードウェイを目指す田舎娘の夢物語と重なるのですが、今の世の中がそれほど単純ではなくなったと思っています。

ポストコロナは世界中で戦後の混乱期に近いバラバラで自己中心的社会が一時的に発生するとみています。日本もそうなるのでしょうか?我々にはひとつ、チャンスがあります。開催されればの話ですが、オリンピックを通じて国民が一つになり、希望ある未来を再度描けるからです。

その時、人は何を思うのでしょうか?私はテクノロジーと人間味の融合を感じると思うのです。画面を通じたやり取りが当たり前になり、肉声すら聞かなくなった現代社会に於いて、時間を割き、会って共鳴するという当たり前の行為に強い感動を覚える時が来ると思っています。

私はフェイスブックの時代的凋落が起きると申し上げました。広く薄い付き合い方から深く濃い付き合い方に変わるというものです。不特定多数の人とつながる必要はない、5人か10人、お互いをよく知った関係の人だけを大事にする、そういう社会に変わるとみています。

世界は10%か20%の限られた部分だけで合意し、残りについては見て見ぬをふりをしたかもしれません。もしかすると国家間関係だけではなく、人の付き合い方もそれに近かった気もします。それゆえにもっと理解度を深め、思想や意識を共有できる国や人を大事にすべきでしょう。

人が少しずつ繋がりの重要性を感じ始めたときこそ、我々の社会に再び陽が昇るときだと思っています。2021年は人々のマインドの復興の年だと思っています。もちろん、コロナはまだまだ猛威を振るっていますが、人間の英知はそれを凌駕できます。戻らない社会を嘆くのではなく、新しい社会を築く、そういうスタンスで一年を迎えたいと思っております。

今年もどうぞよろしくお願いします。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月1日の記事より転載させていただきました。