私は紅白歌合戦が大好きな人材である。今年ももちろん、視聴した。結論から言うと、今年もベストを尽くしていたのではないか。様々なジャンルから多様なアーティストを登用し。「国民的番組」【最大公約数」を目指していたのではないかと。
個人的なハイライトとしては、ちい兄ちゃんこと福山雅治がもともとは結婚情報誌『ゼクシイ』のCMソングだった「家族になろうよ」を演奏し、グッときた。率直に、いい曲だな、と。結婚CMソングを超えて、曲の価値が高まっているな、と。
ちなみに、このCM、内田裕也と樹木希林という個性の強い「ずっと別居婚夫婦」が共演したことで話題となり。しかも、これだけお金をかけたCMキャンペーンなのにも関わらず、内田裕也が交際相手の女性を脅し、復縁をせまり強要未遂と住居侵入で逮捕されるという事件が起こり。いったんCMは中止になったのだが。これを樹木希林独白バージョンをつくり乗り切ったという。これに一社員として関わっていたのが、大晦日に「朝まで生テレビ」の出演した国民民主党副代表の伊藤孝恵さんだ。
オーケストラをバックにした玉置浩二の「田園」、配信リリースのみで紅白歌合戦出場となったYOASOBIの才能(POPでありつつ、明らかに音数が多いという そして圧倒的な歌唱)、活動休止をする嵐のパフォーマンスなど、見どころも満載だった。
紅組の圧勝に終わったが、今年は強かった。まあ、大泉洋はあれだけの売れっ子になっても、良い意味で道民らしさ丸出しで愛らしかった(褒め言葉のつもりだ)。お人好しだなあ、と。その分、相手を倒す気迫は感じられなかった。もともとファンだということもあるけれど、二階堂ふみを高く評価したい。いや、人気女優が紅白の司会を担当すると、そのポジションに潰されるということがあり。その点、数年前の広瀬すずなどはかわいそうだった。沖縄、北海道出身者が紅白それぞれの司会というのもナイスだ。
なんせ、無観客開催であり。さらに、必ずしもLIVE演奏ではなかったのだが。とはいえ、立派な歌の祭典だった。あっぱれ。
もっとも、視聴者への配慮が裏目になってしまった点もあると私は見ている。あくまで、個人的な感想という前提で読んでほしい。
震災のときもそうだったのだが・・・。
「日本がんばれ」疲れのようなものを感じてしまった。「コロナに負けるな」疲れとも言える。
年末の歌の祭典なので、毎年、ここならではの特別企画はあるのだが。今年は日本応援、負けるなメッセージがてんこ盛りで。こういうことを書くとまた「反日」と罵倒されそうだが・・・。徹頭徹尾応援メッセージだったので、逆に疲れてしまったり。嫌なことを思い出してしまった。
そう、いまだに朝、起きると「そういえば、コロナなんだよな」と思う瞬間がある。精神的にも肉体的にも参らないように、頑張りすぎずに、長期戦を戦い抜くことを意識しているのだが。
ここまで、一気に「応援」「応援」とされると、疲れてしまう。メンタルヘルスの問題を抱えているときに「頑張れ」というのは必ずしもよくないことであることと似ている。
出演者とその選曲にしても、やはり頑張れ臭がぷんぷんしており。もっと自由に、いま、歌いたい曲を、やりたいやり方で演奏させてあげたかった。特に、ここ数年の、ゆずの日本のつながり、団結、誇りの象徴になっている感が気になってしまった。
人生で大切なのは息抜きながら、生き抜くことだ。というわけで、素晴らしい音楽の祭典だったのだが、逆に精神的に疲れてぐったりしてしまった紅白だった。「だったら部屋でヒーリングミュージック聴けよ」と石を投げられそうだけど。
編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2021年1月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。