昨今のアウトドアブームを後押しするように、コロナ禍において3密を回避できるキャンプ人気が急上昇中だ。キャンプ好きとしては、キャンプを楽しむ人が増えることを嬉しく思う一方で、最近では真冬にも関わらず土日祝はほぼ予約でいっぱいのキャンプ場も数多くあり、キャンパーにとっては受難の時代でもある。
背景には、女子高生がほのぼのとキャンプ生活を楽しむ様子を描いたアニメ「ゆるキャン△」人気がある。これにより、これまでキャンプを楽しんできた人も、新たにキャンプに興味を持った人々も老若男女、「ゆるキャン△」の舞台となったキャンプ場に一斉に押し寄せることとなった。さらにはそこから溢れた人々が他のキャンプ場に流れ出した。そんな中、昨年には世の中がコロナ禍に襲われ、3密を避けながら楽しめるキャンプの人気が爆発した。
私は、これらのブームに関係なく、子どもの頃から親に連れられてキャンプに慣れ親しみ、若い頃は全国を旅行する際の宿泊手段として、キャンプを楽しんできた。そんなキャンプの目的が、10年前に子どもが生まれてから少し代わってきた。
アウトドアでのキャンプは、子どもに自然の素晴らしさや脅威を伝える為の格好の教材なのだ。四季折々に変化する山や森の中に身を置くことで、子どもは全身で自然の美しさを吸収する。野生動物との出会いなど、うれしいハプニングもある。逆に、突然の豪雨や台風に見舞われた時に親子で力を合わせて対処することで、子どもは親からの愛情を感じ、信頼関係が深まるきっかけにもなる。
キャンプに欠かせないたき火からも、学びが多い。燃えやすい薪を集めることは、樹木の勉強にもなるし、生きた化学の知識を学べる。実際に火を着け、その火を大切に守り、料理などに利用することで、子どもは大人が思っている以上に大きな自信を得られるのだ。火やナイフなど、日常生活では「アブナイもの」として接する機会の少ないものに触れ、使いこなす。さらには料理など生きるために必要な学びの要素が多いのも、キャンプの大きなメリットだ。
私がキャンプに魅せられた理由は、それだけではない。もともと、建築家に憧れていた自分にとって、キャンプでの空間作りは最高の楽しみなのである。その場でその瞬間にしか出会えない景色をバックに、テントや家具類のレイアウトや空間をデザインすることはメチャクチャ楽しいひとときである。しかも、建物は簡単に形を変えることは出来ないが、キャンプにおいては、自然に抗うことさえ避ければ、好きなだけ好きなように変えられるのである。
特に四季のある日本においては、季節ごとに全く異なる空間が出来上がる。春は桜の木の下で思う存分花見を楽しめる土間のような空間、夏は海辺や湖畔をバックにマリンスポーツの拠点となるガレージ、もしくは避暑地の高原や森林などでマイナスイオンをたっぷりと感じられるリビング、秋には色とりどりの紅葉に囲まれながら地物のキノコ等で舌鼓を打つための食卓をイメージした空間づくりなど。そして、これだけはまだ実現できずにいるが、雪景色と冬の星空を楽しめる雪中キャンプにもいつか挑戦してみたい。
このように、自然の中で好きなことを思いっきり楽しむ姿を子どもに見せることは、最高の教育になるだろうと自負している。
キャンプの楽しみ方は様々であるが、単なるブームに終わるのではなくキャンプの楽しさ、素晴らしさを一人でも多くの方にお伝えしていきたいと考えている。
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増井 紀洋(ますい・のりひろ)アウトドアを愛する会社員
1975年生まれ、大手鉄道会社勤務。キャンプのほか、サックス演奏が趣味。Instagramアカウントはこちら