感染経路不明の多くが飲食店?

緊急事態宣言がふたたび発出される。集中的に飲食店に自粛が求められるようだ。その理由としてあげられているのが、「感染経路不明者の多くが飲食店で起こっているから」だそうだ。どう考えても、日本語としておかしい。飲食店で感染したことが明らかならば、感染経路は不明ではないという呼び方は変えた方がいい。これだけ広がれば、どこで誰から移ったのか簡単にわかるはずもない。

通勤電車の中ではなく、飲食中とする科学的な根拠があるなら、はっきりと示してほしい。口を開けて会話すれば、飛沫が拡散され、近い距離の人はウイルスの曝露されやすいし、会食時間が長くなれば、曝露される量が増えるのは確実だ。しかし、電車の隣の人が咳やくしゃみをすれば、普通のマスクでは横から飛沫は多少なりとも飛び散るし、自分のマスクの穴を通して入ってくるリスクもある。布マスクを着けていると防御能はさらに低くなる。

どうも科学的根拠があまり明確でないままに、感覚的な制限範囲を決めているように思えてくる。今日の1日の感染確認者数は6000人を超えた。週の後半にその週のピークが来ることを考えると、今週中にもっと大きな数字となり、31日の数字約4500人を基にすると、2週間後の週に1万人という数字の可能性は否定できない。市中感染が広がっているので、このような限定的な措置でいいのか疑問が膨らむ。他府県の知事の中には、東京圏への出張を自粛するように求めるコメントが出されているが、東京圏の会食制限をはるかに上回る厳しい要求だ。なんだかバラバラ感がいっぱいだ。

そして、時事通信のニュースが「新型コロナウイルスに感染後、医療機関以外の自宅などで体調が悪化して死亡した人が昨年3~12月で計122人に上ることが6日、警察庁のまとめで分かった。特に12月は56人と急増した。・・・・・・・56人のうち、自宅や高齢者施設、療養先のホテルなどで死亡した人は50人。外出先の路上や店のトイレなどで死亡した人は6人いた。・・・死後の検査で感染が判明した人は38人だった」と報道していた。

これを「医療崩壊」と言わずして、何が「医療崩壊」だ。すべての対応が遅すぎる。

BS: 英国オックスフォード大学のジョン・ベル教授が、今のワクチンが南アフリカ変異種には効果があるかどうか疑問だと言った発言が物議をかもしている。ベル教授は25年以上前からオックスフォードの内科教授であり、英国内で影響力が大きい。26年前、私はオックスフォード大学に設置されたゲノムセンターに招へいされたことがある。その時、熱心に私を誘ってくれたのが、このベル教授であり、一緒にゴルフに行ったこともある。人生には多くの「もしも」がある。4-5回オックスフォードを訪ね、家まで下見をしにいった。その時、別の選択をしていたら、どんな人生を歩んでいたのだろうか?


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。