バイデン氏の就任式、これまでとどこが違う?

第46代大統領の就任式は、過去とは全く様相を異にします。コロナ禍と1月6日の米議事堂襲撃事件が変化をもたらしのは、言うまでもありません。州兵2万5,000人が集められ厳戒態勢を敷き、ワシントンD.C.はまるで要塞化したかのよう。バウザーDC市長は、20年12月23日に導入した経済活動制限措置(レストランでの店内飲食停止、美術館の閉鎖など)を1月22日午前5時までに延長しました。

就任式における例年との違いは、以下の通りです。

(カバー写真:Greg Meinert/Flickr)

(カバー写真:Greg Meinert/Flickr)

・例年通り就任宣誓式は首都ワシントンの連邦議会議事堂前で開催も、両院合同委員会は参加者を20万人(米上下院の議員535人と関係者向け)から、議員とそのゲスト1名とし1,000人に限定
就任式宣誓は米議事堂の東側で挙行。レーガン新政権が西側へ移すまでの慣例へ戻す。
トランプ氏は就任式に出席せず。次期大統領の就任式の参加を拒否した最初の人物は、1869年にホワイトハウスを去ったアンドリュー・ジョンソン氏。トランプ氏とは、弾劾裁判に至ったという共通点も。
パレードは行わず、15丁目からエスコート付きの徒歩でホワイトハウス入りへ。代わりにアカデミー賞の常連であるトム・ハンクスが司会を務め、グラミー賞受賞者のジャスティン・ティンバーレイクやボン・ジョヴィ、デミ・ロヴァートなどが演奏予定。
・就任式の国歌斉唱はレディ・ガガが担当し、ジェニファー・ロペスも出演。トランプ氏の時に国歌斉唱の大役を果たしたのは、弱冠16歳のほぼ無名の少女ジャッキー・エヴァンコだった。

その他、バイデン氏は就任宣誓後、ハリス氏のほかオバマ氏やブッシュ氏、クリントン氏など歴代大統領と共にアーリントン国立墓地を訪れ、無名戦士の墓地に献花する予定。1期目の就任式にアーリントン国立墓地を訪問するケースは稀で、過去にはクリントン氏が高校時代に握手したケネディ元大統領に献花するため訪れましたが、当時は就任式直前の19日でした。

なぜバイデン氏は、アーリントン国立墓地へ向かうのでしょうか?

思い出されるのが、歴代国防長官10人による1月3日付けワシントン・ポスト紙への寄稿文です。トランプ政権でのエスパー氏やマティス氏のほか、ラムズフェルド氏などはトランプ氏に対し大統領選での敗北を認め、平和な政権移行を求めました。

国防長官に指名したロイド・オースティン氏を念頭に入れたトリビュートとも考えられます。オースティン氏の就任にあたっては、退役後7年間の長官就任を禁じた規定の免除を議会から取り付けた上で上院が指名を承認する必要がありますよね。文民統制の原則に従えば、必ずしも訴求力があるとは思えませんが・・。

オバマ政権の継承というメッセージだった可能性もあります。2013年1月20日、他ならぬバイデン氏自身がオバマ氏に付き添い、無名戦士の墓地を訪れていました。

画像;2013年就任式当日のオバマ氏とバイデン氏。(出所:Obama White House/Flickr)

画像;2013年就任式当日のオバマ氏とバイデン氏。(出所:Obama White House/Flickr)

就任式の日に国防長官不在というのも、異例です。トランプ政権ではマティス氏が当日に指名承認直後に宣誓を行い、オバマ政権ではロバーツ氏がブッシュ(子)時代から横滑りで職務に就きました。そもそも、指名を受けた閣僚候補が1月20日に誰も就任していないというのは珍しい。トランプ政権ではマティス氏と国土安全保障長官となったケリー氏の2人、オバマ政権では6人、クリントン政権では3人、ブッシュ(子)政権では7人が閣僚としてホワイトハウス入りしていたものです。

バイデン政権では19日に国防長官候補のオースティン氏を始め財務長官候補のイエレン氏、国務長官候補のブリンケン氏、国土安全保障長官候補のマヨルカス氏、国家情報長官候補のヘインズ氏の5人が公聴会に出席しました。公聴会を経て本会議での指名承認が必要となりますが、ロン・ワイデン議員(民主党、オレゴン州)はイエレン氏の指名承認投票は「最速で21日」と予想していました。

異例尽くしのバイデン氏の就任式は、まもなく始まります。就任式後に以下の大統領令に指名する予定で、初日からトランプ氏と同様に大忙しとなること必至です。

・政府施設や航空機など公共輸送機関でのマスク着用義務化
・パリ協定復帰
・環境規制の強化
・キーストーンXLパイプラインの建設認可取り消し
・イスラム圏からの入国禁止の解除
・WHOの脱退撤回


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年1月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。