台湾の自我

2021年01月25日 14:00

トランプ氏が先鞭をつけ、評価できるレガシーの一つに米台の直接対話があります。そしてアメリカによる武器の売却が行われました。実はアメリカと中国の間には台湾への武器売却などについては1982年に取り決めが行われています。

この取り決めは「8.17コミュニケ」と称するもので時のトップ、レーガン大統領と鄧小平最高指導者の間に交わされたものでその中の6番目の項目には「米国政府は台湾への武器売却を長期的政策として実施するつもりはないこと、台湾に対する武器売却は質的にも量的にも米中外交関係樹立以降の数年に供与されたもののレベルを越えないこと、及び台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりであることを表明する」とあります。つまりこれだけ読めばトランプ氏が台湾に武器売却をすることはできないように読めます。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

ところがこの「8.17コミュニケ」に関してはこの本体とは別に機密文書がリンクされており、昨年までその事実は一般には秘匿されていました。が、昨年8月に米国在台湾協会(AIT)がこれを公開、その中に「中国がより敵対的な態度を見せた場合は、(台湾への武器売却についての約束を)無効にする」(日経)とあるわけです。トランプ氏は中国が敵対的態度を示したことで8.17コミュニケの第6項目を無効とし、武器売却を進めているわけで行動の正当性はそこに存在します。

さて、バイデン政権になれば米中関係はトランプ氏の時ほど先鋭化しないのではないかという見方が現時点では専門家の間では主流ですが、その「弱腰イメージ」を試すような行為が中国によって行われました。

23日、24日と二日続けて中国は台湾の防空識別圏に戦闘機をそれぞれ13機、15機進入させました。これを受けてアメリカ国務省が「台湾が十分な自衛能力を維持するよう支援していく」(日経)と発表しました。これはとりもなおさず、中国に対して「甘く見るな!」という警告であります。

アメリカは台湾に対してどこまで本気なのでしょうか?

私はバイデン政権も継続してテコ入れをする気はあるとみています。

中国が太平洋進出を図るにおいて「第一列島線」が意識されてきました。これは中国側の軍事上の作戦であり、九州から台湾、フィリピンに至る線であり、あくまでも太平洋進出というより台湾を意識した線であると考えてよいかと思います。北海道の北側とか津軽海峡という抜け道が物理的には存在しますが、それを考えるのは野暮であります。とすれば中国が台湾を意識するのは台湾を「一つの中国」で括るという意味と防衛上という二つの目的が重なり合っているとも言えます。

アメリカ側からすればとりもなおさず、第一列島線は死守すべきラインであり、台湾の保護はアメリカの政権にかかわらず強く押し出す必要があるのでしょう。

では「すわ、戦争か?」といえばそこまで踏み込むとは思いませんが、緊張はさらに高まる可能性はあります。アメリカの台湾に対する認知が明白になればなるほど中国がいざという問題を抱えた際、中国の分裂化を促進する象徴的事象になりえます。(最後の砦はアメリカが台湾を国家として認識するかどうかでしょう。それは本当の最後手段ですが。)

ソ連が崩壊した際、ソビエト連邦だった共和国はことごとく独立しました。これは中央のチカラがなくなった時、同盟国をつなぎとめられなくなることを如実に表しています。中国もそもそもは国家の大きさが歴史の中で七変化してきたわけで今の体制と大きさがずっと続くとは思えない「無理な論理」が存在しています。それがいつ来るのか、という点については残念ながら誰も答えられません。希望的観測はいくらでも述べられますが、まだ数百年続く可能性も論理的には否定できないでしょう。

但し、中国の好きにさせないぞ、という包囲網は確実にできるし、中国が柔軟かつ発展的対応を取らない限り、自壊することも当然あるわけです。少し前のこのブログで書いたように中国は内部崩壊こそそのリスクであり、民間企業の反発を買うような事態になればビックデータや民衆にアクセスできる機器の提供を通じて民意を物理的にコントロールできる能力がある民間のチカラは侮れなくなるでしょう。

台湾人へのアンケートでは自分たちの帰属意識について「台湾人」とした人が92年の17%から2020年の67%へと飛躍的に伸びた半面、「中国人」としたのは25%から2%へと激減、台湾人且つ中国人といういいとこどり型も46%から28%に下落しています。(ウィキペディアより)これは台湾の人が世代交代が進むにつれ本土との関係が薄れ、自我の意識がはっきり出てきたということでしょう。

中国が香港にしたのと同様のことを台湾にしようとするならそれは厳しい社会的道義を問われることになります。中国外交政策は強気一辺倒からどう折り合いをつけていくのか、難しい選択を迫られているようにも見えます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月25日の記事より転載させていただきました。

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