NHKスペシャル「2030 未来への分岐点 暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦(1月9日放映)」が、科学を無視した酷い番組だったことを指摘してきた(NHKが煽る温暖化報道を統計でファクトチェック!、NHKの温暖化予測はどこまで本当か?)。
今回は同番組の表題ともなった「温暖化の暴走」のフェイクぶりを取り上げよう。
同番組では、2030年までに世界のCO2排出を半減させないと、地球の気温上昇が1.5度に達する。1.5度を超えると「温暖化の暴走」がはじまり、2100年には4度になる、として、おどろおどろしい映像を流していた。
この「温暖化の暴走」というのは、2018年に提唱された「ホットハウスアース」と呼ばれる仮説で、「北極の氷が融けて気温が上がる⇒今度はシベリアの永久凍土が融けてメタンが発生して、さらに気温が上がる⇒するとアマゾンの熱帯雨林が枯死してさらに気温が上がる・・」といった連鎖が起きて、地球温暖化が4度に達する、というもの。(下図)
図 ホットハウス・アース。原論文の図を国立環境研究所が翻訳したもの。内閣府資料。
NHKはこれをあたかも確立した科学的見解であるかのように流していた(該当部分の無料動画はこちら)が、とんでもない間違いだ。
第1に、これは各々のステップそれ自体がとても不確かなものを、いくつも連ねた「風が吹けば桶屋が儲かる」式の議論で、ひとつの仮説にすぎず、確立した科学と呼ぶには程遠く、極めて不確実なものである。
第2に、仮に気温上昇が4度になるにしても、それには何百年とか、千年以上かかる。
以上2点は、筆者だけが言っているのではない。例えばイギリス気象庁の研究者も同じ指摘をしている。
第3に、仮に「温暖化が暴走」するにしても、2100年までの気温上昇はせいぜい0.5度に過ぎない。これは原論文にはっきり書いてある。1.5度に0.5度を足したら2度であって、NHKの言うように4度にはならない。この点、NHKは明白にフェイク報道をしている。
(表)原論文に掲載された「温暖化の暴走」による気温上昇の見積もり。2100年までに0.47度、となっている。
気温上昇が仮に4度になるとしても、もし1000年かかるなら、100年あたり0.4度である。こういったゆっくりした温暖化であれば何ら問題はないだろう。過去、地球の気温上昇は100年あたりで0.7度程度だったが、人類にとって全く問題は無かった。
「2030年までに世界のCO2排出を半分にしないと、2100年には気温上昇が4度になり、災害が激甚化する」とするNHKは、仮説に仮説を重ねた不確実なものをあたかも確実な科学のように報道したのみならず、明白なウソまでついていた。
NHKは国民を温暖化対策に駆り立てるという「正義」のためなら、どんなフェイクでも報道してよいと思っているのか? 猛反省と軌道修正を望む。