バイデン政権が発足して、まもなく1週間が過ぎようとしています。
さすが就任開始早々、HTMLコードでこっそりエンジニアを募集していただけあります!
そのバイデン氏、就任22日から世界の首脳との電話会談を進めております。
トップバッターは、カナダのトルドー首相でした。キーストーンXL建設認可撤回のお詫びも兼ねたのでしょうか。
23日には、ロペスオブラドール墨大統領とジョンソン英首相、24日にはマクロン仏首相、25日にはメルケル独首相と行っています。
メルケル独首相以外、ホワイトハウスの声明に基づく会談内容のポイントはこちら。当然ながら全首脳との会談で新型コロナウイルス対策や気候変動対策で協力する立場を共有していたわけですが、個別のテーマが、言葉や行間浮かび上がってきます。
例えば、独仏英との間には「イラン」とのキーワードが挟み込まれています。公約通り、イラン核合意再開に向けた狼煙と捉えられますよね。
また、仏英では外交の最優先課題として「ロシア」に加え、「中国」が挟み込まれています。中国をめぐっては多国間での対中包囲網構築を視野に入れていると考えるのが妥当でしょうが、仏は2020年12月末に中国と包括的投資協定に大筋合意したばかり。景気回復が最優先の状況で、メルケル独首相の引退も今秋に迫るなか、どこまで緊密なネットワークになるのかは不透明です。WTO改革でなら、ある程度の成果は得られそうな気がしますが・・。
前政権と反対に、全首脳との会談で「trade」は登場しませんでした。6月30日に大統領権限(TPA)の期限切れを迎えるにあたり、英国と貿易協定をまとめ上げるならその間までが望ましいはずですが、言及されていません。TPAの延長要請が拒否されるリスクを低いと見積もっているのか。いずれにしても、あらためてコロナ対策や追加経済対策など当面は内政を優先する姿勢が浮き彫りとなりました。
カナダとメキシコの首脳との間で、「USMCA」は登場せず。一方で、カナダとは自動車セクターでの排出ネットゼロで協力する姿勢を表明しつつ、メキシコとの間では明記されていません。カナダからの自動車・部品関連の輸入は17%、メキシコは33%と後者が大きいものの、気候変動対策への技術的問題を考慮したのかメキシコとは移民問題に焦点を当てていました。
ところで、順番をみてピンときましたよね?単なる偶然でしょうが、ロペスオブラドール墨大統領以外、バイデン氏に祝辞を送った順番とほぼ変わらないのですよ。
本当に祝辞ファーストならば、フランスとドイツの間にイタリアを挟むはずですが・・イタリアの政治的混乱を反映したのかも?
日本はどうなのでしょうか?
21日に北村滋国家安全保障局長がサリバン大統領補佐官(安全保障担当)と電話会談を実施したものの、ホワイトハウス資料には残っていません。日経新聞いわく、サリバン氏は「日本防衛の義務を定めた日米安全保障条約5条が沖縄県・尖閣諸島の防衛に適用されるとの認識を伝えた」というのに、菅首相とバイデン氏の2020年11月の電話会談で発生した公式資料の行き違いが思い出されます。
・・・なんて杞憂は、岸防衛相とオースティン国防長官との間の電話会談に関する国防総省発の声明で消え去りました。オースティン国防長官が日米保条約5条が尖閣諸島にも適用することを確約したと明記、ツイッターでも「自由で開かれた太平洋」と表記しています。菅氏との電話会談後の資料で使用した「豊かで堅固な(prosperous and secure)」インド太平洋との表現は見当たりません。
ひとまず、日米が地域内外のパートナーとの協力を強化する方針を共有したことで間違いないでしょう。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年1月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。