第3波ピークアウトでも緊急事態宣言延長は必要か? 連載㉖モンテカルロシミュレーションで検証

2021年02月02日 06:01

新型コロナは、1月に第3波がピークアウトし、現在、急激な減少フェーズです。なぜ、このようなピークアウトが起こるのか。これが最も重要な課題のひとつだと思います。

photoman/iStock

1.ピークアウトという不思議な現象

今後の対策には、ピークアウトの主因を掴むことが極めて重要です。主因が分かれば、それに対して集中的に対策を講じることができるからです。しかしながら、日本で第1波、第2波の収束を見たにもかかわらず、また、世界中でピークアウトの事例を多く体験したにも関わらず、ピークアウトの主因は未だ明確には把握されていません。なぜピークアウトするのか、未だわからないというのが現状です。

ピークアウトは不思議な現象です。ある日突然、上昇フェーズから下降フェーズに移行します。その日付が、ロックダウンやG0 T0トラベルの停止に関係付けられるかというと、常にそうとは限りません。人々の対策の量に比例して徐々に変化するのではなく、ある日突然フェーズが変わります。

本シミュレーションでは、実効再生産数Rtに対応する感染確率γ(t)をパラメータにして、ピークを再現します。通常、上昇フェーズを決めるγ(t)、下降フェーズのγ(t)、それとピークアウトの日付を決めます。γ(t)を日々少しずつ変えるのではなく、ある日、γ(t)=1.4から0.7のように変化させます。これによって、現実のピークが良く再現されます。

物理的な表現をすれば、ピークアウトの現象は、人々の接触等の要因の線形的な重ね合わせの結果ではなく、相転移や、閾値のある状態変化等と同じように、非線形な現象に見えます。自粛等の努力がストレート(線形的)にピークアウトに表れない。これがピークアウトの主因の解明を困難にしている大きな理由だと思います。

もちろん、ロックダウンや自粛の効果は、上昇フェーズや下降フェーズの速度に表れます。上昇の角度、下降の角度は、国ごとの事情とともにその効果の差異が見られます。しかし、それだけでは、ピークアウトのようなダイナミクスを説明できません。

ピークアウトの主因は分かりませんが、日本は現在、現実的にピークアウトをして減少フェーズです。このフェーズがどこまで続くか、短期的な予想は今後の対策に重要です。そこで、以下では、日本だけでなく世界の現状を、特にピークアウトの様相をタイプ分けして俯瞰します。

 2.タイプA (日本、イスラエル)

以下の図では、左が線形表示、右が対数表示で、データと共にシミュレーション結果の陽性者(赤)、死亡者(青)、実効感染者(紫)と各波の成分が示してあります。

シミュレーションでの日本のピークアウトの設定日は、1月9日です。緊急事態宣言開始が1月8日ですから、日付はよく一致します。もし緊急事態宣言開始の1月8日前後で、人々の接触に関するデータが大きく変わっているなら、それはピークアウトの原因として検討すべき要因です。

表1には、この予測線を決定した時の1月27日の厚労省のデータとシミュレーション結果、この予測線による2月7日、28日の予測値(累計数と日毎値)を示しています。この予測値では、2月7日の東京の感染者が500人を切るのは、少し無理そうですが、1月31日のデータでは、既に全国で2673人、東京で633人ですから、ひょっとすると達成するかもしれません。

イスラエルは第2波までは、日本と感染者、死者の規模がほぼ同じで、日本の先行事例として参考になりました。しかし、第3波、第4波に関しては、イスラエルは分離した2つのピークですが、日本は不分離のツインピーク様相だったところが異なります。ただ、両国とも現在の波は、急激な上昇後、ピークアウトし急激に減少していることが共通です。イスラエルは急速にワクチンの接種が進んでいますから、その効果が日本との比較の中で見えてくればと期待しています。

3.タイプB 変異種(イギリス、スペイン)

この両国の共通点は、変異種です。イギリスの変異種の感染力が通常種の1.7倍と評価されていましたが、シミュレーションでも第2波と比べてほぼ1.7倍でした。陽性者も死亡者も日本と比べて1桁多いので、イギリスでは対応が大変だろうと心配しますが、ピークアウトしています。下降も急激です。ワクチンの接種も急激に進んでいますので、その効果が現れてくるのを期待しています。

スペインの第4波も変異種と言われています。確かにイギリスと同程度の感染力、上昇速度を示しています。ほぼピークアウトの兆候が見えていますので、イギリスのように下降フェーズに入りそうです。

4.タイプC 不分離ツインピーク(ドイツ、スウェーデン)

この両国の共通点は、日本と同じ不分離のツインピークだったのですが、2番目のピークがそれほど大きくならず、ピークアウト後、ゆっくりと下降しているところです。変異種の影響が出るのではないかと注視していますが、今のところないようです。

両国の形は似ていますが、スケールが1桁違います。ドイツは死亡率が高いのが特徴です。

5.タイプD 横這い型(フランス、ベルギー)

この両国の共通点は、第2ピークの後、再び上昇し次なるピークを形成するかと思ったのですが、両国とも途中で横這いのまま平衡状態を保っています。日本の第2波と第3波の間に似ています。両国とも地理的に変異種の感染が懸念されますので、これから上昇するのか下降するのか、注目です。

6.タイプE 大国型(米国、ブラジル)

この両国の共通点は大国ということです。特に米国の推移は、全世界の推移とほぼ同じです。

アメリカは、クリスマスの後に急激な上昇が見られ、変異種の効果かと思いましたが、現在、急激に下降しました。これがワクチンの効果なのか、国民の多数の感染による集団免疫なのか解明が待たれます。

ブラジルは、一部地域で急激な感染拡大があり、全体としても現在、上昇フェーズです。インド、アメリカが下降フェーズに入っていますので、ブラジルも今後下降フェーズに入ることを期待しています。

7.タイプF 孤立型(オーストラリア)

オーストラリアは、イギリスからの変異種の侵入も報告されましたが、市井感染を防ぎ、通常の種のクラスターが少しだけ報告され、現在は日毎陽性者10人未満、死亡者ゼロの状態が続いています。第1波から死亡率が変化していない唯一の国です。この状態が今後維持できるのかどうか、興味あるところです。

8.ピークアウトの主因は何か

第1波の時は、緊急事態宣言とはいえ厳格な法規制なしに自粛でピークアウトしたと思い、第2波は第1波ほどの制限なしにGo Toキャンペーン中でも収束し、第3波の感染者の急増で医療崩壊の危機と再び緊急事態宣言が出て、「それでも人出が減らない」と嘆いているそばからピークアウトし現在に至っています。第1波、第2波、第3波の収束に具体的に何がどの位効果があったかを定量的に検証すべき時期です。「人と人の接触を減らせば感染防止になる」という理由だけで、これまでの対策を継続するには限界にきていると思います。

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一般財団高度情報科学技術研究機構 理学博士

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