「政策提案型」の私たちがコロナ特措法修正案に反対したワケ

衆議院本会議にて、国民民主党は自民党・立憲民主党がまとめた特措法修正案に反対しました。

これまで「政策提案型」を標榜してきたのに、なぜ反対するの?
国民民主党は罰則導入に賛成していたんじゃないの?

その理由を説明します。

国民民主党は昨年4月以来、緊急事態宣言の実効性を高めるために、強制力「北風」とそれに見合う万全の財政支援「太陽」をセットで導入すべきと主張し、昨年12月に独自の改正案も提出してきました。特に罰則は緊急事態宣言の下で入れるべきとの立場でした。

▲昨年4月の予算委員会のパネル

しかし、政府が1月22日に国会に提出した特措法改正案は、プチ緊急事態宣言とも言うべき「まん延防止等重点措置」という新たな制度を作り、営業時間の短縮などの命令に応じなかった事業者に罰則を課す一方、肝心の財政支援は「必要な財政措置を講ずる」という漠然としたものでした。また、自民党と立憲民主党が1月28日に合意した特措法の修正内容も、罰金(過料)の金額を下げるにとどまっていました。

▲政府が提出した特措法改正案

▲自民党と立憲民主党の修正合意案(山尾志桜里事務所作成

累次にわたる政府への申し入れや与野党協議を通じて、法律案や修正案に我々の主張も盛り込んでいただいたことには、政府や与野党関係者の方々の努力に感謝しています。しかし、我々としては、主に以下の3点の問題があり、修正案を含む特措法改正案には反対しました。

1.事業規模に応じた支援がない

特措法改正案の最大の課題は、時短要請等を受けた飲食店等が、事業規模等に応じた十分な「補償(財政支援)」を受けられるかでしたが、結局、法律に明確な規定は設けられず、附帯決議でも大臣答弁でも、事業規模に応じた十分な「補償」は何ら担保されず、国民民主党が求めていた「補償と罰則をセットで導入」が実現しませんでした。

2.国民の権利制限に対する国会の関与が弱い

新設される「まん延防止等重点措置」の「国会報告」は法律上何ら規定がなく、附帯決議でも、大臣答弁でも、現在の罰則なしの緊急事態宣言にさえ求められている「事前の」国会報告さえ担保されませんでした。さらに「まん延防止等重点措置」の発動要件が客観的に示されておらず、国会の議決が不要な政令に委任されており、あいまいです。

国民の権利制限を可能にする命令や罰則が導入されるにもかかわらず、国会の関与が弱く、民主的統制の観点から問題です。

3.緊急事態宣言の効果が薄れる

「緊急事態措置」を発令する前に、予防的措置として「まん延防止等重点措置」というグレーゾーンを新設し、平事と有事の差を曖昧にしたことで、緊急事態宣言を発令する効果がかえって薄れてしまい、実効性がむしろ低下することに懸念が残ります。罰則は緊急事態宣言下に限るべきでした。

また、罰則を新たに導入するなど国民の権利制限を伴う規定を新たに創設する重要な法改正にもかかわらず、衆議院における審議が実質1日というのは国会審議のあり方として全く不十分であり、立法プロセスの観点からも問題があります。これでは国会の議論が形骸化してしまいます。

私たちが特措法等の改正を求めたのは、緊急事態宣言の下で万全の“「補償」と罰則をセットで導入”し、感染拡大防止の実効性を高めるためでした。しかし、事業規模に応じた十分な「補償」が担保されず、また平事と有事の差をあいまいにしたことで緊急事態措置の効果も薄れる可能性があることから、この法改正で感染を抑え込めるのか疑問です。そもそもの改正目的が達成されないことから私たちは法案に反対しました。

緊急事態宣言が1ヶ月程度延長されるようですが、十分な財政支援がないまま延長されれば、経済や生活への影響は甚大です。国民民主党としては、1月31日で申し込みが終了した持続化給付金や家賃支援給付金の延長・再給付や、企業の運転資金を国が直接融資(雇用維持で返済不要)する「日本版PPP」のような新たな支援策の創設など、万全の財政支援を求めると同時に、経済と感染症対策を両立できる「第4波封じ込め戦略」の実現を目指してまいります。それが「政策先導型」を掲げる我が党の責任だと考えています。

YouTube「たまきチャンネル」より


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2021年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください