こんなに変わった就職戦線「就活のワナ」石渡嶺司

アゴラブックレビュー

就活のワナ」著者の石渡嶺司氏は、大学ジャーナリストとして、20年近く継続的にウォッチしています。

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私のような現役世代のおじさんはほとんどの人が経験をしているため、だれでも就活には一家言ありますが、“就活のプロ”からは現状はどのように見えているのでしょうか?

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特徴はダブル氷河期・一括なき採用・ウソだらけ

まず、アフターコロナの就活は「ダブル氷河期」「一括なき新卒採用」「ウソだらけ」の3点が特徴だそうです。

「ダブル氷河期」とは、就活生が苦戦するという意味での就職氷河期と、採用担当者が苦戦するという意味での採用氷河期が同時進行する複雑怪奇な状況を指すそうです。世の中はコロナ不況?人手不足?でも、これは私のようなおじさんにもなんとなくわかります。もはや企業は頭合わせの人数ではなく、欲しい人しかいらないわけですね。人数の少ないアラフォー世代がリストラに直面している以上、それは必然かと。でも、欲しい人材がいない!というのが人事担当者の本音なのでしょう。

「一括なき新卒採用」とは、通年採用への移行だそうです。もはや、企業は一斉にアナウンスしてエントリーする時代ではないということです。就活時期について話を戻すと、2021年卒就活は広い意味でのインターンという仕組みが最大限活用されており、それに乗り遅れたら挽回はたいへんだそうです。インターンシップとは何かについて、学生に聞くと「就業体験」「仕事体験」「会社の雰囲を知る」と答えるそうで、私もそう思っていましたが、それは実際の選考過程のインターンとは微妙にちがいをはらんでいて、この誤解が就活生の悲劇を生むのだそうです。

「ウソだらけ」は就活のノウハウ、就活に対する議論などです。一例は、一昔前の世代の感覚だと、志望動機がとても大事でしたが、学生も企業(とくに大企業)も、もはや一生添い遂げるという気持ちが希薄になっているためか、以前ほど重視されていないそうです。たしかに、ほんとうは好きでもないのに就活生に一方的に企業の好き好きなところを縷々述べさて忠誠心を計っていた時代は、就活生、人事担当者ともに気持ち悪かったかもしれません。これ以外にもおじさん世代からは隔世の感のある指摘が並びます。

このように、就活は変わり続けています。就活は虚虚実実の情報戦です。若い人は、企業の人の言うことを真に受けすぎたり、ぎゃくに自分の信じていることを妄信しすぎたりして失敗することもありましょう。就活生はもちろん、その保護者の方にも一読をお勧めします。2022年卒の就活生にご多幸がありますように。