チャートでみる、ロビンフッダーなど米個人投資家の存在感

個人投資家がまるでスイミーのように、米株市場という大海原でヘッジファンドのような鯨を飲み込むようになった今日この頃。

Kati Volitich/Flickr

ゲームストップの株価を一時1,600%押し上げ、ヘッジファンドのショート・ポジションを手仕舞いさせるほどに急成長した個人投資家は、米株市場でどれだけの存在感を放つようになったのでしょうか?データでみてみましょう。

まず米株相場に占める個人投資家の割合です。2019年10月のオンライン証券の手数料無料化、2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大や経済活動停止、株価急落、さらには景気刺激策の小切手を支えに、2020年19.5月時点で売買注文全体の19.2%へ上昇しました。ピーク時には25%、4分の1の勢いに迫ったといいます。

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チャート:米株相場における個人投資家の割合 作成:My Big Apple NY

ロビンフッダーやオンライン掲示板レディット利用者に象徴されるように、足元の米株相場に続々と参入しているのはミレニアル世代やジェネレーションZ、あるいは中低所得者層とされています。これを裏付けるデータが、こちら。

米連邦準備制度理事会(FRB)が2020年9月に発表した調査によれば、オンライン証券が手数料を無料化した2019年時点で、株式投資を行う米世帯の割合は金融危機直前にあたる2007年以来の水準となる52.6%へ上昇しました。調査を開始した1989年以降でみると、3番目の高水準にあたります。

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チャート:株式投資(投資信託など間接投資を含む)米世帯の割合 作成:My Big Apple NY

所得層別をみると、興味深い事実が判明しています。高所得者層の間ではほぼ横ばい、あるいは低下しているにも関わらず、所得層上位41~60%で前回調査時点にあたる2016年の51.8%→55.8%、同61~80%で2016年の32.5%→34.2%、下位20%(上位80%以下)で2016年の11.6%→14.5%と軒並み大きく上昇していたのです。特に、上位41~60%と下位20%は調査開始以来で最高を遂げました。

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チャート:所得階層別、株式保有率 作成:My Big Apple NY

一番気になるのは、年齢別の株式保有率動向です。ロビンフッド利用者の平均年齢が31歳、オンライン掲示板レディットでも若者のユーザーが多いなか、35歳以下の間で株式保有率が47.8%と、ITバブル期にあたる2001年以来で最高を記録しました。75歳以上を抜き、最下位から脱出しています。また35~44歳の割合も56.1%とこちらもITバブル期以来の水準へ上昇しただけでなく、55~64歳を上回りました

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チャート:年齢別、株式保有率 作成:My Big Apple NY

持ち家か否かでも、面白い結果が判明しています。住宅所有者の間での株式保有率が前回から低下し63.5%だった一方で、非所有者は29.6%と過去最高を更新していました。

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チャート:マイホームの有無でみた株式保有率 作成:My Big Apple NY

以上のチャートをみると、オンライン無料化を手掛かりに中低所得者層の若者が株式市場に大量に参入してきた軌跡が読み取れます。そこへコロナ禍も重なり、こうした個人投資家の存在感が一段と増したことは想像に難くありません。

2兆ドル以上の運用資産をヘッジファンドなどを束ねるオルタナティブ投資運用協会(AIMA)のジャック・イングリス最高経営責任者(CEO)は2月1日、個人投資家の熱狂的な取引で市場が歪められたと苦言を呈しました。その一方で、世界最大の運用会社ブラックロックは、ゲームストップの急騰の陰で24億ドル稼ぎ出したといいます(余談ながら、バイデン政権幹部にはブラックロック出身者が並び、持続可能投資部門を率いたブライアン・ディーズ氏は米国家経済会議の委員長に就任、またラリー・フィンク最高経営責任者の右腕だったウォーリー・アディエモ氏は財務副長官に指名されている)。バイデン政権幹部に同社出身者が多い送り出し個人投資家が米株相場という荒波で勝利し続けられるかは不透明ですが、現時点で波に乗っていることは間違いありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年2月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。