ニューノーマルってどんなノーマルなのか?

コロナ後には元に戻らない、そこにはニューノーマル(新常態)がある、と様々な方面からの警笛を耳にします。「そうか、元には戻らず、新しいスタンダードが来るんだな」と人々は理解しているのですが、その新しい標準を概括しているものは案外少なかったりします。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

例えば働き方が変わる、と言われています。オフィスに毎日通わず、週数回だけとか、オンラインでの業務推進が当たり前になる、といったことは予想されていますが、これはコロナが終わってみないとわからない部分でもあります。

旅行が変わる、と身構えているのは旅行大手。JTBは「新交流創造ビジョン」と題して旅行の形が変わることを見越した世界を前提に準備が進みます。HISでは蕎麦屋をやったり、VRの旅行を考えており、横浜中華街のバーチャル街歩きをリリースしています。旅行も変わるかもしれないし、すっかり元に戻るかもしれません。人は旅好きだと思います。その旅を制限するのは難しい、けれど旅の仕方が変わる可能性は大いにあるのかもしれません。

仕事がリモートとなれば時間の制約からの解放が背中を押すかもししれません。とすれば旅行は今以上に増える、ただし、ワーケーションのような長期滞在型になるかもしれないという気もします。ただ、これもそうなるかどうかは数年たたないとわかりません。

スーツの青山商事が大リストラに着手しています。理由はスーツが売れないからですが、そもそもコロナになる前からスーツの需要は大きく減退して、よりカジュアル化が進んでいます。今や、スーツの代名詞である銀行員ですら一部ではカジュアル化が進む時代です。また温暖化で暑い夏にスーツはむしろ、客に不快感を与えるかもしれません。このような業種はコロナが変化を加速させただけでコロナが生み出したニューノーマルではないのでしょう。

こう並べていくと変わる、変わるといわれるけれど本当に変わるのか、どう変わるのか、というのは開けてみないとわからないところも多くある気がします。但し、私が強く感じるのは時代は常に変化し、改革され続けるものであり、それは個々人が足を止めても世の中の趨勢は止めることができない点であります。

例えばサラリーマンが飲みに行くという行動を分析すると会社や上司という共通のつまみがあるから盛り上がるわけです。これがオンライン業務主体になったり、業務の職務分掌が個人ごとに規定されたり、中途入社組や合併を通じて社内のブラッドがブレンド化されると気安さがなくなったりするものです。そのうち、時間の無駄という定義づけになったりするわけでそうなればサラリーマン向けの新橋や神田の店が悲鳴を上げるかもしれませんが、それもまたニューノーマルという名の進化であります。

しかし、上に掲げたいくつかの例に対して異論が多いのもわかっています。つまり、ニューノーマルを概括するとそれは個人の選択肢の拡大そのものではないかと思うのです。民主主義とは民という集団の声を多数決という範疇で決めてきたのですが、今後は新個人主義の時代でいくつかある選択肢の中から自分の価値観やライフスタイルに合わせて自分で設計していく時代が訪れたとしたらどうでしょうか?

旅行の話一つとっても昔は団体旅行で旗をもつ添乗員さんのあとをずるずるとついていく、そんなスタイルだったのに今や個人旅行が当たり前になったのにその先の旅のスタイルの変化はある意味、必然的進化だとわりと容易に想像できたはずなのです。ただ、人々は考えや常識観を枠の中にはめ込むことですっきりする傾向が強いため、時としてその枠組みから飛び出せなかったということではないでしょうか?

例えばシニアケアについて自宅で住めなくなり、老人ホームで看取りという流れがあたかも当たり前になっていますが、それを壊し、「やっぱり最後まで自宅で」という選択肢ができるような変化があっても良いと思うのです。それには自宅の設計がシニアに不都合になっている部分を過ごしやすいように変えるというアイディアがあります。見守りサービスの充実化にネットで他の方々と繋がる、デリバリーフードではなく、デリバリー総菜があればいい、といったアイディアは無数に思い浮かびます。

ニューノーマルが生み出す新しいスタンダードは定義できないもの、というのが正解のような気がします。2週間、ワーケーションをしたい、という時に海のそばの民宿もアリだと思うのです。だけどそこで仕事が出来る環境、早いスピードのWiFiがあり、畳じゃなくて椅子と机を準備してくれば民宿業はすっかり変貌できるかもしれないのです。価格の高いホテルが全てではないのです。

こういう選択肢がたくさん増えるようになるのはある意味、楽しみでもあるのです。早く、ニューノーマルの世界を覗いてみたい、そんな今日この頃です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年2月8日の記事より転載させていただきました。