貧乏になった日本国民、アベノミクスはあれでよかったのか

落合 貴之

アベノミクスはあれで良かったのか

2012年暮れに、安倍政権が発足。そこで打ち出したアベノミクスの出だしは好調でした。

Igor Kutyaev/istock

しかし、私は、特に、2014年4月に消費税を増税してからは、経済の好循環は変質してしまったと考えています。

そして、その矛盾をごまかしているうちに説明ができなくなり、そのまま、政権を放り出してしまいました。

菅総理誕生を機に、私は、前政権の経済政策、アベノミクスの総括を正直にし、改めるべきところは改めるべきだと、国会でもテレビでも主張してきました。

しかし、菅総理は、安倍内閣で官房長官であったためか、アベノミクスの負の部分は認めることなく、ズルズルとここまで来てしまっています。

これからの経済政策を考える上でも、これまでの政策の何が問題なのかはしっかりと認識し、その悪い部分は正していかなくてはなりません。

今回は、コロナ前に立ち返り、安倍政権の経済政策の何が問題だったのかを振り返ってみたいと思います。

アベノミクスで国民は貧乏になってしまっている

アベノミクスが始まった2012年とコロナ前の2019年を比べると、物価の上昇に賃金の上昇が追いついておらず、国民の実質的な賃金は下がってしまいました。

給与を切り株主還元にまわすことを奨励するコーポレートガバナンス改革を行ったり、「働き方改革」の美名の下に実質的な賃金カットをやりやすくしたり、低賃金の外国人労働者の大量受入れを解禁するなど、安倍政権肝入りの政策を実行した結果です。

更に消費税を2回増税したこともあり、経済の柱である国民の消費も大幅に下がりました。

また、国民の資産を見ても、この間、持ち家比率が低下しただけでなく、貯蓄ゼロ世帯の割合は、2012年と2017年を比べ、

20歳代38.9%→61.0%、30歳代31.6%→40.4%、40歳代34.4%→45.9%、50歳代32.4%→43.0%、60歳代26.7%→37.3%

と大幅に悪化しています。

この実態を指摘されると、2018年からは統計の取り方を変えてしまい、貯蓄ゼロの割合を人為的に下げてしまいました。

安倍政権下で、国民が貧乏になっているにも関わらず、経済政策は成功していると言い張ってきた政府。

マスコミがその矛盾を深く突くこともありませんでした。

我々国民がはっきりと言わなければ、この路線はずっと続いてしまいます。

雇用は麻生政権あたりが底

なお、コロナ前まで「失業率は低下し雇用は堅調」と強調していましたが、人口減少を受け、失業率の低下は2010年からはっきり見られます。

つまり雇用の底は、リーマンショック直撃の後、麻生政権か、鳩山政権の前半あたりで、その改善はアベノミクスの成果ではありません。

これからの経済政策は何に注目するべきか

今、コロナにより貧富の差は更に拡大してしまっています。

デフレ脱却は最低限必要ですが、株価や資産価格の上昇ばかりを優先する経済政策から、賃金上昇率や可処分所得の推移に注目した経済政策に変えていかなければ、経済の自立的な好循環は生まれません。

アベノミクスの結果はしっかり国民に説明し、政策を改めるべきところは改めるべきです。