バイデン政権の追加経済対策、成立前に民主党上院の壁?

2月に入り、トランプ前大統領の弾劾裁判が開始しました。

Third Way Think Tank/Flickr

とはいえ、経済界での最大の注目は、第3弾の追加経済対策です。

バイデン政権は就任式で「結束」を強調したものの、やむにやまれず肝煎りの「米国救済法(American Rescue Plan)」をめぐっては財政調整法を活用し、共和党の支援なしでの成立を目指す方針です。

20年12月成立の追加経済対策(Relief Bill)で盛り込まれた300ドルの失業保険上乗せの期限切れが3月14日であるため、その前までの成立へ向け急ぎます。

成立の手順は、以下の通り。足元は、各委員会の調整段階にあります。

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作成:My Big Apple NY

さて、上下院が2月5日に予算決議案を可決し財政調整措置経由での成立を固めた一方で、拘束力がないものの上院は、主に2点の修正を追加しました。

① 個人給付の対象から高所得層を除外 民主党はマンチン議員など9名、共和党はコリンズ氏議員など7名が提案。上院での票決は以下の通り。

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作成:My Big Apple NY

② 不法移民を支援対象から除外

共和党のヤング議員が提案。上院での票決は以下の通り。民主党はマンチン議員(ウエストバージニア州)やシネマ議員(アリゾナ州)の他、①に連名で提案した6名にプラス2名が加わる。

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ご覧のように、①については高所得者層の除外で超党派の「結束」を確認しました。

問題は落としどころで、共和党案と民主党保守派(マンチン議員、ウエストバージニア)では以下のアイデアを表明済みです。彼らの草案では、単身で5万ドル、夫婦で10万ドルから支給額ゼロ(2018年時点の世帯所得・中央値は6万1,937ドル)となってしまい、上院予算委員会委員長のサンダース議員は真っ向から反対しています。20年3月成立との比較でご覧下さい。

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これに対し、2月8日には下院民主党が第3弾案で②は当然ながら、①も盛り込んでいません。

その下院は約2週間以内の可決を目指し、バイデン大統領は20年3月同様、満額受け取り額の上限を単身で7.5万ドル以上の個人および15万ドルまでとする下院案に支持を表明し、実現すればほぼ20年3月の景気刺激策案に沿う形です。

翻って一人の造反者も出せない上院は、弾劾裁判を抱え且つ民主党内の保守派を束ねる必要があります。

上院、下院+バイデン政権の間で響く不協和音をめぐり、米株相場はあまり懸念していないようですが、まだひと悶着あってもおかしくない?


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年2月11日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。