12日の福祉保健委員会にて、「区立保育園で行われた不適切な保育への対応及び検証状況について」と題する報告が行われた。この事件は昨年10月、世田谷区へ情報提供があり、ある区立保育園で、保育士が園児に虐待を加えていたことが発覚したもの。ブログでもすでにお知らせした通りだが、12月1日以来の委員会報告となる。
そもそも区は当初、委員会に報告せず、各議員へ個別にこっそり説明することで幕引きにしようとしていた。この姿勢からしてとんでもないのだが、今回の資料のタイトルでも「不適切な保育」としていることから、公務員である保育士の虐待を認めたくないようなニュアンスが窺える。
報告では、区は子ども・子育て支援法に基づく特別指導検査を行い、外部有識者で構成される検討会から助言を得たとしている。同検査で指摘を受けた保育士による9つの行為すべてについて、児童相談所の見解を踏まえ、区は虐待であることを認定。その内容は以下の通り。
①午睡の際、寝入りばなの子どもに、二つ折りにした敷布団を、上半身に落とす行為をした。
②食事の片付けの時、行動がゆっくりの子に「まだ終わってなかったのか」と言いながら、頭の上に音がするくらい両手を振り下ろしてあてた。
③次の通り、乱暴な言葉を使用した。
・食事の準備の時、座ってない子どもに「何回も言ってんだろ」と言った。
・着替えをしていたが手間どっていた子に「何でこんなことも分かんねえんだ」と言った。
④食事の際、泣いてしまった子どもを隣室に1人にした。
➄食事の際、飲み込めなくても口から出してはいけないと強く指導した。
⑥おやつを食べなかった子どもの指導で、泣いていた子どもを年齢より下のクラスに連れて行った。
⑦トイレやトイレットペーパーでいたずらを2日続けた子どもに対し、オムツを使用していないのに「トイレが使えないやつはオムツで寝かせるぞ」と言った。
⑧午睡の際、おでこに消しゴムを置いて動けないようにして寝かせる行為をした。
⑨午睡の際、幼児クラスで視界をふさぐように子どもの顔にバスタオルをかぶせた。
常識的にどう見ても虐待なのだが、区はこの認識に至るまで約4ヵ月の時間を要したわけである。有識者検討会からは、保育園への巡回指導相談で共有されるべき問題や課題を、園にフィードバックしていなかったことを指摘されるなど、区の杜撰な管理指導体制が明らかとなった。また、当該園とその保育士にのみに問題を矮小化するのではなく、役所の保育課を含め、区立保育園全体として改善が必要であるとも意見された。まったくその通りである。
では、今後の改善策はどういうものか。当該園では子どもの人権についての研修を行い、保育マニュアルの見直し、「子どもの人権を擁護するためのチェックリスト」と「安心・安全に体を休めるための午睡チェックリスト」を新たに作成し、全職員で活用するという。区としては、すべての区立保育園の保護者にアンケート調査を実施、HPで公開する予定とのことだ(なぜか共産党は、このアンケート公表に反対した)。
改善策、虐待防止策で有効と思われるものは速やかに導入し、その都度バージョンアップしていくことは当たり前だが、こなし作業で終えられては困る。最も肝心なことは、保育に携わる区と園の、子どもの人権についての意識改革であることは言うまでもない。「不適切な保育」などとオブラートに包んだ言い方をしているようでは、森元首相の失言と同レベルである。この問題については、引き続き注視していきたい。なお、当該保育士の処分決定についてなどの最終報告は、4月の予定だ。