平均質問回数は3.3回。都議会議員は「1年に1回質問するだけの簡単なお仕事」なのか?
2017年の都議選直前に『【都議会議員質問回数ランキング】任期4年間で1度も質問しなかったオールゼロ議員が10人』というコラムを書いた。
早いものであれから4年が経ち、今年7月にはまた都議会議員選挙が行われる。
4年前のコラムでも、都議会議員の4年間の平均質問回数が4回であることを指摘し、「1年に1回質問するだけの簡単なお仕事です」では困ると指摘した。
都議会の構成は、前回の都議選で都民ファーストが圧勝し、これまで圧倒的な数を占めていた自民党は野党的な立場に転じた。
この4年で都議会はどう変わったのかも見てもらいたい。
とくに東京都民の皆さんには、半年を切った東京都議会議員選挙に向けて、地元の都議会議員の活動や、支持政党の活動などを是非チェックする一つの指標にしてもらえればと思う。
図表1: 会派別質問回数と1人平均質問回数(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
今回、都議会のデータをまとめたのは、4年前の都議選以降の2017年第3回定例から現時点で公開されている2020年第4回定例までの都議会定例本会議における代表質問、一般質問の質問回数と、文書質問による質問回数で、2020年第4回定例の文書質問のデータは含んでいない。
また対象としたのは、この中で、質問をした都議会議員で、現職126人のほか、先日の千代田区長選挙に転出した、ひぐちたかあき 千代田区長、同じく北区長選で転出した、おときた駿 参議院議員、参議院選挙に転出した、やながせ裕文 参議院議員の3名を加えた129名のデータとなっている。
都議会任期の4年間のうち3年半程のデータということになるわけだが、総質問数は442回、議員一人あたりに割り返すと3.4回ということになる。
都議の仕事の全てがこの質問回数で測れるものでないことは言うまでもないが、こうした数字を見る限りでは、「1年に1回質問するだけの簡単なお仕事です」というような状況は、未だ改善が見られないように思う。
質問のカテゴリー別にも見てみると、代表質問は総回数が70回で一人あたりが0.5回、一般質問は総回数が223回で一人あたりが1.7回、文書質問が総数が149回で一人あたりが1.2回だった。
今回、対象とした代表質問、一般質問、文書質問にはそれぞれの傾向があり、各会派ごとの質問回数と所属議員1人平均の質問回数の特徴なども含めて紹介していこうと思う。
会派別に見ると質問総数は、共産と都民ファーストがダントツ
図表2: 会派別質問回数(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
まず、今回対象とした代表質問、一般質問、文書質問を合わせた総数で見ると、最も質問数の総数が多かったのは、都民ファーストの会 東京都議団(以下、都民ファースト)の122回で、僅差で日本共産党東京都議会議員団(以下、共産)が119回でした。
この2会派の質問数が極端に多く、以下、東京都議会自由民主党(以下、自民)と都議会公明党(以下、公明)が48回、東京都議会立憲民主党(以下、立憲)が46回でほぼ並んでいる。
グラフで見ると明らかな通り、都民ファーストは一般質問の108回がその中心であり、一方で、共産は文書質問の88回がその中心であることも分かる。
代表質問は、都民ファースト、自民、公明、共産、立憲が14回で並び、それ以外の会派や無所属はゼロとなっている。これは、年4回の都議会定例会で4年前から現在までに行われた今回対象となった14回の議会で配分された各会派は平等に機会が与えられ、一方でそれ以外の会派は質問できない形になっているからだ。
さらに特徴的なのは、都民ファーストと公明は文書質問がゼロ。自民も1回しかないということも見えてくる。
議員一人あたりで見ると、立憲、無所属が1・2位に変わる
図表3: 会派別1人平均質問回数(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
一方で、こうした各会派の質問回数も、所属する議員数で割った各会派の議員一人あたり平均の質問回数で見ると大きく異なる。
1人あたりで最も質問回数が多かったのは、9.2回の立憲(5人)、次いで9.0回の無所属(3人)、7.0回の無所属 東京みらい(以下、みらい)、6.6回の共産と続いた。
無所属の議員は3人で、便宜上会派と比較するために3人の総数や平均で比較している。
総数では共産とほぼ同数で圧倒的に多かった都民ファーストは、所属議員が48人いることで、2.5回と一人あたりにするとそれほど多いわけでもないことも見えてくる。
一人あたりで見た際に質問回数が最も多かった立憲は、質問のカテゴリー別に見てみると、6.0回の無所属に次いで5.8回と多かった文書質問の多さと、一人あたりにした際に2.8回と他会派に比べて極端に高くなった代表質問が押し上げていることが分かる。
総数でみた際には極端に見えた都民ファーストの一般質問数や、共産の文書質問もそれほど極端な数ではないことなども見えてくる。
任期中1度も質問していないオールゼロ議員13人は自民7名、都民ファースト3名、公明2名
図表4: 総質問回数ゼロ議員一覧(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
2017年の改選以降、今回の集計までで、代表質問、一般質問、文書質問のどのカテゴリーにおいても質問をしていない、いわゆる「オールゼロ議員」は13人いた。
議員名を挙げると、伊藤ゆう 議員(都民F・目黒・ 3期)、木村基成 議員(都民F・世田谷・2期)、石毛しげる 議員(都民F・西東京・4期)、尾崎大介 議員(都民F ・北多摩第三・4期)、中屋文孝 議員(自民・文京・4期)、鈴木あきまさ 議員(自民・大田・5期)、三宅しげき 議員(自民・世田谷・6期)、高島なおき 議員(自民・足立・5期)、高橋信博 議員(自民・小平・4期)、西野正人 議員(自民・日野・1期)、林あきひろ 議員(自民・北多摩第三・1期)、藤井一 議員(公明・大田・7期)、遠藤守 議員(公明・大田・4期)だ。
ただ、大田区の鈴木あきまさ 議員(自民・5期)、日野市の西野正人 議員(自民・1期)、北多摩第三の林あきひろ 議員(自民・1期)の3名については、2020年7月の都知事選と同日行われた都議補選で選ばれたばかりの都議であり、単純に比較するのは酷であり、その辺は汲み取ってご覧頂きたい。
このオールゼロ議員を会派別に見ると、自民が7名(4名)で最多、次いで都民ファーストの4名、公明2名。この3会派、所属議員48人、26人、23人と、議員数が多い会派トップ3でもあり、所属議員の数による弊害も考えられる。
また、期数別に見えると、7期が1人、6期が1人、5期が2人、4期が5人、3期が1人、2期1人、1期2人(0人)で、期数の平均は3.8期(4.3期)と、ベテラン議員が多い。このことは全議員の平均期数2.5期と比べても見えてくる。
※()書きは、補選当選議員を除いたもの。
冒頭でも触れたが、議員の仕事は議会の質問だけではない。
しかし、議会における質問は議員に取って重要な仕事の一つでもあり、任期中1度も質問しない議員がいるということには、違和感も感じる。
制度面の課題もあるのだろうが、そもそもその制度は議員が作ったものだ。ベテラン議員であれば当然、制度についても変えられる立場にある。こうした実態については、是非、有権者の皆さんにもご共有いただければと思う。
最多質問は中村ひろし 議員、宮瀬英治議員、尾崎あや子 議員、山内れい子議員の4人
図表5: 総質問回数上位25議員一覧(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
夏の都議選に向けて、この任期中に積極的に質問を行なってきた議員についても紹介しておきたい。
今回の調査で質問総数が最多となったのは、13回で、尾崎あや子 議員(共産・北多摩第一・2期)と中村ひろし 議員(立憲・三鷹・3期)、宮瀬英治 議員(立憲・板橋・2期)、山内れい子 議員(無所属・北多摩第二・3期)の4人だった。
冒頭にも4年前の調査結果のブログを紹介したが、この際は同数2議員が最多質問になっていたが、そのうちの1人が、今回も1位となった中村 議員だった。こうした議員は、しっかりと評価されるべきではないかと思う。
5位は12回で、上田令子 議員(無所属・江戸川・2期)。
6位は11回で、和泉なおみ 議員(共産・葛飾・2期)、原のり子 議員(共産・北多摩第四・1期)、上田令子 議員(無所属・江戸川・2期)。
8位は10回で、藤田りょうこ 議員(共産・ 大田・1期)、9位が9回で、里吉ゆみ 議員(共産・世田谷・2期)と池川友一 議員(共産・町田・1期)が並んだ。
今回、質問回数ベスト25の議員を一覧にしてみたが、その平均期数は1.8期と極めて議員在籍期間が短い議員が多いという結果になった。オールゼロ議員の平均が3.8期だったことと比較すると、質問回数と期数の相関関係があるようにも見える。
また、政党別に見ると、ベスト25に入った31人のうち半数近い13人が共産の議員だった。共産の所属議員が18人ということを考えると、かなり極端な数字であることも見えてくる。
代表質問トップ3は、増子ひろき 議員、山口拓 議員、中村ひろし 議員
図表6: 代表質問回数上位10議員一覧(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
ただ質問回数も質問のカテゴリーによって状況は異なる。
代表質問は一変、ベスト10に入った17人のうち、自民が5人で最も多く、立憲が4人、都民ファーストと公明、立憲がそれぞれ3人、共産が2人となる。
最も代表質問数が多かったのは、7回の増子ひろき 議員(都民F・文京・3期)で突出しており、次いで4回で山口拓 議員(立憲・世田谷・3期)と中村ひろし 議員(立憲・三鷹・3期)が並んだ。
会派を代表しての質問であることもあり、トップ10の平均期数は3.5期と期数の多い議員が目立つのも特徴と言える。
一般質問の最多は9人。自民5人、みらい2人、都民ファーストと無所属が1人
図表7: 一般質問回数上位10議員一覧(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
一般質問は、逆にベスト10の平均期数は1.4期と、各カテゴリーの質問の中でも最も低かった。
最多となる質問回数も4回と少なく、馬場信男 議員(都民F・足立・1期)、川松真一朗 議員(自民・墨田・2回)、小松大祐 議員(自民・世田谷・2期)、柴崎幹男(自民・練馬・2期)、伊藤しょうこう 議員(自民・八王子・1期)、田村利光 議員(自民・西多摩・1期)、森澤恭子 議員(みらい・品川・1期)、斉藤れいな 議員(みらい・南多摩・1期)と、上田令子 議員(無所属・江戸川・2期)と9人が並んだ。
ベスト10には50人が入っていることなどからも、代表質問、一般質問、文書質問の中で、総質問数は最も多い一般質問だが、特定の議員に質問が集中されることなく、幅広い議員が平均的に質問する傾向の強い質問携帯だということも分かる。
政党別に見ると50人中、半分以上の29人が都民ファーストというのも特徴的で、次いで自民の8人、公明の6人と大会派がその殆どを締めている。
文書質問最多は尾崎あや子 議員。ベスト10中6人が共産
図表8: 文書質問回数上位10議員一覧(2017年第3回定例〜2020年第4回定例)
最後に文書質問だが、最も質問が多かったのは、質問数11回の尾崎あや子 議員(共産・北多摩第一・2期)、2位は10回で、和泉なおみ 議員(共産・葛飾・2期)、宮瀬英治 議員(立憲・板橋・2)、山内れい子 議員(無所属・北多摩第二・3期)が並んだ。
ベスト10を見ると、6人が共産、2人が立憲、2人が無所属だった。
代表質問、一般質問が大会派が多かった一方、最後の文書質問は共産党よりも小さい会派や無所属が占めた。
文書質問は、制限なく議員個人で対応できる質問形式であるため、国会における質問主意書同様に、とくに野党的に追求する会派や無所属の議員が多用する傾向にあることも見える。
結局、上位の質問数がこの文書質問が多いため、結局、総質問数の上位でもこの文書質問での質問数が大きく反映される結果となった。
今回の提示を夏の都議選に関心を持ってもらったり、選択の一つの指標にしてもらえれば
今回は、今年7月に都議選を控え、政局ではない、都議会の仕事についても関心を持ってもらえないかと都議会議員の活動データを調査し、まとめてみた。
もちろん議会での質問だけが、議員の仕事であるとは思わない。
一方で、では議会質問が議員の仕事ではないのかと言えば、「そうだ」という議員は少ないはずだ。もちろん重要なのはその中身で、都議会の議事録を読んでいるとレベルの低い質問も多い。
しかし、そんな質問の質も質問しない事には始まらない。これまでの選挙は、選挙の際に発しられる「綺麗ごと」だけを聞いて判断されてきた。特に現職議員、元職議員については、議会の中でどんな仕事をしてきたのかをしっかりチェックをしていく必要がある。
こうしたデータを公表すると、「質問なんて野党が」という議員がいたりする。実際に所属議員が多いと質問が回ってこない構造もあったりもする。一方で、先述したように制限なく議員個人で対応できる文書質問などもある。
政党や会派ごとにお作法もあるので、政党ごとの全議員一覧については、また別の記事を書いて紹介したいと思っている。是非、地元の議員が都議会でどのように活躍しているのかを知る一助にしてもらいたい。