箱根山麓、南箱根にメガソーラー建設の計画が進んでいます。箱根というと神奈川県というイメージを持つ方が多いと思いますが、箱根山の西側は静岡県、メガソーラーの計画が進んでいるのは函南町(私の選挙区)です。開発面積は65ha(東京ドーム13個分)、そのうち31haの山林を丸裸にして10万枚のソーラーパネルが設置される計画です。
2018年にスタートした計画に対しては地元の軽井沢区を中心に反対の声が大きくなり、私自身も所管官庁である資源エネルギー庁に対して建設を認めるべきではないと何度も伝えてきました。
ところが、2019年7月8日、静岡県は開発業者に対して林地開発許可を出しました。森林法第10条の二では、林地開発許可にあたっては「都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない」とされています。5月30日に地元の函南町が林地開発に「不同意」であることを書面で県に伝えています。これほどの大規模な森林開発が地元自治体の意見を無視するかたちで進められている状況は、森林法の趣旨に明らかに反しています。
森林法は林地開発許可について、「災害の防止」「水害の防止」「水の確保」「環境の保全」の4つの要件を定めています。メガソーラーの開発地域は「砂防指定区域」に隣接しており、区域内には県が建設した二つの堰堤が設置されています。砂防指定区域の直下には災害時の避難所となる丹那小学校が存在しています。森林審議会の議事録を確認したところ、下流域への土砂の流出の懸念が表明されています。
手続き上の最大の問題は、業者と河川管理者(函南町)との間で「河川協議」が行われていないことです。これまで森林だった場所を開発するのですから、その地域の保水能力が落ちるのは明らかです。メガソーラーで増水する水は丹那沢と赤沢川(現地を視察しましたが川は荒れています)から柿沢川に流れ、狩野川に合流します。狩野川流域は2019年10月12日に台風19号に襲われ、内水被害で多くの家屋が浸水しました。災害後の検証によって狩野川の堤防は、場所によってはあと18センチで決壊していたことが明らかになっています。河川協議すら行われていないにもかかわらず水害が防止できるとした静岡県森林審議会の判断には強い疑義を覚えます。
ここ数年、全国のソーラーパネル設置場所で災害が発生してきました。2019年12月、林野庁はメガソーラー設置を目的とした開発行為の許可基準を大幅に厳格化しました。静岡県も2020年7月に開発許可基準を改定していますが、既に林地開発許可が出た函南町のメガソーラーには適用されていません。基準の改定が必要なほど危険性があるにもかかわらず、粛々とメガソーラーの開発が進む状況を見過ごすことはできません。静岡県は森林審議会に審議のやり直しを求めるべきです。
函南町のメガソーラーの開発は、環境アセスの段階に入りました。環境アセスに対しては、私が把握しただけでも1,000件を超える意見が出されています。函南町は仁科町長を先頭に町当局、議会、区長会、商工会と「オール函南」でメガソーラーに反対を表明しています。
私は地域の皆さんと力を合わせて狩野川第二放水路の建設を強く働きかけてきました。上流部におけるメガソーラーの建設は、洪水から地元を守ろうとする努力を無にするものです。古来より『治山治水こそ政治の要諦』とされてきました。政治家としての使命を全うするために、函南町のメガソーラー開発は何としても阻止したいと思います。
編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(静岡5区、無所属)のブログ 2021年2月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。