バイデン政権は、1.9兆ドルの追加経済対策に最低賃金15ドル引き上げを盛り込む方針です。
その裏側で、コロナ禍での景気回復と格差縮小を目指す同政権に、もう一つの大きな課題が圧し掛かります。
それは、米国人の平均寿命。
なぜかと申しますと、コロナ禍に見舞われた2020年上半期に米国人の平均寿命は再び短縮してしまったのですよ。しかも、1年も短い77.8歳とあって、非常に深刻ですよね。特に男性が前年を1.2歳下回る75.1歳と大幅に下がり、女性は80.5歳(前年は81.4歳)と比較しても明らか。男女の平均寿命差は5.4歳と、2019年の5.1歳から拡大してしまいました。
チャート:米国人の平均寿命、2020年にガクンと低下、特に男性で顕著に
人種別をみると、白人、黒人、ヒスパニックの間で最も長寿だったのはヒスパニック系で79.9歳。次いで白人が78.0歳、黒人になると最低で72.0歳と極端に下がります。ここは失業率や貧困率だけでなく、肥満率が影響したことでしょう。黒人の肥満率は2018年で49.6%と、ヒスパニックの44.8%、白人の42.2%を大きく上回ります。ちなみに、アジア系は格段に低く17.4%でした。
チャート:人種別の平均寿命、2020年上半期と2019年との比較
死因はコロナ禍が少なからず影響したとみられ、薬物の過剰摂取や心臓麻痺などが挙げられます。非常に残念ながら、感染拡大防止措置である外出禁止措置やステイホームの励行が影響した可能性は否定できそうにありません。こうしてみると、新年の抱負へ向けた気迫すら感じらそうな気がします。
米国人の死因ベスト10と言えば、こちら。このような状況でコロナ禍が重なれば・・。
2020年のコロナ禍で平均寿命が下がったことより、そもそもの問題として米国の平均寿命は世界と比較しても低いんですよね。先進国では最も短いというのは、ヘルスケアの改善を掲げるバイデン政権にとっても不名誉な称号でしょう。
20年12月末成立の追加経済対策(Relief Bill)に盛り込まれた個人給付を追い風に、米1月小売売上高は大幅増加しました。問題は、その支出先がどこへ振り向けられたか。健康を維持する方向に充てなければ、平均寿命の回復は一段とゆるやかになりそう・・。嗚呼、人生は短いのですねぇ。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年2月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。