緊急事態宣言下の日々:変異ウイルスは広がっていないのか?

一昨日、コロナの民間のPCR検査を受けてみた。唾液でできるもので、痛みもかゆみもなく、30秒程度で試料を取ることができる。期待していたように陰性であったが、持病のある高齢者として、コロナ感染しないようにピリピリとした日々を送っている。通勤電車の混雑はやや緩和された程度だし、車で通勤すると交通量が増えて時間がかかる。そして、相変わらず、年度末の工事が多く、思わぬところで渋滞に出くわす。さらに、歩いている人でマスクをしていない人の割合も増えてきている。

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PCR検査の制限、アベノマスク、GoToキャンペーン、ココアアプリの不具合、2回目の緊急事態宣言発出の遅れと、どう考えても科学的でない施策にもかかわらず、国民の自粛によってコロナ陽性感染者の数は減少してきた。しかし、下落傾向にブレーキがかかってきている可能性もあるので、コロナ変異株のことが気がかりである。気の緩みがあるかもしれないが、今の制度ではこれ以上の行動制限は難しい。

変異種が1.7倍感染しやすいことは、本当は感染対策から極めて重要だが、あまり理解されていないように思える。従来株が一人から一人に感染を起こす、感染症の潜伏期間が1週間と仮定すると

 

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のように、当初4-5週後までは目に見えるような違いに気づかなくとも、9週後には驚くべき速さでの感染の拡大となり、その後は爆発的様相を示してしまう。現在の再生産数が0.7でも(0.8以上に上がってきているが)、変異株が中心になると今と同じ対策では、1を軽く超えてしまう。

コロナ感染に慣れてきて、全国の感染者数が1000を超えても、何も感じなくなってきているのかもしれない。昨秋までは1日1000を超えると緊張感が走っていたが、7000を超える数を経験すると非常に少ない数字のように思えてくる。同じ匂いを嗅ぎ続けると、その匂いに鈍感になってくるのと同じだ。しかし、危険がひたひたと忍び寄ってきているのかもしれない。ウイルスのゲノムを徹底的に調べていくという真っ当な科学が必要だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2021年2月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。