2月19日の日経新聞の2面に、「疑問残すWHO武漢視察」という記事が掲載された。
いわゆる「テドロス事務局長率いるWHO」の中国寄りの視察結果に疑問を呈する内容だった。
記事によると、WHOの担当課学者のベンエンバレク氏は、中国の武漢ウイルス研究所からのウイルス流出の可能性が「極めて低い」とし、今後この仮説は排除する考えを示したそうだ。
中国寄りと疑われることを嫌ったテドロス事務局長により、ベンエンバレク氏の見解は軌道修正されたようだが、いずれにしても担当科学者と事務局長の見解が不一致するなど、極めて信頼性が乏しい視察結果といえる。
テドロス事務局長の責任について
昨年4月15日、私は「新型コロナ禍:WHOテドロス事務局長の更迭を求めるとき」という記事をアゴラに寄稿した。
その後、日本政府がいわゆる「テドロス事務局長の責任について」具体的にどのような対応をしたのか、寡聞にして知らない。
外交戦略上、WHOに極端に反目する姿勢をとるのは得策ではないのかもしれない。
しかしテドロス氏は、蔓延初期である2020年1月に中国に訪れたものの武漢の視察は一切せず、北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談して、中国の見解を聞いて帰るという無責任な振る舞いをする人物だ。
さらに、「中国の渡航制限措置は必要ない」と発言し、世界的蔓延を「劇的に早めた」責任は、未だ一切とっていない。
国際社会がこの人物に沈黙を続けていることが、すなわち「中国偏向問題なし」という自信を、現在のWHOに与えてしまっている側面はありはすまいか。
私の記憶では、この人物に明確な「NO」を突き付けたのは、トランプ前大統領だけだった。
WHO武漢視察の謎
冒頭の記事に戻る。
日経新聞の記事では、「動物やヒトから分離したウイルスを誤って外部に出した可能性」についての検証が重要だ、と述べている。
先のベンエンバレク氏は、中国国内の「BSL4」という極めて高い危険度の病原体を扱う施設を視察し、管理状況を確認できた(ので、今後武漢の研究所からウイルスが流出したとする仮説は排除する)、とする。
しかし、武漢ウイルス研究所の著名な研究者である石正麗氏は2020年7月、米サイエンス誌の質問に「新型コロナの研究は、(危険度水準が低い)BSL2、3を使っている」と答えたそうだ。
つまり、WHOのベンエンバレク氏が視察したのは、「新型コロナの研究をしていない施設」だった可能性が高い。
そのうえ、日経新聞が疑問を呈しているように、視察時に実験ノートを確認したのか、最初の患者とされる人物から聞き取り調査をしたのかも「不明」だとすると、WHOの今回の視察にどれだけの信ぴょう性があるといえるだろう。
WHOの責任を問うべきとき
このまま国際社会が、「テドロス事務局長率いるWHO」の責任について口を閉ざし続けるならば、状況は確実に悪化する。
WHOの研究者であるベンエンバレク氏の振る舞いは、中国によるWHOの抱き込み策が着実に進行している結果とみるべきだ。
今一度提言する。日本政府として、WHOテドロス事務局長の過去の振る舞いや発言等を検証し、責任の所在を明確にしたうえで、相応の対応を求めるべきときだ。