議事堂乱入者の大半は普通の人々だった!? 米誌掲載の調査分析を分析する

1月6日にワシントンの国会議事堂に乱入した人々が、一体どういう素性で、どんな意図の下に行動したのかというテーマは、米国人ならずとも興味をそそる。アメリカの一流総合雑誌「アトランティック」電子版に2月2日、その調査分析(以下、分析)が掲載された。

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「The Capitol Rioters Aren’t Like Other Extremists(国会議事堂の暴徒は他の過激派の様でない)」と題する分析は、シカゴ大のペイブ教授と「安全保障と脅威に関するシカゴプロジェクト」のルビー上級研究員による8千字ほどのもの。

分析は「暴動」に「riot」、「insurrection」と「mob」を使う。どれも辞書では「暴動」だが「riot」は「(集団による公的な場所での・・に反対する)暴動」、「insurrect」は「反乱」や「rebellion」よりも「小規模で非組織的」、「mob」は「野次馬」や「(破壊活動をしかねない)群衆」などと併記される。

これら3語の使い分けが冒頭の次の文節から判る。

On January 6, a mob of about 800 stormed the U.S. Capitol in support of former President Donald Trump, and many people made quick assumptions regarding who the insurrectionists were. Because a number of the rioters prominently displayed symbols of right-wing militias, for instance, some experts called for a crackdown on such groups.

ラフに意訳すれば「突進したのは野次馬(mob)を含む800人だが、その内の誰が組織的でなく小規模な反乱者(insurrectionists)なのか多くの人が推測した結果、右翼民兵のシンボルを付けた暴徒(riot)が若干いたので、それと判った者が取締りを求めた」となる。

分析は1月末時点で235人を「insurrectionists」とし、内20人を「ギャング」に分類した。基準は、裁判文書や特定組織(プラウドボーイズやオースキーパーなど)に親和性を示すSNS投稿、そして服装やワッペンなど。

235人の内この20人を含む193人が、「議事堂内にいた」か「敷地に入るべく障壁を突破した」容疑で起訴された。ということは、この時点で「mob」800人の75%が、「野次馬」すなわち「群集心理から付和雷同して尻馬に乗った者」と知れたか。

分析はこの193人の個人データを、15年から5年間に政治的原因による暴力で逮捕された右翼過激派108人の陳述や宣誓供述書などのデータと対照した。当初は193人の多くが108人の過激派と繋がりがあるはずと睨んだからだ。

が、その憶測は見事に外れる。193人の9割(173人)は普通の人々で、66%は35歳以上で平均年齢40歳、40%は事業主かホワイトカラーで失業者は僅か9%だった。対照した右翼過激派108人では、失業者が25%でホワイトカラーは僅少、61%が35歳未満だ。

さらにその多くは、トランプが勝った郡の者ではなく、半分以上はバイデンが勝った郡の者だった。また30人余りはトランプが60%に満たない投票で勝った郡から来ていたのだった。

この辺りから筆者は、「予断」に充ちた「見当外れ」の分析と感じ始めた。なぜって、トランプ票が存外に少なかった郡のトランプ支持者が、より強い疑念を募らせるのは当たり前だから。が、ともかく「分析の分析」を先に進める。

分析は「驚くべきことに、反乱者を生み出した郡に特別なことは何もない」として、反乱者の39%が、トランプが投票の40〜60%を得た郡の者で、人口の40パーセント超が白人でない郡からの者は12%とし、これは「全米の郡の典型だ」と述べる。

さらに、重要なのはバイデンが圧倒的に勝ったニューヨーク、サンフランシスコ、ダラスなどのある大都市圏の郡から反乱者の3分の1が来ているとし、「赤い地域だけが潜在的な反乱者を生み出していると推測したなら、あなたは間違っている」とする。

結論として分析は、「暴動が米国政治に新しい勢力を見せたこと」とし、それは「右翼組織の寄せ集めに限らず、暴力を核として保持し、トランプ支持者が少数派である場所からも力を引き出す、より広範な大衆政治運動だ」と述べる。

それゆえ「雇用を促進したり、参加者が年齢と共に穏やかになるのを辛抱強く待ったりするといった、暴力的な過激主義に対抗する標準的な方法のいくつかは、おそらく中年の中流階級の反乱者を和らげることはない」として稿を終わる。

やはり「予断」と「見当外れ」の印象を持つ。分析は乱入者を当初から右翼過激派と決め付けた。が、PC桟敷でyou tubeをウォッチしていた限りでは、確かに一部に「過激派」と思しき者もいたが、多くは「20人」に扇動されて「尻馬に乗った」普通の人々に見えた。

また逮捕者の中には、動画をCNNとNBCに各35,000ドルで売ったと報じられた自称ジャーナリストがBLM支持を認めた様に、トランプ支持でない者もいた。当日の議事堂警備を巡る上院公聴会では、24日夜中にも議事堂警察と下院守衛との泥仕合が行われている。

普通の人々の「選挙不正への疑念」や提訴が悉く連邦最高裁で門前払いされたことへの不信感の強さは世論調査が物語る。まして7500万人のトランプ支持者に於いてをや。素直な分析の理解こそが「普通の人々」がタガを外した証左ではあるまいか。暴力が否定されるべきは勿論だが・・。

ところで22日のWedge誌が、この「分析」を基にした「米連邦議事堂を襲ったか『暴徒』の意外な素顔とその病巣」と題する斎藤彰氏(元読売新聞アメリカ総局長)の論考を載せている。同氏はここ数カ月トランプに否定的と思える記事を何本か同誌に寄せておられる。

論考は、前段が「分析」の要約で、冒頭部と後段に同氏の意見が出てくる。同氏の意見部分を拾うと、先ず、逮捕者の大半が教育的にも社会的にも「あるレベル以上の階層」なのに、トランプが主張してきた「大規模不正選挙」説を真に受けてきたという事実が「衝撃的だ」という。

そして、乱入後も「トランプ再選を何の疑いも持たずに信じて切っている」のは、「根拠もなく客観的事実と全く異なる幻想を抱いてきたとも言える」と述べ、「分析」には載っていない4人の逮捕者の供述を記している。

続いてこれらの供述の共通点を、「最高指導者の演説またはツイートによる呼びかけの呪縛」で「まともな判断力を失っていた点」とし、トランプの「ツイート、記者会見での虚言癖」は「米国主要メディアで繰り返し報じられて来た」と述べる。

その例にワシントン・ポスト紙が「全くの虚偽」、「不正確な内容」、「誇張」の発言回数が過去4年間で3万8千回近くに達したと報じたことを挙げ、さらに「このような実際とは異なる発言」をトランプ側近は「alternative facts(もう一つの事実)」と黙認し続けてきたとする。

「大規模選挙不正」や「トランプ再選」といった「もう一つの事実」を「垂れ流した」のは「Fox News」や超保守の新興チャット・メディアで、これらを「全米の伝統ある主要新聞、テレビ・ネットワークとは異なる『alternative media』にほかならない」とも断じる。

そして、連邦最高裁が「バイデン当選」の正当性を確認したことを「誰にも否定しようもない既定事実として「大多数の国民も受け入れたはず」なのに、共和党議員の8割以上が「バイデン当選を認め」なかったのは「新興メディアの影響力がワシントン」にも「浸透しつつある」ことを示したとする。

最後に「Twitter」や「Facebook」が「社会に対する悪影響を極力抑えることを目的」にトランプを「締め出す措置を講じている」と擁護し、「ひとつしかないはずの『事実』が複数拡散すること」は社会の混乱要因となりかねず、「病めるアメリカ社会の病巣は深く、事態は極めて深刻」と結んでいる。

だが、メインストリームメディアやビッグテックを難じる声は少なくないし、バイデン当選の正当性を「大多数の国民も受け入れた」だろうか。斎藤氏の決め付けは7500万のトランプ支持者や共和党議員を蔑ろにしかねまい。先の「分析」共々筆者のとは違うが、これも一つのお考え、と拝読した。