島根県知事の主張、動き方に対して物申す

多田 芳昭

島根県丸山達也知事の一連の動きが物議を醸している。あたかも五輪反対の様に受け取っている人も多いのではないだろうか。しかし、中身はそうでもないのが実態なのだ。まずは、主要発言を列記し、検証してみる。

島根県の丸山知事 NHKより

「新型コロナウイルス感染症対策の改善・強化がなされないままでは、今夏、東京2020オリンピック・パラリンピックを開催すべきではなく、また、そのプレイベントである県内での聖火リレーについても、中止と判断せざるを得ないと考えております」

具体的に何を示しているのか不明

漠然と感染症対策の改善・強化と言っているが、具体的に何を示しているのかこの文脈では不明。メディアや根強い五輪反対派(この層はコロナは関係なく反対)は、我が意を得たりと言わんばかりに、五輪反対キャンペーンを強化し、多くの国民は島根県が『五輪反対宣言をした』と誤解している状況だろう。

「東京オリンピックをこういった(逼迫した現状の)事業者(島根県の飲食店)みなさんが快く受け入れられる状況にはありません

少々首を傾げるのが、島根県は緊急事態宣言の対象ではなく、時短などの要請は県独自の施策であり、本来通常営業をしても良い環境、感染状況ではないのだろうか。緊急事態宣言下の地域との往来、観光事業としてGoToなどを要望しているのだろうか。メッシュ細かくゾーニングして対策するべきだとメディアも専門家も言っているはずだが、全国統一の規制が必要と言わんばかりの同調圧力に侵されて、県民を苦しめているのは県政ではないのかと感じる。

「すべてとは申しませんが我々の地域で飲食店が残っていけるような別途の給付金の支給が必要だということで要望させていただいている」「日本の政治とか経済の世界ではルール破り、常識を外れたことをやっていることは分かります」とした上で、「この状況で我慢をしてオリンピックを受け入れるのが国民の義務だとは島根県民の方々には言いがたい

結局、金の無心なのか?

一連の島根県知事の主張に、吉村大阪府知事が共感するとして発信しているのが、

情報はすべて東京目線の発信。島根県知事からすると、地域経済は疲弊していると思う。観光や飲食は打撃を受けていて、全国から人が来ない。苦しい中でこれ(聖火リレー)をやるんですか?社会経済と感染対策の両立を図る、こういうところにもっと力を入れなきゃわれわれはやっていけない、ということでは」

地域によってバランスのとり方も異なるべき

地方が観光事業に立脚した経済基盤で成立している状況からも、地域経済の疲弊には手を打つ必要があるのは、その通りだろう。しかし、首都圏と地方とは、感染状況もその影響も同様に格差があるので、均一化する事は出来ないというより、するべきではないだろう。当然、地域によってバランスのとり方も異なるべきだが、そのことを『五輪反対』『聖火リレー反対』に繋げるのは、無理筋だろう。

これに対して、自民党竹下亘元総務会長の発言は、

「発言は不用意だ。注意しようと思っている」「・・・知事が決めるこっちゃねえだろう」

極めて乱暴に聞こえるし、国民向けの説明ではない為、国民目線では説明不足に感じるが、本質的に言わんとしていることは、地方と国の政治家同士の諫言としては理解できる。別に国から地方に対しての上から目線ではなく、無理筋を窘め、言っている事と求めている事が違うという事を言っているのだろう。

国が新型コロナウイルス対策の財源として自治体に交付する「地方創生臨時交付金」に地方と都市で格差があるのは事実だ。その部分の是正を求めるのであれば、その合理的な必要性を元に具体的な是正案を公に示し共感を得る必要があるだろう。

不当要求の誹りは免れない

休業要請せざるを得ない状況があれば、緊急事態宣言発出の要請をするのも一つ。独自の対策の必要性があるのなら、その科学的合理性の説明とそれによる支援要請の具体的な提案。どちらにしても、具体的な要求を示さなければ、単なる駄々っ子の愚痴でしかない。これはサラリーマンだったら新人レベルに教育する事項である。反対ではなく、前向きな提案をセットしなさいと教育される極基本的な心得すら出来ていない幼稚性がある。ましてや、聖火リレーに協力出来ないと持ち出すのは、国家事業を人質にした、不当要求の誹りを免れない。

青空の下で聖火リレーを実施する事で感染リスクが拡大するとは到底思えない。

県内の飲食業の苦しい状況を打開する為であれば、寧ろ、この聖火リレーを活用して、飲食業にお金が落ちる様なキャンペーン、工夫をするべきであり、この様なやり方は逆効果でしかない。

真っ当な事業ではなく補償で苦しい状況を凌ぐのは、他に方法が無く仕方がない状況に限られるべきで、出来うる限り事業が活性化する様にしなければ、本当の意味での復興はあり得ないし、復興なくしてコロナ禍からの脱却はない。

地方経済を立ち直らせるためには、寧ろ、Go To再開を要請するべきであり、感染リスクを云うのなら、緊急事態宣言下以外の地域の行き来を活性化するべきではないのか。

少し考えるだけでも、いくらでも打開策は出てくる、もっと考えれば、いくらでも出せるだろう。

この一連の動きをもってして、五輪反対運動に繋げる事だけは、絶対にやめて欲しい。その様な事態を招いた島根県知事の罪は重い。