PCR検査を「安全の証」とする広島県への違和感

こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。

広島県による「大規模PCR検査」は、2月24~26日に広島市中区の事業所を対象に試行されました。試行に応じた事業所の約3500人が受検したということです。

「営業なのでPCR検査をちゃんとして陰性だよというのが非常に安全の証になるかな」(事業所の担当者)

上記コメントは、試行に応じた事業所の担当者ものです。試行最終日となった2月26日の広島ローカルテレビニュースで流れていました。

itakayuki/iStock

改めて言うまでもなく、PCR検査を受けて「陰性」だったとしても、それが安全の証明にはなりません。PCR検査は検体採取時の状態を示すものであり、その後の状態を示すものではないからです。この事業所担当者の個人的なコメントについてどうこう論じるつもりはありません。

この度、筆を執ったのは、この日のテレビニュースは、ネット等で確認できなかった1社を除き、地元民放3社とNHKがそろいもそろって、この担当者だけが登場していたからです。そして、

お客さまに対する信頼や安心を与えるためにも、陰性であるという証明にもなると思うので(今後も)チャレンジしていきたい」「安心を与えるためにも、われわれが陰性であるという証明になると思う

と、上記と同様の趣旨のコメントだけが流されていました。

これには違和感を覚えずにはいられません。なぜ、このようなことになったのか、考えられるケースは少なくとも3つあります。

  1. 広島県側が、撮影OKの事業所を用意していた
  2. 各社の取材・撮影時間が偶然重なり、また、ほぼ同じタイミングで撤収した(=取材・撮影時間が限定され、この事業所担当者にしか接触できなかった)
  3. 最終日の26日は検体回収場に来た事業所が1社だけだった――。

どういう事情か、真相は定かではありません。大会の優勝者や受賞者、「来場1万人目」というように、その人物を取り上げることにニュースバリューがあるケースではないにも関わらず、被取材者が各社同じというのは、新聞記者時代の現場を振り返っても、とても不自然だということは断言できます。

ここからが核心ですが、先ほどから述べているように、PCR検査の結果が「陰性」だとしても、それは安全の証明にはなりません。それにも関わらず、「安全の証」をことさら強調するコメントを歩調を合わせて流すことは、PCR検査に対する認識を誤誘導することにつながりかねません。PCR検査が安全を保証するといった印象を与え、大規模PCR検査の試行に続く<本番>への布石を打とうとする意図が透けて見えます。

広島県が仕掛けたものなのか、メディアが足並みをそろえて仕掛けたのか、あるいは偶然の産物なのかは分かりません。どちらにしても、「情報操作」「印象操作」のようなことはすべきではないのです。