2019年参議院選挙で河井案里氏の公選法違反事件で有罪が確定し、当選無効になったことに伴い、4月25日に実施予定の参議院広島選挙区再選挙に、自民党公認候補として立候補を表明しているのが、元経産省課長補佐の西田英範氏だ。
【参院広島選挙区再選挙、自民党は、広島県民を舐めてはならない】でも述べたように、自民党は、2019年参議院選挙で公認候補による多額の現金買収という重大な選挙不祥事を起こし、その買収原資が、党本部からの巨額選挙資金である疑いがあるのに、何の検証も総括もしない。しかも、その背景となった「広島県の地元政治家の体質や構造」を改めることなく、単に、過去の広島選挙区での与野党の圧倒的な票差からして、今回の再選挙でも勝てると見越して、公認候補者を擁立して当選を目論んでいる。そのことに激しい憤りを覚えた私は、その自民党公認候補者の対立候補として私自身が立候補することも真剣に検討した。
しかし、昨日、立候補しないことを正式に表明した。
その理由は、昨日午後、ZOOM記者会見で述べたとおりであり、要するに、今回行われようとしている再選挙が、このままでは、公選法のルールに基づく「公正な選挙」となることが全く期待できないからだ(【〝ポスト河井案里〟巡る参院広島再選挙は大混迷 「公正期待できぬ」郷原信郎元検事が不出馬!】)。
【河井夫妻買収事件、「被買収者」告発受理!「処分未了」の再選挙には重大な問題。各政党の対応は?】でも述べたように、河井克行氏・案里氏の現金買収事件については、案里氏の有罪は確定し、克行氏の現金買収についても、40人もの首長・議員らの大半が、数十万円~200万円もの現金を受け取ったこと、それが買収の金であったことを認める証言をしている。
現金の受領者側、つまり被買収者側は、いまだに、公選法違反での処罰が行われておらず、被買収者は、本来であれば、当然に、公選法違反で起訴され、少なくとも罰金刑を受けて、公民権停止、つまり、一定期間選挙権もないし、選挙運動を行うこともできない立場であるのに、彼らの選挙運動は「野放し」の状況になっている。
マスコミが報じているところでは、西田氏の選対本部の立上げの会合には、河井克行・案里夫妻から多額の現金を受け取った地方政治家が多数参加し、再選挙に向けての活動を行っていこうとしているという(【自民党が恐れる河井元法相の暴露 保釈後も薬指に指輪 郷原弁護士は出馬断念】)。
当然に行われるべき被買収者側の刑事処分が行われていないため、本来、公民権停止になって選挙に関わる資格がないはずの者が、選挙に関わってしまいかねないという「異常な状況」になっている。
これでは、「公正な選挙」など行えるわけがない。
私は、3月4日に、広島弁護士会館で、《「河井夫妻公選法違反事件」と「公正な選挙」に関する緊急レク》を開催し、広島のマスコミに対して、現状のままでは、今回の再選挙について、「公正な選挙」の前提に重大な問題があることを指摘し、広島県民への問題提起を試みた。
そして、それに先立って、立候補予定者の西田氏と同氏を公認候補として擁立する自民党広島県連会長宛てに、今回の再選挙において、被買収の事実が明らかになっている者を西田氏の選挙運動に関わらせないために、具体的にどのような措置をとられるのかを明らかにするよう質問状を送付したが、3月8日の回答期限までに回答はなかった。(「西田氏宛て質問状」は、以下のとおり、間違いなく、西田氏本人に配達されている。)
前法務大臣とその妻の候補者自身による多額現金買収という前代未聞の公選法違反事件によって「選挙の公正」が著しく阻害されたことを受けて実施されることになった「やり直しの選挙」に、自民党の公認候補として出馬を表明している西田氏は、その再選挙での「選挙の公正」に対する重大な疑問に全く回答しなかった。
西田氏は、元経産官僚であり、法律に基づく行政に携わっていた人物だ。その西田氏にとって、立候補しようとしている選挙について、その公正さに重大な疑問が生じているとの指摘に全く向き合わず、自らの見解も述べないというのは、どういうことなのだろうか。
私としては、「公正な選挙」に関する公選法のルールが無視されている状況では、その選挙に自らプレーヤーとして参加することはできないと判断した。その最大の理由は、被買収者の刑事処分が全く行われず、選挙違反者の今回の選挙への関与を野放しにする自民党広島県連や西田氏の姿勢が変わらなければ、不正選挙による当選無効を受けて「公正な選挙」をやり直すための今回の再選挙を行う意味がないと考えたからだ。
立候補表明後に開設された西田氏のツイッターのアカウント @nishita83h には、西田氏の街頭での挨拶などの活動の動画や、自民党有力議員の応援メッセージの動画がアップされている。
ちょうど2年前の今頃、河井案里氏は、自民党公認候補として立候補を表明し、「選挙に向けての街頭活動」を開始した。そして、それと時を同じくして、自民党からの多額の選挙資金の提供があり、克行氏と案里氏は、広島県内の首長・議員らに対して多額の現金配布を始めていた。
今回の再選挙に向けて、西田氏がまず行わなければならないのは、従来から自民党候補が繰り返してきた「街頭活動」ではない。広島県民の重大な政治不信の原因となった前回の不正選挙の問題にしっかり正面から向き合い、それがなぜ起きたのか、自らしっかり考え、自民党陣営において二度と不正選挙が行われなることがないとの確信をもって選挙に臨むことだ。それを行わずして、公約として掲げる「政治改革」など行えるわけもない。
西田氏には、本当に広島の不正選挙を正す意思があるのだろうか。