コロナ経済支援に関しては各国、巨額の政府や地方財政を投入し、あらゆる対策を施しています。特に民主党など中道左派政権が牛耳る国家や地方ではそのばらまき具合が尋常ではないレベルとなっています。アメリカでは今週、話題の200兆円経済支援パッケージが議会で一部修正後、可決されたため、バイデン大統領が署名するまでとなっています。果たして、巨額の経済支援は良薬となるのでしょうか?
私が議長を務める当地の経済関係の協議会が数週間前にホストしたカナダのBC州政府による事業再生プログラムには、非常に多くの事業者さんが参加されました。州の担当者はそのプログラムは「前年比70%以上の売り上げ下落」があった事業者を対象にするという条件を付しました。ご存じの通り、コロナでは極端に売り上げが落ちた旅行、ホテル、飲食といった業種は売り上げ9割減がざらにあったのですが、それ以外にも4割、5割落ちて苦しんだ一般小売業や卸を含めた様々な事業者は多かったのです。
実は私はこれをホストする前に幾人かの専門家への聞き取り調査をしてプログラムの評価調査をひそかに行っていました。正直、評判は悪かったのです。その一つが70%のハードル。これでは対象業種は限られるというわけです。その声が天に届いたのか、先週になり、唐突に「70%のハードルを30%に下げます」とアナウンスされました。これならかなり多くの事業者が対象になるでしょう。
このプログラムは数ある支援プログラムのごくひとつで支援金をうまくもらい続けていればウハウハ状態になっているところもあると思われ、かつて言われた「焼け太り」(=火事で保険金や見舞金で金持ちになること)状態が懸念されます。もちろん、個々の業種、企業を見ればまだら色ですが、一部の事業者は何らかの焼け太りになっているとみています。
トロントの証券会社の部長から1週間ほど前「お前は株価は下がると思うか」と聞かれたので「全体としては目先は下がらない」と申し上げました。コロナからの回復を前提とすれば経済はなお更よくなるわけで企業の投資増→雇用回復→消費回復→物価上昇のサイクルは確実だとみています。ただ問題は物価上昇であります。
自動車業界で半導体が足りず、クルマが納車できないという問題が生じています。このような需給バランスの問題はあらゆる業種で起きると断言します。これは大変な問題を引き起こす可能性を秘めています。
例えばバンクーバー地区の住宅市場や建築市場ですが、この1年強、コロナで役所の機能が止まっており、許認可のペースが異様にスローダウンしているのです。店舗の改装許可ですら半年かかるという状態です。デベロッパーが開発を見合わせていることもあります。一方、カナダは本年以降毎年40万人の移民を受け入れるため、どういう形にしろ新規住宅は年間6-8万戸が新規に必要になります。バンクーバー分だけで年1-2万戸です。とすれば需要を満たすには40階建て300世帯のマンションが年間50本ずつ必要になります。(かなりおおっぱな机上の計算です)ところがそんな数の許可が出ていないということは2-3年後の供給が急激に絞り込まれ、住宅価格は急上昇、住むところがないという問題が生じるのは目に見えているのです。
似たような問題はどこにでもあります。私は正直、政府は支援金のばらまき方を間違えているとみています。中道左派である民主党系が市民の平等性を考え、政党支持を維持するために過分な目に見える支出をしているのです。しかもコロナで財政悪化懸念は二の次で支出に対する歯止めはなく、市民や国民は「喜んで」それを受け入れます。日本でも岸田さんが菅さんに「もっと支援を」と要請しました。
ですが近いうちにそのしわ寄せは必ずやってきます。経済の仕組みとはそういうもので「タイムラグ」があること、今回のように我慢していたことが一気に解放されたときの反動需要を考えると恐ろしいことになるはずです。例えば海外旅行でハワイ100万円なんて当たり前になるでしょう。
更に問題はそれを鎮静化させるため、中央銀行が金融の引き締めに動いたとき、厳しい衝撃が起きることになり、コロナ後の一番怖いシナリオがそこに見え隠れしていることは十分に理解しておいた方がよいかと思います。中央銀行の引き締めの準備は以前から申し上げているように今年後半にはスタートすると予想しています。コロナが去ってまた一難となるのでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年3月12日の記事より転載させていただきました。