EVの普及は周辺事業がかなめ

この1-2年、クルマを買い替えるか悩んでいます。コロナで出かけようがないので今すぐ必要はなく、今の車の性能も走りも全く問題はありません。ただ、クルマも本来であれば3-4年ごとに乗り換えていく方が気分もリフレッシュできるので強制終了できるリースも一案かな、と思っています。

Jae Young Ju/iStock

電気自動車(EV)が普及しそうなことで今さら内燃機関の自動車を買うのが得策ではないという気もしています。街中では最近、ポルシェのEV実力作、タイカンが結構走っていてテスラ一辺倒だった電気自動車市場は今、まさに夜明け前という感じがいたします。各社EVを売り出していることから3年ぐらい繋ぎで何かゲットするのもアリなのかな、と思ったりしています。

報道から読み取れるのは欧州勢の鼻息の荒さでしょうか?日経ビジネスには「30年までに新車全てをEVに ボルボが起こす地殻変動」とあります。ボルボの場合、単にEVに切り替えるだけではなく、販売店方式を止める、つまり、オンラインでクルマを直販する方式をとるというのです。テスラも同様の手法を取っていますが、老舗企業がそれを打ち出したことは既存の自動車業界の常識は完全にひっくり返るとみてよいのでしょう。

フォードの打ち出した欧州向け販売は全EV化(EVないしPHV)が2026年、全世界ベースでは2030年であることから欧州市場がEVの激戦の先陣を切ることは目に見えています。欧州が昔から環境にセンシティブであることは有名ですが、その盛り上がりの尺度となるのがドイツの秋の総選挙であります。メルケル首相が退任することを受け、政局が変わるのではないか、とされていますが、そのキーが「緑の党」であり、環境重視派である同党の着実な議席数の増加は自動車大国ドイツそのものが根本的に変わる可能性を後押しします。先週の週末にはドイツのバーデン ビュルテンベルク州議会選で緑の党が第一党となりました。

先日、バンクーバー近郊である集合住宅の販売説明会がありました。時たま、流行をチェックするために販売センターに行くのですが、「うーん」とうなったのが地下駐車場の電気自動車への100%対応でした。実は私の住むコンドでは管理組合が数年間電気自動車のチャージャーを導入することをためらったため、テスラ所有者が次々と退去していくという事態を招いていました。ようやく2台分のチャージャーを導入したのですが、新築コンドが100%対応と比べ見劣り感というよりコンドとしての価値を維持できないのではないかという危惧すら感じるのです。

なぜか、と言えば限定数量のチャージャーしかなく、一人がそこでチャージャーを使い夜から朝まで放置すると他の誰も使えないという問題があるのです。日本ではあるのかどうか知りませんが、こちらではコインランドリーの乾燥機が終わっているのにいつまでも放置していると中身を乾燥機の上に全部放り出されてしまうのですが、洗濯ものなら動かせるけれど自動車は移動できないのです。これは困るのです。

住宅開発屋としては私も駐車場全部がEV対応になることがキーだと思っています。設備の導入そのものはさほど難しいわけではなく、壁にチャージャーをつけていくだけなのですが、問題は建物全体の電気のキャパシティがそれほどないはずなのでそこに大型投資が必要になりそうです。変な話ですが、不動産マーケットの価値が維持できるかは電気自動車対応が勝負、ということにもなるかもしれません。その手のビジネスを立ち上げたら極めて大きな果実があるはずです。

最後に日本ですが、やっぱり、盛り上がってきてない気がします。しかし、このままですと完全に立ち遅れてしまう気がします。内燃機関の車は30年から35年以降は新興国でしか発売できなくなるし、ある日突然需要が無くなるわけではないものの世の中の趨勢に逆らっても勝てないこともあります。ここは考え方をより柔軟にするしかないと思います。

多分、EVそのものよりも今は電池の開発競争が進みますが、本質的には充電施設と電池の交換市場ではないかと思っています。考えすぎかもしれませんが、そのうち、ニュースで「電気自動車のバッテリーが盗まれる」という事件が報じられることもありうるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年3月17日の記事より転載させていただきました。