春の空気はなぜ霞むのか

暖かい日も増えてきて、散歩が楽しい季節になりました。

IP Galanternik D.U./iStock

遠くの景色を見てみると、今まで見えていた山が霞んだり、見えなくなったりします。

特に首都圏では、春になると今までくっきりと見えていた富士山が見えにくくなりますよね。

「冬は空気が澄んでいて、春は霞んでいる」とよくいわれるものですが、なぜ春の空気が霞むのでしょうか。今回はこのテーマについて説明していきたいと思います。

春に空気が霞む原因のひとつとして、上昇気流が増えることが挙げられます。なぜ、上昇気流が増えるのかというと、春は日差しが増えて地面が冬よりも照らされるようになるからです。すると、地表付近の空気が太陽によって暖められて、上昇するのです。この上昇気流で、地面付近の砂やほこりなどが巻き上げられます。

さらに、春は花の咲く季節。春先は花粉症に悩まされる人が多いものですが、空気中にはスギやヒノキなどの花粉が漂っています。そのうえ、春には日本に黄砂も運ばれてきます。黄砂とは、中国内陸の砂漠の砂が、偏西風に乗って日本に到達する現象です。つい先日も、中国で「ここ10年で最も強烈」といわれた黄砂が飛び、視界が真っ黄色になる衝撃的な写真が報道されましたよね。

とにかく、このような複合的な要因が重なって、どうしても冬に比べて空気中に不純物が増えるのです。

また、空を見上げると春は秋と比べてなんとなく白っぽく見えます。これは春になって気温が上がると、空気中に含むことのできる水蒸気の量が増えるからです。水蒸気自体は透明な気体ですが、水蒸気を含む気体が上昇すると冷えて水蒸気が水の粒になります。これが白っぽく見えるのです。

同じ季節の変わり目でも、秋は空気が澄んでおり、青空もくっきりしています。なぜ春の空気は霞み、秋は澄みわたるのでしょうか。それは、路面の状態が大きいと考えられます。冬の間の地面は土がむきだしであることが多いので、春に上昇気流が発生すれば地面の砂ぼこりが舞い上がりやすくなります。しかし、夏は植物が茂っているので、秋に上昇気流が発生しても砂ぼこりが舞い上がりにくいのです。黄砂が春の風物詩なのも、同様の理由です。

気温が暖かく、空気が霞むとなんとなく頭がぼんやりとしてきますよね。春の気温上昇をもたらす強い南風が吹くと、砂ぼこりが目に入って痛いです。不純物の多い混沌とした空気が、ぼんやりとした春の正体なのです。