米中関係の帰着点はあるのか?

米中外交トップ会談が行われました。この会談に先立ち、3月18日付の当ブログで同会談についての個人的予見を提示させて頂きました。「どのようなタッグマッチが行われるのか、場外戦が起こりうるのか」という点については会談初日の冒頭からパフォーマンス含みの大荒れでありました。また、「私は明日明後日のアラスカ会議では目新しいことは何も出てこないし、声明につながるものもないと考えています」と書かせて頂きましたがこれもその通りで共同声明もありませんでした。

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この会談を受けて双方、対策を考えるのだと思いますが、個人的に「米中関係の帰着点はあるのか」という質問に対して単刀直入に「ない」と申し上げます。

私もカナダダという様々な人種がいる国で30年もほぼローカル向けのビジネスをする中で白人の立ち位置、中国人を含むアジア人の価値観などを体得してきました。それを踏まえてみる限り、今の双方の国には妥協点すら見いだせない最悪な状態だと言い切ってよいと思います。

トランプ氏とバイデン氏、中国にとってどちらがやりやすかったのか、といえば何の躊躇もなくトランプ氏と申し上げます。理由は2つ。1つ目はトランプ氏は周りがなんて言おうが自分で決めるのです。2つ目はトランプ氏はそもそもビジネスマンですので落としどころを知っています。ハードネゴをするけれど双方がどこかで握手をしないとビジネスは一つも成功しないのです。だから、トランプ氏がやってきた数々の外交ディールは経営者ならではのわかりやすい仕組みだったのです。

ところがバイデン氏の場合、主導はするけれど調整型であること、彼が「政治家」であり、主義主張がより根本思想に根差したものであり、簡単な妥協を許しません。私が両国は「水と油」と申し上げたのは今や、混じる部分がないのであります。

ではこの先、どうなるのか、ですが、私が思いつく「手打ち」は一つしかありません。しかも最悪です。中国の膨張主義を止めさせる代わりに国内問題については口を出さない、であります。ただ、こんな妥協をするならそもそもディールなんてしない方がいいに決まっています。それぐらい困難なところにあるということです。

経済関係はどうなるでしょうか?中期的に「米中デカップリング」があり得ると思います。それもシリアスな遮断であります。双方、そのダメージは果てしなく大きいし、それぞれの同盟国にとってもあまりにも厳しい試練となるでしょう。しかし、経済規制は政治的に唐突に打ち出されます。経済戦争という言葉がありますが、通常の軍事戦争はそれなりの予兆やプロセスがあるものですが、トランプ政権の時を思い出してもわかるとおり、経済戦争は突如やってくるのです。なぜなら、簡単に実行できるからであり、人命がかかわらないからです。

今までの国際ビジネスは政治の部分と企業間取引が絶妙なバランスの上に成り立っていました。つまり、企業側にとって二国間外交問題によって生じる機会ロスを自国の政治家が聞き入れてくれたのです。ところが今起きつつあるのは進出先の国が企業や製品を排除するわけで進出先から「売るな」「出ていけ」と言われるわけです。

残念ながら中国は十分にモノを作る能力も先進技術も持ち始めているし、分野によっては中国が一番進んでいたりするのです。日を改めて書きますが、原発なんてあと10年もすれば世界で作れるのは中国だけになるかもしれません。

今、何が起きているのか、概括すればイデオロギー対立であり、双方が一歩も譲れないことであります。以前、経済のブロック化ということを何度か書いたと思いますが、それが現実問題となりつつある気がします。また外交上の駆け引きも鮮烈化するでしょう。舞台は朝鮮半島と台湾であることもほぼ確実。となればいま日本が考えるべきことはシナリオをいくつか描き、ボトムライン、つまり落としどころがぶれない様にして国家としての自立をしっかりするということかと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年3月22日の記事より転載させていただきました。