日露戦争を描いた「ポーツマスの旗」を読んだらコロナ禍と被りすぎて泣けた。

先週にこのエントリーを書きまして・・・・

コロナ禍には大戦前の日本にあまりに共通点が多すぎて驚く

そのときに参考書としてこの本を買いました。

この本がめちゃくちゃ面白くて面白くて、そして100年前の日本がコロナ禍と同じ事になっていることに驚愕しました。もちろんいまと当時で違うことも多くありまして、かなり面白く読めます。本日はあまりに面白かったのでこの本の紹介です。

1970s/iStock

日露戦争の基礎知識をまずは簡単に

近代日本が諸外国と戦争をしたのは「日清戦争」「日露戦争」と「太平洋戦争」なわけですが、太平洋戦争については終戦記念日もありますし、知らないと言う人はいないと思いますが、日清、日露戦争についてはよく知らないと言う人も多いでしょう。

日清戦争ははっきりいって清が相手だったのでわりとチョロかったのですが、日露戦争は帝政ロシアが相手で、国力も軍備も比較にならない程度で、日本は明治維新からたったの40年しか経っておらず、当時の列強だったロシアと未開人の国と思われていた日本。いまならロシア(帝政みたいなもんだし w)とインドネシアが戦争するくらいのものです。

戦争の発端となったのは、ロシアが満州と朝鮮に進出してきており、朝鮮を生命線と考えていた日本とぶつかったためです。当時は先進国みんなが植民地を求めてアジアを侵略しており、日本は侵略に対抗するために朝鮮を併合して基盤を創ろうとするわけですが、ロシアは清で発生した義和団の乱(義和団事変、義和団事件)の混乱収拾のため満洲へ侵攻し、全土を占領下に置き、これに不安をいだいたイギリスなどが反発していたわけです。

ロシアの仲間は同じ帝政のドイツとお金を貸していたフランス。
日本の仲間はイギリスと、個人的に日本を贔屓にしてくれていたルーズベルトのアメリカ

という感じでした。もちろん日本は戦ったら不利なので粘り強く交渉するわけですが、ロシアにとったら「うぜーよ、未開人めが」みたいな感じなので、なめまくってます。ここで日露戦争となったのですが、圧倒的に武力がない日本は最初に打撃を与えて講和に持ち込むしかないと考えていました。太平洋戦争の山本五十六と同じ。政府要人は明治維新の薩摩の元軍人なので戦況はわかるし日本の国力も熟知している。いまの政治家とは全く違う。

戦況についてははしょりますが、この本が面白いです。

5回くらい読みました。w

陸では非常に大きな被害を出しつつなんとか満州ではロシア軍に勝利したが、そのあとの日本海海戦で世界最強といわれたバルチック艦隊を戦力が圧倒的に劣る日本の艦隊が徹底的に打ち破る。勝因は「練度」という武器だけです。

しかしロシアの領土には一歩も踏み込んでいないし、日本は弾薬も尽き、将兵もたくさん死んで予備兵は身長150㎝まで基準を緩めた。戦費には年間の国費の5倍もかかり、これ以上の戦争継続は無理。ロシアはまだまだ余力があったがちょうどロシア革命が起きて(日本も裏で援助した)戦争継続どころではなくなってきた。そこでしぶしぶ講和の席に着いたのです。ここで革命が起きなかったら日本は逆にめちゃくちゃ反撃されて今頃はロシアの領土になっていたわけですよ。

現状を全く理解しないで戦い続けたがる国民と新聞

講和を締結するにあたり、双方とも相手に弱みは見せられない。だから「まだまだ余力があります」と対外的にはいうわけだが、実際には日本が破綻するかどうかの瀬戸際で、弾薬さえも尽きている。しかし国民はそれを知らない。だから

徹底的にロシア討つべし

みたいに煽り立てるわけ。現場の高級将校までが「追撃すべし」とかみんなでいう。救いがあったのは政府首脳や軍の上層部に戦争に対する知見があり、戦争が続けば日本は負けて滅びるということがわかっていたこと。いまの日本の政治家にはそれが全くわかっていない。レベルが違います。

新聞は多くの犠牲があったのだからロシアが絶対に飲まない非現実的な条件での講和を主張し、各団体は政府にそれを要求する。まるで永遠に緊急事態宣言を続けるべきと言うテレビと、医療のために国民に犠牲を強制する医師会のようです。w

極めつけが七博士会という有識者の集団で、東大の戸水教授をはじめ、7人の博士で結成され、「ありえないほどの条件でなくては講和してはならん。ロシアが飲まなければ戦争を継続すべき」という決議書を政府に提出。新聞はそれが国民の総意であるとして報道した。ゼロコロナか!!

いつの時代も学者は現実を理解できない。そして東大の先生だから食うには困らない。馬鹿な国民は「東大の先生が言うことだから間違いない」と信じる。いまはこんなかな?

エピセンターどころか収束しちゃいましたがな・・・

この苦境でロシアとの講和に向かう、小村外務大臣

彼はハーバードに留学経験がある身長140センチ台の男。この体で講話の会場であるアメリカのポーツマスに乗り込むのだ。

物凄い事前の情報収集合戦と裏工作。暗号も解読されている。幸いにもアメリカのルーズベルトは日本びいきで、日本にはルーズベルトと同級生だった金子堅太郎が綿密に相談をしてロシア対策を練り、フランスやドイツへの根回しはルーズベルトがしてくれた。ここの駆け引きはいまのちょこっと外遊にいって話す程度のレヘレルではない。まるで戦争です。

幸い、自由の国アメリカでは、上流階級ではロシアの血縁が多かったにもかかわらず、日本という小国が帝政のロシアを打ち破ったことで親日感情が盛り上がり、この講和が大きなニュースになって報じられる。ロシア側も負けまいと裏工作で世論を盛り上げようとする。

いまの日本の政治家には絶対こんなことはできないな。この後は非常に面白いのでみなさんがご自分で読んでください。政治家が優秀で勤勉だったので日本は滅びずに済んだ。アホな国民や学者が破滅する方向に持っていこうとしても政治家か食い止めた。今の日本にこんな政治家はあるのか。マジで心配です。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2021年3月22日の記事より転載させていただきました。