昨日、本日と連続で読売新聞において、養子縁組団体ベビーライフの突然の廃業について取り上げられているので、同じ養子縁組団体として簡単に解説します。
ベビーライフ事件とは
この事件は、2009年に開業した一般社団法人ベビーライフという養子縁組団体が、いきなり廃業した上、養子の実親の情報等、とても重要な個人情報を東京都に引き継ぎもせず、行方をくらませている、というものです。
まず代表が突然音信不通になる等言語道断で、社会的責任を果たしていません。
真面目に運営する団体がほとんどの中、民間養子縁組団体全体の信頼を大きく揺るがした責任は重いです。
ずれたメディア報道
一方で、読売新聞は小見出しで現金270万を手数料として受け取ったことを問題視していますが、これは本質からずれた批判です。
養子縁組自体はボランティアではできないので、手数料は一定の規制のもと、受け取るのは法的に認められているためです。
また、「養子あっせん300人の半数超、養親が外国籍…「原則国内」反故で多数の子供が海外へ」と、養親が外国籍なことも批判の対象としています。
確かに養子縁組は「原則」日本国籍の養親に対して行うよう、法的には定められています。マッチング後の養育の状況確認しづらいこと等が背景になっています。
ただ、外国人=日本人よりも劣った養親である、ということは無く、むしろ障害児や肌の色の違うバイレイシャルな子ども達の受け入れに積極的、ということもあり、一概に外国に養子に行くことが悪いとも言い切れません。
問題の本質はそこではないのです。
問題の本質
ベビーライフ問題の本質は、民間の養子縁組情報を一元化する情報バンク機関が行政内に無いことです。
民間団体は当然、一般的な企業等と同じく廃業のリスクは常にあります。そうした際に、養子縁組の情報が保存・継承されなければ、子どもが大きくなった後の出自を知る権利は制限されてしまいます。
また、民間団体が廃業した際に、養親家庭のケアを他団体に引き継ぐスキームも未整備です。
こうした基本的な法的スキームの欠如が、今回の事件で露わになりました。
国と政治がすべきこと
よって、国は本件を教訓に、縁組情報一元化と団体廃業時の引き継ぎスキームの整備を今後行っていく必要があるでしょう。
長年、特別養子縁組の支援に関して、国は十分な予算と労力をかけてきませんでした。そうした歴史が、今回のような事件が起きた時に、十分な対応ができない要因ともなっています。
予期せぬ妊娠による虐待死を防ぐためにも、政治はもっとこの領域に関心を持って頂きたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2021年3月23日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。