遠くに聞こえる選挙の足音

自民党の総裁任期は9月末、遅くとも10月には衆議院選があります。一方、7月には都議選があります。東京都議会は「小池百合子帝国」を擁護する体制を続けられるのか、それとも自民が意地を見せるのか、秋の国政選挙を占う意味でも注目が集まります。今日はそのあたりを少し覗いてみましょう。

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都議選に関しては二階幹事長の動きが引き続きキーであるとみています。二階氏が小池氏を支持している以上、自民党都議連の自由度はかなり狭まっていると考えざるを得ません。その自民都議連で絶対的権力者であり都議連最高顧問であった内田茂氏は小池氏に寝返りを打ったことで都議連が「処分」を検討するそうで、都連内部での不安定感が引き続き残ります。

小池氏がグローバルダイニング社からの訴訟を受けて立っているのも小池劇場的には有利に展開しそうです。日本医師会も小池氏のバックについていますし、安心安全をモットーにされると飲食店の不満は多勢に無勢になる可能性があります。

もう一つの切り口は先日行われた千葉県知事選の結果だったと思います。森田健作氏が退任するにあたり、行われた選挙で熊谷俊人氏が過去最多の得票で当選しました。弱冠43歳。20代で市議選トップ当選、その後千葉市長選には31歳で当選、3期務め、今回、順調に「昇格」して知事となりました。

熊谷氏は無所属でありますが、自民色ではないので小池氏と連携を進める可能性があります。森田氏が首相とのラインがあったことを考えると一都三県という括りで政治を考えたとき、オセロが微妙な感じになってきています。埼玉の大野知事が野党推薦候補だったことを考えると多分、神奈川の黒岩知事ぐらいしか政権とのグリップがない状況になります。こう見るとどうも自民党の形成は悪いと言わざるを得ません。

では総裁選と衆議院選はどうなのか、であります。菅総理の支持率はここにきてようやく安定してきましたが、「可もなく不可もなく」というのが正直な評価ではないでしょうか?目の前にはコロナ対策があり、オリンピックが控える中でその2つをいかにうまくこなすかが政権評価の7-8割になることを考えれば現時点で「うまくやって当たり前、失敗したら大バッシング」ですから大ヒットも飛ばさない代わり、大チョンボもしない戦略かと思います。ミドルホールを5番アイアンで攻める感じでしょうか?

では総裁選について対抗馬は出るのか、であります。日経には「二階俊博幹事長もかねて『衆院選に勝てば無投票再選という落ち着き方になる可能性は高い』と指摘する。再選すれば3年の任期が加わり、在任期間は計4年となる」とあります。これは総裁選後に衆議院の任期が切れる現在のスケジュールの順番を逆にしようという下地作りと「二階-菅ライン」生き残り作戦を考えているようにも聞こえます。

しかし、オリンピック後の日本は心機一転、新たに仕切り直して進まなくてはいけない中、大衆受けと活舌が今一つの菅総理を無投票再選で済ませるのが良いのか、私には疑問符だらけなのです。二階氏は党利党略の目線ですが、今は自民党が真の与党となる試金石だと思っています。

総裁選は岸田氏が再挑戦したいと発言しています。次いで女性活躍社会を考えると女性が誰か立候補すべきと思います。野心のある野田聖子氏よりもオリンピックを無事終了した時点で実績感のある橋本聖子氏の方が20票の国会議員推薦人が集まりやすいかもしれません。そして最後に国民目線から人気のある河野氏がいます。石破氏は出馬しないのではないでしょうか?

とすれば二階氏が画策をして無投票にすれば別ですが、国民としては総裁選で多様な顔同士がぶつかり合い、自民党をリフレッシュさせることを望むと思います。

菅政権は安倍政権を引き継いだものです。ただ、2012年末からスタートした安倍体制から9年経ち、世界の勢力地図も日本の経済社会の立ち位置もずっかり変わったことを考えるとまずは政治家の若返りが必要だと思っています。例えば幹事長にいつまでも二階氏が居座っていることが自民党にとって良いことでしょうか?党内のコントロールには都合がよいでしょうけれど国民はそう取っていないし、若い人、特に女性目線ではとても体質が古いとしか見えないと思うのです。

個人的希望としては何年も前から言い続けていますが、岸田さんが幹事長に適任だと思っています。政治家の人事は時として「政治的」でありますが、人事としての向き不向きは当然あるわけで岸田さんは党内調整向きであります。そしてもう少し個人的希望を言わせて頂けるなら首相には河野さんのような対話ができ、国際感覚にも明るい人を、そして副首相に女性を持ってきたらどうかと思います。

最後に衆議院選挙ですが、野党の中身は別にして、反自民党、あるいは「自民党ではない党」に投票する人は増えるとみています。マスコミの偏向報道も含め、リベラル化している社会を反映しているのですが、自民党も中道右派からより中道寄りにシフトした感はあります。一方で国際社会の動静を考えると今後、日本を取り巻く環境は非常に厳しくなってくるわけで力強いリーダーシップが最も重要になるでしょう。

その意味では私は自民党が引き続き政権を担うのがベストだと考えますが、自民党自体が大きく世代替わりすべきだと思っています。その中で現代社会にマッチしなくなった憲法の改正はぜひとも必要です。(例えば先日の判決にあった同性の婚姻についてはどうとらえるべきでしょうか?)憲法改正は9条というイメージを作ったのはマスコミ、だけど婚姻についてはリベラルにとって必要な改正のはずです。その点、「反対、反対、なんでも反対」という野党が本当の論戦ができるほどに頑張らないと自民党も成長しないのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年3月25日の記事より転載させていただきました。