コロナが「シルバー民主主義」を変えるきっかけにならないか?

政府や東京都のコロナウィルス対策への批判が高まっています。コロナウイルスに対応した医療体制の整備が1年経ってもほとんど進まず、コロナワクチンの接種スピードも他国に比べ大幅に遅れています。

Kayoko Hayashi/iStock

一方で、コロナ感染対策として、飲食店の営業時間制限や、外出の自粛要請といった対策が繰り返されています。果たして、効果がどの程度あるのでしょうか。

本日の日本経済新聞電子版に掲載されていたデータによれば、コロナウィルス感染者の死亡率は50代以下は1%未満で、60代も1.6%。ところが、70代は5.4%、80代は12.5%、90代以上が18.3%と、高齢者では急激に高まることがわかります。

つまり、高齢者の感染さえ防げれば、コロナ対策に十分な効果が期待されると言うことです。

例えば、クラスターが発生しやすい高齢者の多い施設の隔離と検査の徹底、高齢者の飲食店やカラオケ店などへの入店禁止など、コロナリスクの高い高齢者の行動制限を行うべきなのです。

菅首相や小池東京都知事は、馬鹿ではなく、優れた政治家です。国内における感染状況のデータを逐次把握し、対策に関しても最高レベルの専門家の意見を聞いているはずです。

にも関わらず、敢えて高い効果が期待できる対策を取らない。その理由は、高齢者の反発を招き、選挙に勝てなくなることを恐れる政治家としての判断からではないでしょうか。政治家は選挙で当選しなければ、ただの人になってしまうからです。

政治家としての能力が高ければ高いほど、投票してるくれる人たちに配慮した政策を実行するのは当たり前です。

高齢者に配慮したコロナ感染症対策が続く理由は、高齢者は選挙に熱心に行き、若年層が投票しない傾向があるからです。

少子高齢化により高齢者の比率が高まれば、さらにシニア層におもねる政策が取られるようになっていきます。シルバー民主主義と呼ばれる状態です。

もし、若年層の投票率が高まり、選挙に影響するようになれば、コロナ感染症対策も変わるはずです。

そう考えると、日本のコロナ対策をあれこれ批判する前に、若年層がもっと選挙に行くことが根本的な解決策になることがわかります。

即効性は無いかもしれませんが、コロナウィルスが日本のシルバー民主主義を変えるきっかけになれば、と期待するのはあまりにナイーブな「お花畑の人」の発想でしょうか?


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2021年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。