心ときめくJazzの名演名盤:ホレス・シルヴァー on ブルーノート1500番台

ブルーノートのレコード番号1500番台のアルバムは、ハードバップ全盛時代の作品です。ハードバップを完成させたジャズ・メッセンジャースをドラマーのアート・ブレイキーと共に牽引したピアニストのホレス・シルヴァーは、この時代のブルーノートを代表するスターでした。

ホレス・シルヴァーのハードバップはファンキー funkyであるのが最大の特徴です。ファンキーとは、フレーズの繰り返し reputationをこよなく愛する黒人独特の音楽性を表現する形容詞です。フレーズの繰り返しが一つの様式美となってリスナーに心地よさを与えるのです。

例えば、「かゆいの~」とか「カラスの勝手でしょ」とかいう吉本新喜劇やドリフのギャグのネタを観客は最初から知っています。それでも笑ってしまうのは、彼らが絶妙のタイミングで期待通りにボケるからです。ホレス・シルヴァーのファンキー・ジャズもこれと同じで、期待通りにフレーズが繰り返され、「やっぱりそう来るのね」という安堵感が私たちを幸せな気分にさせてくれるのです(笑)

ホレス・シルヴァーの1500番台のリーダー・アルバムは全部で5枚ですが、どれもファンキー・ジャズの名演を含みます。以下、順に紹介したいと思います。

[Horace Silver and the Jazz Messengers]

1.Room 608
2.Creepin’ In
3.Stop Time
4.To Whom It May Concern
5.Hippy
6.The Preacher
7.Hankerin’
8.Doodlin’

Horace Silver – piano
Kenny Dorham – trumpet
Hank Mobley – tenor saxophone
Doug Watkins – bass
Art Blakey – drums

ホレス・シルヴァーはピアノ・ベース・ドラムスのピアノ・トリオにトランペットとサックスを加えたクインテットを基本とします。このアルバムではケニー・ドーハムとハンク・モブレーが光っています。彼らもファンキーへの道を歩みます。このアルバムにおけるファンキーの名作は6.The Preacherと8.Doodlin’です。特に6は、あまりにもコテコテなので、ブルーノートのプロデューサーのアルフレッド・ライオンはこの曲を「古い」として廃棄しようとしました。ところがシルヴァーの要請で何とか残したところ大ヒットし、ブルーノートの経営が救われたのです。この曲は、その後に多くのミュージシャンがカヴァーするジャズのスタンダードとなりました。ただ、ライオンは死ぬまで「あの曲は駄作だ」と言い続けました(笑)

[Horace Silver Trio and Art Blakey-Sabu]

1.Safari
2.Ecaroh
3.Prelude to a Kiss
4.Message from Kenya
5.Horoscope
6.Yeah
7.How About You?
8.I Remember You
9.Opus de Funk
10.Nothing But the Soul
11.Silverware
12.Day In, Day Out

Horace Silver – piano (except 4, 10)
Art Blakey – drums
Gene Ramey – double bass (1, 5)
Curley Russell – double bass (2, 3, 6)
Percy Heath – double bass (7-9, 11, 12)
Sabu – conga (4)

このアルバムはリズムセクションのみによるアルバムです。なんといっても、9.Opus de Funkが最高にファンキーです。私はシルヴァーの作品の中で最も大好きです。猫がじゃれ合うような素晴らしいプレイです!

[Six Pieces of Silver]

1.Cool Eyes
2.Shirl
3.Camouflage
4.Enchantment
5.Señor Blues
6.Virgo
7.For Heaven’s Sake

Personnel
Horace Silver – piano
Donald Byrd – trumpet (1, 3-6)
Hank Mobley – tenor saxophone (1, 3-6)
Doug Watkins – bass (1-7)
Louis Hayes – drums

私は1.Cool Eyesが好きです。ドナルド・バードとモブレーのユニゾンがいい味出しています。5.Señor Bluesは一般的な評価が高いヒット作品です。ホレス・シルヴァーは父はカーボベルデ出身のアフリカ系ポルトガル人であり、5のようなコンチネンタルな哀愁が漂う曲調も得意としています。

[The Stylings of Silver]

1.No Smokin’
2.The Back Beat
3.Soulville
4.Home Cookin’
5.Metamorphosis
6.My One and Only Love

Horace Silver – piano
Art Farmer – trumpet
Hank Mobley – tenor saxophone
Teddy Kotick – bass
Louis Hayes – drums

トランペットがドナルド・バードからアート・ファーマーにチェンジしています。1.No Smokin’はSeñor Bluesの雰囲気を継承しています。グルーヴ感満点の4.Home Cookin’は気分が明るくなるファンキーの名作です。

[Further Explorations]

1.The Outlaw
2.Melancholy Mood
3.Pyramid
4.Moon Rays
5.Safari
6.Ill Wind

Horace Silver – piano
Art Farmer – trumpet (1 & 3-6)
Clifford Jordan – tenor saxophone (1 & 3-6)
Teddy Kotick – bass
Louis Hayes – drums

サックスがクリフ・ジョーダンに代わっています。1.The Outlawは仕掛け満点の変化に富んだ素晴らしい編曲です。ホレス・シルヴァーはこのアルバムで明らかに更なる探求をしています。ハードバップに代わる新しい時代はもうそこまで来ていました。


編集部より:この記事は「マスメディア報道のメソドロジー」2021年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はマスメディア報道のメソドロジーをご覧ください。