4月2日より児童手当削減に関する改正案が審議入りになりました。これによって子育て世帯がつかうことのできるお金が370億円減ることになります。
手当てによる再配分は、いつ打ち切られるか分からないという脆弱性が明らかになりました。その財源として10年前に年少扶養控除の廃止という増税があったという事実からも、子育てに関する支援は以前と比べて後退している部分も多いと評さなければなりません。
年収1200万円以上の児童手当廃止 改正案が審議入り:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ブログ更新:行政改革でも国債発行でもなく、「児童手当削減」により370億円の財源を生み出すことは適切か https://t.co/7TBzFJC6ms
コロナ禍で出生率が激減して誰もが危機感を感じているこのタイミングで、370億円の財源のために本当にやるべきことなのでしょうか。強く疑問が残ります。
— 音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選出) (@otokita) April 3, 2021
現状、子供手当ての支給額は子供の年齢によって1万円から1万5千円です。これは子供1人につき年間12万円から18万円の支給になります。
ところが約10年前にあたる2010年までは子供1人に対して年間38万円の控除がありました。この年少扶養親族に関する扶養控除は、子供手当ての財源として廃止となりました。つまり「控除から手当へ」の掛け声とともに、子育てしている親が自由に使えるお金は半分以下になったということです。
いまでも月ごとの源泉所得税が子供の人数によって少なくなるのはこの名残になります。確定申告をしていれば分かりますが、源泉所得税は子供の人数によって減るのに、確定申告で納める税は子供の人数によって減額されないので、その差額として年度末にやたらと高い税金を納めることになります。
本来であれば子供手当ては月に2万6千円支給されるはずでした。「手当から控除へ」も、年額31万2千円と年少扶養控除に近い水準で、控除では低所得者が恩恵に与れないという観点からも、当時としては妥当性のある話でした。
これが半額近くに下げ止まっているのは、東日本大震災に関する復興財源が理由です。
復興財源は他にも2036年まで続く2%の増税である復興特別所得税も充てられています。これら復興財源がほんとうに震災被災者への復興に使われたのかという問題は、「復興予算流用問題」などで激しく追及されました。
これらの総括は未だに不十分であり(音喜多駿参議院議員質疑2021年3月16日財政金融委員会)、水ぶくれした予算による規律の緩みが指摘されています(日本経済新聞)。
まさに「のど元過ぎれば」ということで、導入時の増税、震災復興を理由にした支給額半減から、さらに支給を減らそうというのが今回の児童手当削減案です。これを防ぐためには過去の復興予算とその使途に関するシステマティックな総括と情報公開が今後必要になってくるでしょう。
そしてこれらは今般の莫大な新型コロナウィルス関連予算に関しても無関係とはいえないかもしれません。
また「手当」は政府の都合により勝手に削減される脆弱なもの、政府に命綱を握られ、その都合によって生活が左右されてしまうことに繋がるともいえます。再配分の財源として増税を伴う「手当よりも」、国の財政規模を制限する「控除あるいは減税」がこれからは必要です。
控除は複雑で分かりにくいとされてきましたが、子供手当てには年齢・子供の人数による支給額の変化、所得制限など様々な条件があり、引っ越しに伴う再申請も必要等、年少扶養控除よりもはるかに複雑で面倒な制度です。
今であればこそ、低所得者などで控除が所得を上回れば差額分を支給する子供版ベーシックインカム的なもの、「負の所得税」の導入検討などという議論も出来るのではないでしょうか。
もしこのまま児童手当廃止の審議が進むならば、年少扶養控除廃止との整合性に関して総括、場合によっては復活も視野に入れて欲しいと考えております。