東大京大生ってどうしてそんなにコンサルになりたがってるの?と思ったときに読む話

今週のメルマガ前半部の紹介です。

先日、こんなニュースがちょっとした話題になりました。

【参考リンク】【3月速報:東大京大 22卒就活人気ランキング】コンサル独占だったTOP10に異変あり?3月以降の「本命」企業はどこだ?

PonyWang/iStock

東大・京大生の就職希望ランキングで上位5社に日本企業が3社も食い込んだゾ!というものなんですが、逆に言うとそんな程度の話でニュースになるくらい、近年は優秀層は日本の大手企業には目もくれない状況が続いていたということです。

ちなみに上記記事も、あくまでもエントリーが一巡した中間段階での一時的現象にすぎないと指摘しています。外資コンサル人気は不変といっていいでしょう。

ここから9カ月がたち、もうコンサルはエントリーを終え、一度スコープから外して別の業界を見る段階に入った。それがランクダウンの要因だろう。大学受験に例えるなら「外資コンサル=前期日程」、「日系大手=後期日程」のようなものだ。

ちなみに前期日程のランキングはこちらになります。

【参考リンク】【6月速報:東大京大 22卒就活人気ランキング】コロナ直撃の採用前線、人気企業は変わったのか?

なぜ優秀層は外資系コンサルを目指すのでしょうか。そして、日本企業が外資に負けずに優秀層を取り込むにはなにをすべきなんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。

エリートが恐れていること

近年、東大や京大といった優秀層の学生に会うと、彼らが具体的に日本企業内のキャリアパスの課題を驚くほど具体的に理解していることに驚かされます。彼らの多くは日本企業に入社して、以下のような状況に直面することを真剣に危惧していますね。

・まったく専門性のない人材になってしまうこと

メンバーシップ型雇用では配属先は選べません。有望な成長事業の戦力として配属される人もいれば、赤字事業の火消し役を期待されて投入される人材もいます。

当然ながら10年たったら転職市場でウン倍の価値が生じることでしょう。

最悪なのは、会社都合であちこちの事業部を経験させられ、35歳を過ぎるころには「社内政治には詳しいけど転職サイトに登録したら『未経験者歓迎!』みたいな案件しか回ってこない人材」になることですね。

・会社にしがみつくしかない人材になってしまうこと

転職市場での市場価値の低い人材になってしまうと、もはや会社にしがみつくしか生きる道はありません。

そういう人材はある意味、会社にとってはとても好都合です。なり手のいない職を任せたり、田舎の事業所に転勤させたりとやりたい放題ですから。若手なら即転職するような仕事でも、しがみつくしかない中高年は歯を食いしばって勤めてくれます。

実は日本型雇用ってそういう従順なゼネラリストを育成するという狙いもあるんですね。

・非エリートと横並びで買い叩かれるしかない立場になること

そして、昔も今も、エリートにとっては我慢ならないことがあります。それは『横並び一律の初任給』というやつです。

なんで聞いたことない大学のヤツと同じ給料からスタートするの?自分はこれだけ勉強してあんなこともこんなことも出来るし、それは面接でも高評価されたはずなのになにこの給料水準。おかしいでしょ。

と、頭のいい人は腹の底ではみんな思ってますね(苦笑)

で、それに対して日本企業の人事は「みんなそうだったんだから。でも20年30年勤めあげれば優秀者は偉くなってるものだから」と説得するしかないわけです。

20年前ならともかく、今どき優秀層でそんな説明に引っかかる人材はまずいないでしょう。東大出身でありながら専門性を身に着けられず転職もできず、結果的に非エリートと一緒に会社に買い叩かれている先輩はそこら中の大企業にあふれています。

という具合に、もはや経営の安定した大手日本企業に総合職として就職することは、エリート層からすればリスクでしかないんですね。

別にコンサルという職種そのものがエリートを惹きつけているのではなく、上記のようなリスクが相対的に少ないことがエリートに選ばれる理由だと筆者は考えています。

リーマンショック前にエリート層の間で外銀就職が大流行しましたが、あれと同じ構図ですね。

フォローしておくと、筆者は今の東大・京大生が90年代の自分たちの世代とそう大きく違うとは考えていません。筆者は就職氷河期真っただ中の90年代後半に就活しましたが、当時の東大生を突き動かしていたのは「せっかく手にした学歴に見合うリターンを得られるのか」といった焦燥感でした。

処方箋が違うだけで、本質的な部分は良くも悪くも変わってはいないなというのが筆者の印象ですね。

あ、そういえばこの手の話をするときまって「でも新卒一括採用はスキルの無い学生をゼロから育てられる世界に誇るべき優れたシステムだ」みたいな反論が来るんですけど。

はっきり言ってアホですね。こういうルールって金を出す企業と企業の欲しいエリートが決めるものなんです。どっちにも入れない外野なんて知ったこっちゃないんですよ。

文句があるならいっぱい勉強して企業の欲しがるエリートになってくださいね。話はそれからです。

以降、

大企業採用で起きているリアル
企業も学生も発想の転換を!

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Q:「副業はいつから始めるべきでしょうか?」
→A:「大切なのは年齢ではなくその先のビジョンでしょう」

Q:「ジョブ型と縦割りの違いとは?」
→A:「得点を奪い合うか、責任を押し付けあうかの違いです」

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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2021年4月8の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。