難しくなった株式投資

過去一年は私の長い投資経験の中でも最も儲けやすい時だったと思います。私だけではなく、誰でも、という言葉が適切かもしれません。20年3月半ばまでの株式市場での売り込まれ方は尋常ではありませんでした。パンデミックが恐怖心を煽り、Cash is Kingと経済紙が堂々と言い放っていたのです。

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投資家の群集心理とAIの過激な予測は不必要なまでに大多数の株価を奈落の底に落とし込みました。ワーストシナリオを前提にパニックを煽ったヒューマンエラーであります。私はコロナ当初、これはリーマンショックのように金融システムが壊れたわけではないので企業存続そのものに問題が生じたわけではない、時間が解決するはずだと申し上げました。

この判断は一部は正しかったと思います。「一部」と申し上げるのはこれほど長くコロナ問題を引きずるとは予想していなかったからです。結果としてみればモノと物流は絶好調、時間を持て余した人たちがやるゲームや株式投資に関係する業界も笑いが止まらなかった半面、人が移動することを生業としている企業はいまだ苦戦しています。

ところが北米の株式市場をみると昨年3月を底にとにかく何でも買いとなりました。飲食店銘柄、航空会社からホテルREITのような銘柄まで買われており、不調の業種でもコロナ前の水準の8割以上まで回復しています。

私がこの数カ月、北米市場に於いて手持ち銘柄の売りに対して買いがかなり少ないのは買える銘柄が極めて少なくなっているためです。企業の実力との見合いから株価は既に経済活動の完全回復を織り込んでしまっています。というよりバイデン政権のやりすぎと思われる経済支援対策とパウエルFRB議長の必要以上の低金利コミットメントで1-2年先の業績まで刈り取ってしまったというのが正解です。

4月に入って再び市場のトレンドは微妙に変化しています。ナスダック銘柄でもGAFAMのような巨大企業に投資マネーが流入しています。アルファベット(グーグル)、フェイスブック、マイクロソフトが高値をつけており、高値を付けてから8カ月ぐらいたつアマゾンも新高値をつける勢いです。これは巨大ゆえの買い安心感と買える銘柄がないという二つの心理の結果だろうと思います。

また、金(ゴールド)がここにきてようやく底値から脱却に向かっています。一般銘柄が高値を付ける中ゴールドに関しても昨年8月に2000ドルを大きく超えました。市場からは3000ドルなどという威勢の良い声も聞こえ、このブログのコメントでもまだまだいける、という意見もありました。私はその際、金は相場の尺度がないから2200ドルにも1800ドルにもなりえると申し上げたはずです。結果として一時1700ドルを割るところまで下がります。金相場は株式市場が枯れたときにやってくる「拾う神」の方なのでもしも私の読みが正しければ1900ドルぐらいまでは戻せると思います。

こう見るとナスダックと金という昨年の春先から夏にかけての相場付きとそっくり同じパターンが復活したように見えます。但し、他の銘柄にも提灯買いが付くかどうか、今回は私は慎重にならざるを得ないのです。

大相場の最終局面で必ず出てくるもの、それは素人なのです。1929年大恐慌の靴磨きの少年の逸話は有名ですが、日本のバブル崩壊前は主婦に料亭の女将です。記憶に新しい数年前のビットコイン第一次ブームの時はOLがクレジットカード決済でビットコインを買っていました。今回の素人ぶりはいわゆる株式掲示板Redditの中のWallstreet Betsでの狂乱振りだったと思います。Game Stop株をはじめ、いくつもの銘柄を乱高下させ、ヘッジファンドをもやっつけたという武勇伝に酔いしれています。これは危険の兆候と見てよいでしょう。

今の相場付きは強烈なカネ余り現象故にお金を持って行くところがないので株式をしぶしぶ買っている、あるいは持っているというように見えます。つまり消極的姿勢が見て取れます。この変化には留意した方が良いと思います。

にわか投資家が様々なテクニックを披露したブログやユーチューブもありますが、結局は経験が勝ります。私は本業の不動産の仕事は33年の経験ですが、株式は46年あります。株式投資では大やけどをしない投資、これが最も重要ことだというのをご理解いただくには失敗を積み重ねた者でないとなかなかお分かりいただけないのかもしれまんが。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月12日の記事より転載させていただきました。