応援します、飲食店経営

コロナで最も厳しい生き残り競争を強いられている飲食業。先日テレビタックルで話題のスーパーマーケット、アキダイの秋葉弘道氏が浅草でお好み焼き、もんじゃ焼き店を経営する東MAX氏と対談し、苦境にあえぐ東氏と絶好調の秋葉氏の姿が好対照でありました。

stockstudioX/iStock

放送から見えたのは浅草という立地、東MAX氏という知名度が売りのはずが人がいなくなった浅草ではどうやっても太刀打ちできないという逆境でした。一方、秋葉氏の店は東京の練馬区を中心に5店舗を持ち、それらをうまくリンクさせながら地域の方の胃袋の需要を満たすディスティネーションとしている経営戦略が功を奏しているようです。

これを見て思ったのは持てる資産に甘えてはいけない点でしょうか?「俺は〇〇があるから万全だ」と思いやすくなりますが、それは人が集まる前提でお金が街中を流れている時です。ところがコロナで外国人のみならず、日本人すら外食を控えている中、お金はオンラインを介して流れ、サービス消費からモノ消費に逆戻りした感じがします。

経営者として思うことは時代の変化はいつ起きるかわからない、そのためには日々切磋琢磨してどんな状況にも耐えうるチャレンジをしていかねばならない点でしょう。

少し前のブルームバーグビデオに「東京に個人投資家向けバー『ストックピッカーズ』がオープン」とあります。店内には株式にちなんだものが陳列され株価ボードもあり、メニューのドリンクは「リーマンショック」や「ブラックフライデー」「アベノミクス」といったカクテルもあるようです。

市場関係者は通常の企業より早く仕事が終わるため、仕事上がりの一杯をよく飲むことが知られています。ニューヨークやトロントでもそのような人たちが集まるところはあり、早い時間にさっさと切り上げ、夕方遅くになったら通常の会社員と入れ替わるように帰るというパターンです。これは情報交換をするという極めて重要な意味合いがあり、一種のクラブだと思ってよいでしょう。

ブルームバーグが紹介するそのバーはある意味、テーマ型飲食店と称する分野で、ある特定の趣味、興味を持つ人たちが集まる店を目指しています。そこに行けば何か面白い話題が聴けるかもしれないと思う投資家さんもいるはずです。きっとスポーツバー的な盛り上がりを見せるのでしょう。

無数の飲食店が今、戦っているのは市民の胃袋を支えるということですが、その差別化はだんだん厳しくなっています。寿司屋なら回転寿司に押されやすくなっていますし、チェーン店が資本のチカラで安定感、安心感を打ち出し、主婦や子供のハートをつかみます。一方、個人店となると味で勝負することになりますが、行列ができるような店はごく一握りに絞られかつ、行列ラーメン店の隣のラーメン店はガラガラという二極化現象も起きています。

グルメ番組や雑誌では新店を紹介しており、アナウンサーが試食して「おいしい」というのは常套句ですが、それ以上の深掘りもありません。雑誌に紹介されても1年後には店がないことはザラです。

飲食店を経営する方はそれなりに腕に自信があるはずですが、全員が勝ち抜けるわけではありません。となれば私は冒頭の秋葉社長が東氏に「コロナで何か工夫をしましたか?」という質問が意味あることだと思うのです。私なら例えば「プロの店の作り方をちょっぴり公開します」とか「コロナだから自宅でも浅草MJのもんじゃをつくちゃえ」といったやり方も刺激的ですがアリだと思うのです。失敗するかもしれないけれど答えはどんな大経営者も知りません。まずは人々が通り過ぎるのではなく、立ち止まってもらうことからスタートするしかないと思うのです。

私が当地でコロナよりはるか前から外食にさほど興味がなくなったのはどの店も特徴がないからです。よって家で作れないものを食べたいとは思いますが、外食するとどれだけうまいかと言えば別に腹が満たされるだけということも多いのです。(当地は日本のようにグルメ天国ではないということもあります。)

コロナで人々のパーセプションは大きく変わったと思っています。今まで当たり前だと思っていた行動が真逆になることもあります。その中で飲食店のものは持ち帰りでもよいとなれば飲食店の取捨選択は進むと思います。また年齢層の変化にも注目しています。昭和的な店が好きな方々の年齢は60代から70代に移ってきていますが、店主も客もスライドして高齢になっている点が気になっています。

1年ぐらい前、コロナ明けには飲食店が補助金をもらった後に大量閉店があるかもしれないと述べたと思いますが、私は今でもそれはあり得ると思います。淘汰というより新しい息吹が生まれるということかと思います。

ぜひとも多くの飲食店に復活してもらいたいと思います。苦しい中だと思いますが、心に鞭を打ってもう一工夫して生き残りを図っていただければと思います。今の感じですと正常化は早くて今年の暮れぐらいになる気がします。まだ先は長そうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月14日の記事より転載させていただきました。

アバター画像
会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。