「教員(教育公務員)働き方改革」の提言

今の教員の劣悪な労働環境は、以下の4点に集約されると思う。

①給与・残業手当など、対価の不足

②あいまいな職務範囲とその拡大(教員が引き受ける仕事の増加)、過労死レベルの超過勤務(サービス残業)増加

③②により本来業務(授業や生活指導等)に注力できず、仕事の魅力とモチベーションが低下

④外部(マスコミ、世論、住民、保護者など)による教員バッシングの高まり

①~④により教師の仕事に魅力がなくなれば、優秀な学生が他の職業に流れ、教養・知識に乏しいタイプや、生計のため割り切って働くサラリーマンタイプが増えるだろう。

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給特法(公務員給与の+4%を一律支給する代わりに残業手当を支給しない制度)が廃止されない限り残業代は支給されず、①の対価は低いままだが、仮に残業代を支給しようとしても、残業月80時間以上の教員が多い中、大幅な財源確保ができなければ全額支給は難しい状況にある。

従ってまずは➁教員本来の職務を精査し、平常時ほとんど残業しなくても済むような労働環境を構築すべきだろう。超過勤務を大幅に減らしたうえで給特法を廃止すれば、残業手当を民間並みに支給しても、国や自治体の財源で十分補えるはずである。

意外に厄介なのは数値では見通せない④である。教育委員会、学校管理職、学校関係者(評議員等)が、HP・SNS等の発信ツールも使って積極的に世に情報発信し、多くの市民に学校(教員)の実態を認知してもらう必要があろう。

残業時間の削減や仕事の効率化を妨げるものの1つに会議や研修がある。

確かに必要な会議はあるが、教員は個人の裁量で仕事をこなすのが得意な人種であり、事

務連絡や定例会議はメールやWEB上で済むと思う。

また、教員は勉強好きな人間が多いから、研修を原則自由参加としてはどうか?校内や近隣校でプログラミング、生徒指導、カウンセリング等スキルに秀でた教師が、自発的に研修会・講習会を開催し、スキルを身に着けたい教員が自主的に参加する形態にすれば、充実した内容に参加率も高くなるのではないか。

ぜひ学校(特に管理職)は、世間・教委の評価や学校間競争を意識した実績作りに固執せ

ず、教員が「本来の仕事」に集中できるように、無駄な会議・研修・事業の精査を行って

いただきたい。

ここで教員の「働き方改革」が民間より難しい理由を挙げておきたい。

1.給特法により残業手当が支給されないことで、サービス残業の肥大化(部活動指導

や平日超過勤務等)、有能な教員への過度な仕事の集中がおこる

2.公立学校は文科省の中央集権教育行政の中で、学校独自の動きがとりにくい

3.「子供のため」が足かせとなり、教員側の都合による働き方改革(業務の精選・範囲

の明確化等)がしにくい

中でも改革の大きな障害となる給特法関連の問題を以下整理しておく。

ア.教師の仕事は明確な終わりがなく、元来サービス残業が常態化しやすい。

イ.残業手当を支給しないため、文科省も教育委員会も教師のサービス残業に目をつむりがちである

ウ.ア・イの結果、有能な教師に仕事が集中する一方で、+4%分も仕事をしない教師も現れるが民間のような減給・降格ができない

エ.文科省が給特法を長年放置してきたため、残業を認めた場合の膨大な残業代に見合う

財源が確保できなくなっている

筆者は給特法を廃止すべきと考えるが、それに伴う弊害も踏まえながら提言を行う。

A.給特法を廃止すれば残業代が支給されるため、無駄な残業のチェックが厳しくなり、退勤時間が徹底される

(*ただし教員の業務の明確化・精選が先に行われなければ、退勤が早まる反動で自宅持帰りの仕事が増加しやすい)

B.給特法を廃止する代わりに「職務(担任等)給(加点方式)」を導入する

理由:これまでの罰や制約の「減点方式」では、多くの教員のモチベーション・仕事効率が低下するため

C.部活動については勤務日振替えを基本とするが、振替休日をとった教員の授業やHR指導を他の教員が肩代わりできるためには、最低2~3割の増員が必要になる

また、給特法の廃止と並行に、労働環境改善のため(1)(2)を行う。

(1)教員の業務(職務)そのものの精選・明確化

授業、学校生活指導、緊急対応以外の直接子供たちに関わらないような仕事(事務処理、会計、校外生徒・交通指導、施設改善、アンケート調査など)を業務から外し、外部委託や、他業種・校外組織の業務に組み込む

(2)教育予算の大幅増額

教員の増員、給与の改善(給特法を廃止し+4%なくす→少々のベースアップ、残業代支給、職務給設定)、IT設備等学校教育環境整備など

最後に「教員働き方改革」の流れをまとめておく。

予算の大幅増額→増員・給与改善、職務の精選→教員の労働環境改善→魅力ある職業へ→教採の倍率増加→教員の質的向上→子供・保護者・社会の信頼度アップ→教員のモチベーションアップ→学校教育の充実

このような流れが何とか実現できたらと思うのだが…。


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