文大統領が韓国大法院(最高裁判所)の長に、高等法院の経験すらない子飼いの地方裁判所長の金命洙を抜擢した意図が、いわゆる徴用工や慰安婦に係る一連の反日裁判の操縦や、退任後の自らの保身を図ることにあったことは、後に起こっている事態を見ればほぼ間違いなかろう。
国民の自由を守る三権分立を蔑ろにする文在寅の呆れた司法壟断だが、自由と民主主義を標榜して立国したはずの米国で、バイデン政権がこれから連邦最高裁判所に関してやろうとしていることも、文在寅に負けず劣らずではなかろうか、とつい思ってしまう。以下にその経緯を見てみたい。
米国のリベラル系メディア「インターセプト」は15日、民主党議員が連邦最高裁判所の判事を現在の9人から13人に増員する法案を計画していると報じた。記事は下院のナドラー司法委員長、ジョンソン小委員会委員長とジョーンズ議員、上院のマーキー議員の名を挙げている。
連邦最高裁判事の任命は大統領の指名と上院の助言・同意に基づく。その定員は、10人から9名に変更された1869年以降、150年以上変わっていないと同記事はいう。現在の9人を指名した大統領は6人が共和党、3人が民主党だ。Fox Newsは、憲法は判事の人数を規定していないと書いている。
大統領選を間近に控えた昨年9月、27年前にクリントンに指名されて以来、国民の厚い信頼を得続けていたギンズバーグ判事が亡くなった。民主党が意趣返しで大統領選後の後任指名を求める中、トランプは自身による3人目のエイミー・バレットを指名、任命式でコロナ感染者を出したのは記憶に新しい。
任期が終身なので、共和党指名のアントニン・スカリアが16年にテキサスの宿泊先で死亡した際、大統領候補だったトランプは「顔の上に枕が置かれた状態で発見されたそうだ。枕がそんな所にあるのはおかしい」とコメント、解剖もされなかったため、CNNは陰謀説を報じていた。
先に意趣返しと書いたのは、時のオバマ大統領が指名したメリック・ガーランド(バイデン政権の司法長官)を、上院多数党を率いる共和党マコーネルは大統領選の期間中を理由に拒否、結局、トランプ新大統領が指名したニール・ゴーサッチが承認されたからだ。どっちもどっちということ。
当時、スカリアの補充をせずに判事を8人に減らすべきと主張したテッド・クルーズ共和党上院議員は、ギンズバーグが死亡した昨年10月には、現在の判事の数9人を維持するための憲法改正と議会が判事の数を増やす法律の可決を禁止する条項を提案、本年1月にも再提案していた。
他方、民主党左派の上院議員エリザベス・ウォーレンとオカシオ・コルテスは昨年10月、トランプの指名強行に対抗して、「すべての選択肢の検討」と「法廷の拡大」をそれぞれに主張していたので、今回の4人増員案はこれらの声も反映してのことか。
バイデン自身はといえば、以前は「法廷を一杯にする案(idea of court-packing)」には反対で、秋に最高裁改革を研究するための超党派委員会を設立するとしていた。が、今週、増員提案のメリットを分析するための「合衆国最高裁判所の大統領委員会」(委員会)を設ける大統領令に署名した。
同委員会は、最高裁判事の増員に止まらずその任期や交代、裁判所のルールや慣行、訴訟の選択などの諸改革も検討するという。これを共和党は、最高裁判所を変える政治的動機による取り組みの偽装と評し、マコーネルも「我が国の独立した司法機関に対する直接の暴行」と難じる(Fox News)。
そこで共和党有志議員6名は13日、クルーズ議員案を具体化すべく、最高裁判所判事の数を9人に設定することを目的とした憲法改正案を提出、民主党による4人増員法案提案とバイデンの委員会設立に対抗して先手を打った。
斯く両党は最高裁判事の頭数に拘泥する。が、先の大統領選では12月、接戦4州が議会承認を得ない憲法に違反した方法で選挙したとのテキサス州の提訴を、トランプが指名した3人を含む保守派6人を擁した連邦最高裁が、テキサス州に原告適格なしと門前払いし、トランプ敗北を決定付けた。
我が自由「民主」党もこれに倣って全原発の再稼働を願いたいほどの韓国と米国の司法壟断だが、米国のそれにはアラスカでブリンケンが中国に述べたように、その一部始終がこうして我々の目にも見える透明性がある。が、果たしてそれを健全と見るべきか、それともナイーブと見るべきか、迷う。