日米首脳会談と台湾 〜日米同盟に求められる抑止力

大方の予測に反して、「台湾」と明記された日米首脳会談の共同声明を、どう評価すべきか。立場により、見方は分かれるだろうが、いちおう及第点とみなしてよかろう。

首相官邸HPより

会談後在米中国大使館は報道官談話を発表。「中国の内政であり干渉は許さない。われわれは強い不満と断固とした反対を表明する」、「時代に逆行し、地域の人々の心に背こうとする企ては、自身を傷つける結果になるだろう」と日米を威嚇した。

4月19日にも、中国外務省の汪文斌報道官が「日米両国こそ対立を煽っており、地域の平和と安定に対する真の脅威になっている」と強い反発を見せた。台湾についても「中国の不可分の領土であり、日米両国は中国側の懸念を厳粛に受け止め、『一つの中国』の原則を守り、内政干渉を直ちにやめるよう求める」と重ねて反発した。

他方、台湾総統府の張惇涵報道官は「アメリカと日本が台湾海峡の平和と安定を重視していることに感謝し、評価する」とのコメントを発表。台湾の外交部も「心からの歓迎と感謝を表す」とのコメントを発表した。

要するに日米両国は、中国が嫌がり、台湾が歓迎する声明を出した。それに落第点をつけるのは、酷評に過ぎよう。とはいえ、手放しで礼賛するわけにもいかない。

たしかに、日米共同声明は、中国が「核心的利益」とみなす台湾をめぐり、「We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues.」と明記した。以下、外務省の公式サイトの「仮訳」を引こう。

「日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」

日本側の抵抗を排して、「台湾」と明記されたことは素直に喜びたい。

とはいえ、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」との前段部分は、先月の日米2プラス2でも登場したフレーズであり、とくに目新しい表現ではない。

続く、後段の「両岸問題」に至っては、手垢まみれのフレーズであり、なんの目新しさもない。おそらく、中共政府に忖度する日本政府が米側を説得して追記させたのであろう。じつに情けない。

そもそも「中台」と呼ばず、「両岸」と呼ぶ時点で、「一つの中国」というタテマエに縛られている。これでは、せっかく「台湾」と明記された意義が大幅に低減してしまうではないか。

広く報道されたとおり、日米首脳会談の共同声明で「台湾」に言及したのは、1969年の佐藤総理大臣とニクソン大統領の会談以来、52年ぶりとなる。ただしそれは、日本が半世紀前の1972年に中国との国交を「正常化」し、台湾と断交する以前の会談であり、72年以降は初めてとなる。

この半世紀で地域の国際環境は大きく変化した。台湾は見事に民主化を達成した。もはや多くの目に、自由主義陣営の独立した主権国家と映る。そうした変化を直視せず、いまだに「一つの中国」と言い続け、台湾を共産主義国家(中華人民共和国)の一部と「理解」する(日本政府)のは詭弁ないし、ごまかしである。道理に合わない、正義に反する。

なぜか注目されていないが、日米首脳会談の模様を紹介した外務省の公式サイトには「台湾」の二文字がない。「両首脳は、インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について意見交換を行いました。(中略)その上で、こうした問題に対処する観点から、中国との率直な対話の必要性が指摘されるとともに、普遍的価値を擁護しつつ、国際関係における安定を追求していくことで一致しました」とだけ書く。

「台湾」を明記しないばかりか、この期に及んでなお、日本政府(外務省)は「中国との率直な対話の必要性」を指摘する。

中国人民解放軍の創設100周年を迎える2027年までの今後6年以内に、中国の軍事的な脅威がより顕在化する。米インド太平洋軍もそう分析している。偶発的な衝突から武力紛争が生起するリスクはいまもある。そうした中台危機をシミュレートとした最近18回の米国防総省の図上演習で、米軍は全回敗北したらしい(米紙NYタイムズ)。

いま日米同盟に必要なのは、圧倒的な抑止力である。それを背景とした圧力である。少なくとも私は「対話の必要性」など感じない。