連休明け、新入社員を辞めさせないためには

関谷 信之

4月のオフィス。仕事がわからず、右往左往する新入社員に、こんな言葉が放たれました。

「そんなことも知らないのかよ」

発したのは入社数年目の「先輩」社員。教育担当チームの1人です。言い方はともかく、この言葉は大事な要素を含んでいます。

「そんなこと」です。

「そんなこと」が伝わるか。これは教育を担当する指導者に依存します。人によって、伝える内容が異なる。伝える能力に差がある。新人に「そんなこと」が伝わるかどうかは、「運次第」です。

「運」に頼らず、確実に伝える。それをサポートしてくれるのが業務マニュアルです。しかし、業務マニュアルが無い会社は少なくありません。

今回は、新人の退職防止にも役立つ、業務マニュアルについて考察したいと思います。

mohamed Hassan/Pixabay

なぜ新人は辞めてしまうのか

新入社員が定着しない。多くの社長が頭を悩ませています。

なぜ、新人がやめてしまうのか? ご存知の通り「人間関係」です。

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入社したての新人です。「人間関係」の幅は広くありません。悪化したのは、主に教育担当者との関係でしょう。では、なぜ悪化するのか。

多くの会社では、新人教育を、入社3年前後の「若手ホープ」に任せます。この世代は、業務が多く非常に忙しい。

「新人の面倒なんてみたくない」

それが本音です。なるべく自力で成長してほしい。

一方、新人は、

「丁寧に教えてほしい」

右も左もわからない。教育担当者に依存するしかありません。

つまり、思いが全く逆。「人間関係」が悪化するのは、ある意味必然なのです。

忙しいから、教え方が雑になる。仕事が覚えられず、ミスを多発する。教育担当者はいらだち、新人は自信を失う。「人間関係悪化」は、こういったパターンが多いのではないでしょうか。

ストレス耐性は強化できない

先日、ワイドショーで入社1週間で辞める新入社員が話題となっていました。

コメンテーター数名が、新入社員側の問題を指摘。

「今の若いものは」

といったところでしょうか。

確かに新入社員世代にも問題があるかもしれません。しかし、新入社員世代の、ストレス耐性を強化することはできません。「他者」は変えられないのです。

一方、「自社」の教育体制を変えることはできます。

自社でできること

教育体制の強化には「学校」が参考になります。学校が使うツールは2つ。「先生」と「教科書」です。

冒頭の、

「そんなことも知らないのかよ」

といった口のきき方をする先輩社員を、「先生」に育成することは困難です。一方、「教科書」つまり「業務マニュアル」を充実させることは、比較的容易です。業務マニュアルに注力すべきでしょう。

ところが、多くの会社は、業務マニュアルがありません。

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新入社員にとって、これは大きなギャップです。まず、マニュアルを作り、このギャップを埋めましょう。マニュアル反対論を唱える人もいますが、マニュアルで伝わる程度の業務なら、作ってしまった方が効率的です。「再現性」が高く「独学」可能なレベルであれば申し分ありません。

業務マニュアルのメリット

業務マニュアルのメリットは、楽になることです。教育担当者は、負担が軽くなる。新人は、理解しやすくなる。お互い楽になります。「人間関係悪化」の可能性も低下するでしょう。

退職を防ぐ。新入社員が成長する。採用コストがムダにならない。業務マニュアルは、手間暇かける価値が十分にあります。

何人残ってくれるか

4月後半。そろそろ、新入社員が悩み始めるころです。リモートワークで帰属意識が低い、と言われる今年の新入社員。連休明け、果たして何人が残ってくれるでしょうか。