世界62カ国で「宗教の自由」が蹂躙

世界の「宗教の自由」を監視する「キルへェ・イン・ノート」(1947年創設、国際カトリック支援団体)は20日、ローマで「2021年報告書」を発表した。それによると、世界196カ国中、62カ国(約31.6%、人口52億人)で「宗教の自由」が蹂躙、ないしは制限されている。その中には中国、インド、パキスタン、ナイジェリアなど人口大国が含まれる。

▲2021年「宗教の自由」報告書(Kirche in Not公式サイトから)

報告書によれば、 ナイジェリアでキリスト教会の建物が破壊され、中国新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル人(主にイスラム教徒)が集団収容所に隔離され、中国共産党政権による同化政策を強いられ、西アフリカのブルキナファソでは数十万人がイスラム過激派による迫害を受けている。

宗教者の中で最も迫害されているのはキリスト教徒という。同時に、中国とミャンマーでは3000万人以上のイスラム教徒が弾圧されている。ちなみに、迫害されているキリスト教徒を支援する超教派の宣教団体「オープン・ドアーズ」(Open Doors)によれば、世界で3億4000万人のキリスト信者が迫害され、「宗教弾圧国」インデックスは2021年も北朝鮮がトップだ。

また、新型コロナウイルスのパンデミック(世界流行)下で、イスラム過激派は「コロナ禍は神の刑罰、西側頽落文化への刑罰だ」とプロパガンダし、宗教者を見せしめのために迫害するケースが増えてきた。例えば、エジプト、トルコ、ニジェール、中国でキリスト教徒が、インドではイスラム教徒がスケープゴートとなり、インターンネットの世界ではユダヤ教徒がコロナ禍の憶測情報で批判されている、といった具合だ。「宗教の自由」蹂躙への主要原因として、独裁主義、イスラム過激主義、民族的・宗教的愛国主義が指摘されている。

▲「宗教の自由」状況を示す世界地図(Kirche in Not公式サイトから)

報告書では、「宗教の自由」状況を表示した世界地図が色別に分けて作成されている。そこでは「赤」は「宗教の自由」が著しく蹂躙されている国。「赤」カテゴリーに属する国は26カ国、総人口39億人で世界人口の半分(51%)を超える。12カ国はアフリカ大陸、それにインド、イラン、中国、ミャンマーが含まれる。

次に「オレンジ」は宗教者への社会的差別が行われている国。それに該当する国は36カ国、12億4000千万人。そのカテゴリーに入る国で9カ国は改善傾向が見られる一方、20カ国は状況は悪化している。そして「監視下」の国だ。これは新しいカテゴリーで、潜在的に「宗教の自由」が蹂躙される危険性がある国だ。例としてロシア、チリが挙げられている。

そして問題は、「赤」に分類される国で宗教者への迫害、弾圧が強まっていることだ。例えば、中国では習近平主席が政権を掌握して以来、宗教への弾圧は強められてきた。宗教を抹殺できないことを知った習主席は「宗教の中国化」を実施してきている。その実例は新疆ウイグル自治区(イスラム教)で実行中だ。また、キリスト教会に対しては官製聖職者組織「愛国協会」を通じて、キリスト教会の中国化を進めている。習主席は、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなければならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調する一方、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告している(「習近平主席の狙いは『宗教の中国化』」2020年6月12日参考)。

「キルへェ・イン・ノート」によれば、中国中部の江西省では昨年末現在、キリスト教会や仏教寺院に200以上の顔面認識カメラが設置され、社会信用システムが導入され、教会訪問者は危険人物として飛行機チケットの購入が出来ないといった不公平な扱いを受けている。

報告書はまた、イスラム過激テロ組織の他宗教の迫害を指摘している。多国籍のジハード主義者ネットワークは赤道を超えて拡大し、超大陸カリフ制の確立を目指している。イスラム過激テロ組織「イスラム国」と国際テロ組織「アルカイダ」は中東からイデオロギー的、物資的支援を受け、武装化した集団を率いて「カリフ地帯」を構築するために連携している。ジハード主義は西アフリカのマリ、モザンビーク、チャド、カメルーン、そしてインド洋のコモロ、南シナ海のフィリピンまでその勢力を拡大している。

グローバルに展開する“サイバー・カリフ”は西側諸国でオンライン・リクルートを進め、ユーロ・イスラムの過激化を秘かに広げている。イスラム過激テロリストのオンライ攻勢に対し、西側テロ対策関係者は効率的な対応が出来ず、苦戦している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2021年4月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。