週休3日は普及するか

自民党が2月から検討している「選択的週休3日制」、様々な意見が飛び交っていますが、さて、この制度は何のために、そしてどんなメリットがあるのでしょうか?

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個人的な結論から申し上げますと「選択」そのものの普遍性が広いものではなく、案外、ごく一部の本当に必要としている人だけの利用に留まるとみています。それは誰か、といえば介護など定常的に業務以外のことをやらなくてはいけないような方、最近話題になりつつあるリカレント教育(生涯教育)に絡み、大学院や通信教育を受ける方のためといった限定した使い方でそれ以外に週休3日にする積極的メリットはないとみています。

そもそも自民党が大々的に週休3日を提言している背景はフルタイムワーカーと称する週40時間勤務の社員の縛り方についてもう少し工夫ができないか、ということかと思います。かつては9時-5時月-金勤務といった基本パタンが主流でしたが、その後フレックスタイムとかコアタイムといった工夫が企業にみられるようになりました。また時差通勤と称し、10時出勤の方もいらっしゃいますが、結局全体の枠組みである40時間週5日勤務はあまり変化がなかったかと思います。

ここにきて介護問題がでてきた一つの理由は核家族化が進み、親の面倒を見るのはひとりの子供というのが当たり前になりつつあり、かつてのように兄弟がたくさんいて誰かができたという選択ができなくなったことがあります。

もう一つはリカレント教育ですが、まだこれが日本で普及しているとは言いませんが、個人的には10年ぐらいのうちにはもう少し増えてくるトレンドだと考えています。これは学びなおすことであります。その学び方は大学院でも二つ目の大学でも通信制やオンライン教育もあるでしょう。

カナダに移民した日本人の方で通信制でカナダの高校卒業の資格を取ることを目指している方を私は何人か知っています。かつての教育とは卒業証書やそれに伴う免許、資格が欲しかったりしたのですが、最近はある専門分野や学問全般について興味があるからじっくり学ぶという目先の利益にとらわれない形がみられます。これは成熟国家ならではの良さと寺小屋教育などの伝統、更には最近、YouTube大学と称したようなかなり深いところまで掘り下げた解説番組が増えてきたこともあります。

一方、週休3日の場合、企業によりその扱いは様々です。週5日働くのを4日でこなす、つまり一日10時間勤務にする方法もあるし、単に8時間勤務で週4回勤務もあるでしょう。一般的には後者を指しているようであり、その場合、給与は2割ぐらい落ちることを覚悟しなくてはいけません。ある程度の年齢の方でやむを得ない方はともかく、若い方が給与減額を積極的に取り入れることはないと思います。

またリカレント教育も普及したとしても多分労働者人口の3%とか5%といったレベルを「流行」というのであってまさか30%の人が急に仕事量を減らしてでも寺小屋教育で勉強することになるとはにわかには信じられません。

ところで自民党は週休3日で「地方での兼業」を三本柱の一つに掲げていますが、これはよくわからないです。無理やりこじつけたような気がします。仮に都心で仕事をしている人がなぜ、地方に行って仕事をしなくてはいけないのか、それは週1日なのか2日なのか、を考えると具体性に於いて疑問符だらけであります。

そもそも働きすぎ日本人というのは80年代ぐらいまでの話です。2019年の日本の平均労働時間は1644時間で22位。OECDの平均が1726時間、アメリカ1779時間やカナダ1670時間より短く韓国はいまだに1967時間と日本より300時間も長く働いています。

日本は有給の消化率が低いと称されます。私は理由の一つに旗日(祝日)が多い点があるとみています。年間17日は世界で3番目(タイ、中国に次ぐ)であり、月に約1.5日も公的祝日があるのです。しかもハッピーマンデー制度と称される平成10年の法律改正で三連休が増えたこともあります。正月、ゴールデンウィーク、夏休み、場合により秋にも休みとなれば私から見れば休み過ぎだろうと言いたくなります。

まとめると、週休3日という休みが強調された言い回しが強烈な印象となりますが、日本は既に働きすぎでもないし、まとめて休める仕組みもあるため、それを必要としている人だけが会社側とうまく調整して取得するという形になるかと思います。また大企業は人事政策に対して先進的な取り組みをしやすいのですが、中小企業は人材不足や一人ひとりへの負担が大きいものです。そのため、ある程度制度化しないと雇用側が「そんなルールない」と突っぱねる公算はあるでしょう。この辺りを考えれば自民党がまとめようとしている週休3日の意味合いは出てくると思います。

週休3日の意義というより企業、特に中小の会社の経営者の働き方へのフレキシビリティを持たせるための後押しとした方がよいのでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年4月27日の記事より転載させていただきました。