黒坂岳央(くろさか たけを)です。
ネット記事で多くの人に読まれる記事テーマの一つが「世帯年収が1000万円を超えるのに、貯金がない」という高所得者貧乏たちだ。
こうした記事へのお決まりの反応パターンに、「お金の使い方がなっていない。自分なら生活レベルを上げないのに」というものがある。だが、そのようなコメントを付けている本人も、いざ所得が増えるとお金はあるだけ使ってしまうことは容易に推測できる。なぜならお金をあるだけ使ってしまうのは、その人の個性というより、人間が持っている本能に近い性質だからだ。
実際に、筆者は知識を深めたことで、この落とし穴を回避することができた。今回は「気がつけばお金がない」という狐につままれたような不思議な感覚を、言語化して取り上げたい。
お金がたまらない理由は「パーキンソンの法則」で説明できる
ズバリ、お金をどれだけ稼いでもあるだけ使ってしまう理由は、「パーキンソンの法則・第2法則」で説明可能だ。その定義は下記の通りである。
(支出は収入の額まで増加する)
これはイギリスの歴史学者・政治学者であるパーキンソン氏によって提唱された概念だ。同氏はイギリスの国家財政状況を分析したことによって、予算財源は常に使い切られ、税負担が際限なく増加する結論を導き出した。そしてこの法則はあらゆる場面で適応可能だ。
この法則が働くことで、年収の多寡に関わらず、資産が構築できない人はずっとできない。年収300万円でお金を使い切ってしまう人は、出世して年収1000万になってもやはり持っているだけお金を使い切ってしまう。「収入アップしたから、セキュリティの高いマンションに引越しないと」とか「身分相応のエリアに住むことで、自分はさらに高みを目指せるはず」などと考え、せっかく収入アップを実現しても意味をなさなくなる。
だが、冷静に考えれば、価格と価値の相関性は、一定ラインを超えるとパフォーマンスが落ちるという事実が見えてくる。家賃5万円と10万円のマンションの満足度は、2倍以上違うかもしれない。だが、1億円と2億円のマンションの満足度は2倍になるかは疑問だ。同じく、500円と1000円のワインは2倍以上おいしいかもしれない。だが、1万円と100万円のワインは100倍以上味がおいしい保証はない。
「うちは平均より収入が多いはずなのに、なぜか資産形成ができない」という現象の根本的原因は、パーキンソンの法則である。つまり、この法則を打ち破る戦略がなければ、資産形成などできないだろう。
「資産で資産を買う」という発想
では、このパーキンソンの法則を打ち破るには、どうしたら良いのだろうか?筆者から提案したい一つのソリューションとしては、「資産で資産を買う」という発想を持つことだ。お金を使うあらゆる局面で「この買い物は負債を買おうとしていないか?」を自問することで、資産を減らしてしまう買い物を減らすことが可能だろう。
資産で資産を買うというのは、現金という資産を使って、株や債権など現金以外の資産を購入するということを意味する。別の言い方をするなら「投資せよ」ということだ。
高収入なのにお金が貯まらない人は、資産ではなくせっせと負債を買っている。高級マンションや高級車、ハイスペックモデルのIT機器はいずれも「資産」というより、「負債」というカテゴリだろう。もちろん、これらを節税目的で経費で買ったり、プロモーションに直結する用途であれば話は別だ。しかし、「せっかく仕事を頑張ったのだし」という気持ちで買うのは、まんまとパーキンソンの法則に陥っていることになる。
物欲という引力からの解放
「お金はあるだけ使ってしまう」というのは、同じ状況に身をおいた人の多くが陥る「極めて普通の思考」である。むしろ、「お金があっても生活レベルをあげない人」の方が異常といえるくらいだ。そのくらい物欲は強力であり、その解放は難しい。だが、物欲という強力な引力から脱却するための、最大の味方は「知識」である。
その一つが今回取り上げた「パーキンソンの法則」である。物欲の魔力を感じた時には、本稿のことを思い出して頂ければ幸いだ。
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