4月Fedサーベイ:ウォール街は年明けの資産買入縮小を予想

久々に、経済・金融TV局CNBCが米連邦公開市場委員会(FOMC)開催直前に市場関係者を対象に実施するFedサーベイの結果をお伝えします。

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〇ゼロ金利政策を解除する時期(平均値、必ずしもFOMC開催月にあたらず)
今回:2022年12月、前回3月時点:2022年11月

〇資産買入の縮小開始時期
今回:2022年1月、前回:2021年11月

〇成長見通し
2021年成長率 今回:6.53%、前回:3.64%
2022年成長率 今回:3.59%、前回:3.23%

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作成:My Big Apple NY

〇2021年の物価、失業率見通し
今回:物価 2.5%
今回:失業率 4.9%

〇S&P500見通し
今回:2021年末 4,250
今回:2022年末 4,500

〇米10年債利回り見通し
今回:2021年末 2.0%
今回:2022年末 2.4%

〇パウエルFRB議長は再選されるべきか
イエス:76%、ノー:18%

〇Fedは金融安定に向け、気候変動対策を考慮すべきか
イエス:36%、ノー:64%

――ご覧の通り、Fedサーベイの調査対象であるエコノミスト、ファンドマネージャー、トレーダーを始めとした市場関係者はゼロ金利政策解除予想を後ろ倒ししました。さらに、資産買入の縮小時期も2022年1月と、年後半から年明けへ先送りする状況。足元でワクチン普及が進み、米4月消費者信頼感指数も20年3月以降で最高を示すなど経済指標も改善していますが、2%超の物価を許容するFedに合わせた格好です。実際、回答者は緩和策の修正の必要性を指摘する声が聞かれるものの、Fedにその気がないとの回答が目立ちました。

また、パウエルFRB議長のFOMC後の記者会見で必ず言及するように、Fedが労働市場の格差を問題視している可能性もあります。黒人と白人失業率がトランプ前政権時代の2019年8月に過去最低の1.3ポイントを付けて以降、再び拡大傾向にあるなか、市場関係者は全米の失業率が低下するだけでFedは緩和策を巻き戻さないと判断してもおかしくありません

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チャート:失業率にみる黒人と白人の人種格  作成:My Big Apple NY

市場関係者が「長期に及ぶ低金利継続(Low for Longer)」を予想しながら、S&P500の2021見通しは4月27日時点から1.5%高にとどまりました。米10年債利回りにつき足元の1.62%から2%への上昇を見込むように、①テーパリングの地ならしによる影響、②長すぎた低金利継続の余波――が影響したとみられます。

余談ながら、Fedが20年12月に気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)に参加発表後、気候変動対策に乗り出しつつありますが、ウォール街は冷ややかにみているもよう。ESG投資が熱気を帯びているのと対照的なのは、商売とは別ということなのでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2021年4月28日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください