医師はワクチン接種に高額の対価を求めるな

1本2070円でも日当10万円でも不満なお医者さん

河野行政・規制改革相は4月29日の日本テレビの番組で、「新型コロナウイルスワクチン接種に協力した医師らに協力金を支給する方針」を示した。

Bill Oxford

65歳以上の高齢者向け接種を7月末までに終えるためには、医師らの一層の協力が不可欠となっており、医師が休診日などに特設会場での集団接種に出向いたり、病院や診療所の診察時間を延ばして個別接種を行ったりした場合は、「協力金を支払うこともしっかりやっていきたい」としたのである。

いま、各市町村では、①特設会場での集団接種を開催したり、②かかりつけ医での接種を呼びかけたりしている。①と②のどちらを選ぶかは医師会や病院など地元の意向を尊重しているところが多い(すべてお医者さんという上級国民の都合で決まる)。

本当は、超低温での保管や扱いが難しく、1瓶5~6人分を一気に使い切らねばならないファイザーのワクチンは、集団接種に向いており、海外ではそうしているところが多い。

アストラゼネカやモデルナなど扱いが容易なワクチンを補完的に診療所で使うべきだ。しかし、厚労省は、ようやくモデルナだけは5月中に承認するつもりだが、アストラゼネカは海外での動向をみるとかいっておっかなびっくりだ。そして、モデルナを集団接種に使うという不思議な対応をするらしい。

もちろん、若干の血栓が生じる副反応は出ているが、フランスのカステックス首相によれば、非常に稀に血栓が生じる可能性があるが、100万人に約5人の確率である。大西洋を横断するフライトに搭乗する場合に血栓ができる確率の50分の1だ。アストラゼネカの副反応を気にする人は飛行機に乗るのも止めるべきだ。モデルナもアストラゼネカも明日にでも承認すべきだ。

しかし、ファイザーのワクチンが5月下旬あたりには順調に出回り始めたら、こんどは、接種する医師が足らなさそうだという。そこで、上記の河野大臣にる割増金の発言になったのである。

それでは、ワクチンを接種しているお医者さんがボランティアでやっているのかといえば、そんなことはない。

たとえば、開業医なら、一人1回あたり2070円(二回接種なら4140円)の報酬が出る。これはインフルエンザ予防接種の場合を参考にしたものである。インフルエンザの予防接種の場合、3500円くらいが多いが、これは平均1500円くらいのワクチンの仕入れ値に2000円程度を上乗せしていることを踏まえたものだ。今回はワクチン代も2070円も国が出すから、接種する人にとっては無料である。

医者になにもただ働きしろなどと言いているわけではない。開業医の2070円にしても、庶民感覚では形式的な問診だけのあと注射するのには高すぎると思うが、お医者様には儲からない仕事で、残業してまでしたくないらしい。

さらに、集団接種会場では大病院の医師のほか、開業医も動員することになる。医師への手当ては、厚労省で決めているのでなく、市町村が決めているのだが、ほとんど公開はされていない。

そこで、いくつもの市町村長や関係者に聞いたのだが、だいたい、公表していないので口外しないでくれと言われたのだが、だいたいの相場は、1日8時間のケースで換算すると、医師が10万円、看護師が1万5000円あたりが相場のようだ。開業医に休診してお願いする場合は、もっと積み増しているところもあるようだが、仮に、医師会ですべての開業医が休診するか休日に出てくるか別として一定の時間ずつ手伝うように呼びかけたら、別の医師のところにいかれて収入源ということもあるまい。

この差も、合理的なものとも思えないが、日当10万円は、年に200日働いたら2000万円であるから、いかに医師がおいしい職業であるか、あらためて驚嘆するしかない。救急現場で緊張をしいられるようならともかく、お気楽な仕事だ。

これでも医師が集まらないから国は特別手当を積み増そうとしているのだが、そもそも、国民の多くが医師会が医療崩壊だ、コロナ患者は入院お断りだとかいうから、緊急事態宣言だ、規制自粛だといって、日本の医療のだめさ加減の尻拭いをさせられているのだから、医師会以下、ボランティアでやるのを呼びかけても罰は当たるまい。せいぜい、看護師に払う1万5000円くらいのお車代で十分だ。

予防接種は薬剤師でもできるし副反応にも対処できる

自分の仕事が別にあるといっても、たとえば、開業医など、勤務時間外や休日、手伝ったり、1週間に1日臨時休診にしても、たいていの医師は1週間に1日くらいワクチン接種にあてても良さそうだ。

それすら、嫌だと云っているのである。

そんないやなら、ただちに、まず、①仕事していない医師に呼びかける(引退した医師、行政など現場以外の仕事をしている医師、家庭に入っている女性医師など)、②医学生を動員する、③歯科医師にお願いする(どうしてもやむを得ないときはできるようにするらしい)、④看護師だけでできるようにする、⑤薬剤師に認める(諸外国では広く認められ、あるいは、コロナ対策として拡大しているところが多い。そもそも、インフルエンザの予防接種でもすることが許されているので、日本でワクチン接種を薬剤師に認めてないのがおかしい)、⑥一般人に簡単な訓練して動員する(イギリスでは失業者集めてしている)などなぜしない。

海外で許されている制度は、根本的に問題があろうはずもない。臨時立法してもやるべきだ。

医師でないと副反応が出たときにどうするのかという人もいるが、即時型アレルギー反応(アナフィラキシー)が出た場合には、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を内服させて症状が改善するまで観察し、必要なら、アドレナリン(ボスミン®)の筋肉注射をし、同時に酸素吸入と生理食塩水の急速点滴投与、呼吸困難が強い場合は短時間作用性β2刺激薬(pMDI)の吸入も実施するとされているが、医師でないと対応できない話ではない。

さらに入院治療が必要な場合もあるが、そこまでいけば、クリニック・レベルでは医師がいたとしても対応できないわけで、そこまで心配するなら、インフルエンザのワクチン投与もクリニックではするべきでないことになる。

海外での接種について、寄せられた情報でも、調子が悪かったら薬局でどういう薬を買うか指示されるだけであるし、そもそも、薬局で医師の指示なしに接種まで行えるのに、どうして日本では許さないのか。

ワクチン接種が医師不足で、できないという状況だとするなら、ただちに、1週間くらいで臨時立法すればいいだけだ。

私はつねづね、日本は医師不足というが、これを安直に増やすことは、無駄な医療を生じさせるし、将来、人口減やAI医療の進展で医師過剰が見込まれるなかで病院経営も圧迫するだろうから、避けるべきだという医師会の主張に賛成しているのである。医学部を今から設置しても時間がかかるから合理的でないとまで医師会の意見の理解者である。

ただし、医師独占分野の抜本的削減に医師会は応じるべきだと、お医者さんにとっても合理的な提案をしているので、アンチ医師でもなんでもない。

まして、現在のような状況で、医師だけによる接種にこだわり、しかも、普段より余計に働くのは嫌だと言い、もしするなら1日10万円の手当でも、1本2070円の報酬でも不満だと強欲をいうのに政府がさらに金を出してバナナのたたき売り的なご協力いただくのが適切なのか。

日本の医師たちは恥を知れと言うしかないし、このままだったら、これを機に武見太郎日本医師会会長の呼びかけによるストライキに屈してから続く医師天国対する革命を起こすべき時が来たのだと思う。